第60話 婚約破棄編④ 少女のお誘い
逆恨み男カジリに襲われた少女ミロを助けた転移勇者一行。
「大丈夫かい。
ミロ?」
「は、はい。
あなたは一体・・・。
(///o///) 」
ミロの方は特に怪我してなさそうね。
顔を真っ赤にしながら潤んだ瞳で勇者を見つめている。
「う、うう・・・。」
「ハッ!Σ(゜ロ゜;)!!
そうだ、サーラ!!
しっかりしなさい。」
だけどサーラはかなり重傷だわ。
サーラは魔族だけど、人間のミロの従者なの。
かなりの強者なんだけど、カジリ達の襲撃からミロを庇って・・・。
「お、お嬢様・・・。
無事で、良かった!!
・・・あなたさえ無事なら私は。」
「バカ!!
何言ってるのよ?
・・・ああ、神様。」
従者の大怪我を目の当たりにし、ミロは錯乱するばかり。
しかし近くに病院なんかないし、あったとしても魔族を治療してくれる可能性は限りなく低い。
「まったく・・・。
しょ~がないわねぇ。」
やれやれと言わんばかりの態度で、聖女がサーラの元へと近寄った。
「えっ?」
「放置して死なれても目覚めが悪いから、今回だけはタダで助けてあげる。
けど次からは有料だからね!!」
金にがめつい闇聖女の手に命を癒す光が集まっていく。
「ヒール!!」
聖女だけが使える回復魔法を受け、重傷だったサーラの怪我がみるみる内に回復した。
「・・・・・・。
怪我が・・・治ってる?」
「って、あれ?
彼ってその、魔族、だよね。
回復魔法、効くんだ。」
「そりゃ効きますよ。
だって・・・。」
どうやら勇者は魔族の事をよく知らないみたいね。
なので彼に魔族について話そうとすると・・・。
「・・・もうっ、サーラったら!!
私だけ守れたって仕方ないじゃない。
全てを守りぬいてこそ、真の従者よ。」
「申し訳ありません。
お嬢様。」
「まっ、次からはもっと上手くやるのよ。」
ミロが魔族であるサーラに対し、上から目線で説教しているのが見えた。
や・・・やっぱり解せない。
なんで魔族が人間に従ってるのかしら?
疑問に思っているとミロが真っ直ぐな瞳で私達の方を見やり・・・。
「危ない所を助けて頂き、感謝致しますわ。
私はミロ。
彼は私の従者、サーラ。
にしても、あなた・・・回復魔法が使えるなんて、もしや本物の聖女様?」
「・・・本物の聖女様、エミリーよ。
ど~して私が聖女かど~か、疑う人がちらほらいるのかしらねぇ。」
どう考えても性格のせいだと思うけど。
見た目だけなら誰もが見惚れる美しき聖女なんだから。
「じゃああなた達も特別なお方なの・・・?」
私とクロも立場だけなら珍しいのかしらね。
特別な人間とはほど遠いけれど。
「・・・え~と。
私は元ジャクショウ国の第四王女、デルマよ。」
「クロは黒猫族なの~♪」
「元王女!?
なるほど、どおりでそんなに美しく・・・。
クロは可愛くても子供だから構わないとして。
デルマとエミリーはかなりの強敵ね。」
「強敵?」
なんで私があなたから強敵認定されるの?
「あっ・・・!!
いえいえ、お気になさらずに。
おほほほ・・・。」
???
私が不思議に感じている間に、ミロはもじもじしながら勇者の元へと近づく。
「え・・・ええっと。
あなたの戦う姿、とってもカッコ良かったです♪
あの、デルマから勇者と呼ばれていましたが・・・。」
「あ、うん。
俺はテンイ。異世界からやってきた転移勇者なんだ。
よろしくね。」
「そ、そうなんですか!??
やだ・・・素敵!!」
「素敵!?
ど、どうも。」
えらくストレートに褒め称えるミロに対し、勇者が恥ずかしそうにしながら返事する。
そんな彼から離れた場所で・・・。
「転移勇者、だと!?
た、確かに物凄いパワーを感じる。
・・・・・・。
・・・くっ!!」
けれど転移勇者であるテンイが気に食わないのか、サーラが敵意を込めた瞳で勇者を睨み付けている。
今は主の手前か、襲い掛かったりはしなさそうだけど、あまり楽観視も出来ないわね。
これ以上、トラブルに巻き込まれる前に彼女達から離れなければ。
「ま、まあ、無事で何よりじゃない。
もうカジリから襲われないよう、気を付けてね。
さっ、皆。早く行きましょう。」
「お待ちください!!」
ゑ?
「ど・・・どうしたんだい?」
「い、いえ・・・あっ、そうだ!!
せっかく助けて下さったのに、お礼が全然出来ていませんでしたね。
実は今夜、私の家でパーティが開かれるのです。
是非、参加して頂けないでしょうか?」
「パ、パーティ!?」
ちょ!?
「いやいや!?
ミロ。あなたの家って多分、かなりの名家なんでしょう?
いくら何でも旅人の私達が飛び入り参加するなんて、場違いもいいとこだわ。」
「そんな事はありません!!
王女様に聖女様、そして世界を救うために召喚されし転移勇者様・・・。
むしろ諸手をあげて歓迎されるはずです。」
「え~っと・・・。
別に勇者は世界を救いに来たんじゃなくて・・・。」
ど、どうしましょう?
このままじゃ私達、彼女達の愛憎劇に巻き込まれてしまうわ。
「だから遠慮なんて全くいりませんよ。
そうと決まれば早く行きましょう。
テンイ様♪」
「え、あ・・・ちょっと!?」
ミロに半ば引きずられる形で連れて行かれる勇者。
めちゃくちゃ困惑しているようで、ちらちらと私達に目線を向けている。
「勇・・・。」
「待って、王女。
ここはミロの好意に甘えましょう。
だってパーティよ?
きっと美味しいごちそうをお腹いっぱい食べられるわ!!」
「ごちそう!?
やった~~~~♪」
こらこら!?
聖女、クロ!!
「ごちそうって。
あなたが食い意地張ってるのは知ってるけどさぁ。」
思わず私は抗議するも、彼女は私にだけ聞こえる声でこそっと話す。
「それにあまりミロ達を刺激しない方が良いと思うの。
・・・彼女には得体の知れない何かがある。
少し様子を見ましょう。」
得体の知れない何か!?
けどまあ、聖女の言う通りかも。
魔族を従えている時点で普通の女の子とは到底思えない。
それにあの魔族・・・主に気付かれないようにしているとは言え、さっきからずっと勇者を睨み付けているわ。
不安に思いながらも、転移勇者一行は旅の最中に出会った謎の少女の招待を受けるのであった。




