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第56話 定型文編④ ハーレム要員の定型文 「し」~「そ」編

Side ~聖女~


「ねえねえ、王女様~。

 いつご主人様に『しらなかった~』って、言えば良いの?」


「知らない事を見つけたらよ。

 ちゃんと教えてくれたら『しらなかった~』って、言ってあげてね♪」


「わかった~♪」





ハーレム要員の定型文とやらで、上手(?)にテンイを褒め称えたクロ。

今度は2番目の定型文でテンイを褒め称えようとしていた。


「知らない事、知らない事・・・。」


けど確かにクロには『しらなかった~』って台詞が似合いそうね。

まだ子供だもの。

物知りな王女が『しらなかった~』な~んて言い出したら、胡散臭すぎるわ。


「!!??

 ご主人様!!

 あれ、なんて言うの~!?」


そして知らないものを見つけたのか、興奮した様子でテンイに尋ねる。

何を見つけたのかしら・・・って、まあ!?

あの大きくて黄色の花は・・・。


「ん?

 ・・・おぉ~~~~!!

 あれは『ひまわり』って言う花だよ。

 こっちの世界でも咲いてるんだね~。」


「しらなかった~・・・。

 とってもきれ~い♪」


クロの言う通り、辺り一面に咲き乱れるひまわりはとっても綺麗ね。

なんだか清々しい気分になるわ。


「うわぁ・・・・・・。

 えっ!?」


キラキラとした目でひまわりを眺めていたクロを肩に乗せるテンイ。


「ほら。

 こうすれば、もっとよく見えるだろ?」


「ほんとだ!!

 すご~い♪」


「ははは。

 そうだろ、そうだろ♪」


テンイとクロは楽しそうに咲き乱れるひまわりを眺めていた。

微笑ましい光景ね。


・・・けど。


「あれ?

 あれれ?

 なんで?

 ど~して?」


そんな二人を見、王女がめちゃくちゃ混乱している。


「あれ~~~~?」


いや、まあその・・・。

傍から見ていると、テンイとクロが予想外に仲良くなったもんだから、狼狽えているようにも見えるわ。

・・・実際の所はもっと意味不明な理由でパニくってるんだけど。



********



その日の夜。

宿の一室で・・・。


「・・・おかしいわね。

 なんであんな風になっちゃうのかしら?」


「あんた、いつまで気にしてんの!?」


クロが妙な方向でミラクルを発揮するせいで、王女はず~っと軽いパニックを起こしている。


「王女様~?

 今日のあたし、ハーレム要員としてダメだった~?」


「・・・いいえ。

 ダメなどころか、大活躍よ。

 えらいわ、クロ。」


「わ~い♪」


あらま?

狙い通りに行かなかったのに褒めちゃうんだ。

クロに気を使って・・・って訳でもなさそうね。


「あんた、今日のクロを褒めちゃうんだ・・・。

 どう見てもテンイ、例の本に書いてある通りの反応じゃなかったのに。」


「そうなんだけど、勇者が楽しそうにしてた事には変わりないもの。

 別に優越感に浸らせなくてもさ。

 彼が笑顔になれるのなら、結果オーライよ。」


「一応、目的は見失っていなかったのね。」


王女やクロが立派なハーレム要員を目指しているのは、別にテンイのハーレムになりたいからではない。

理由はどうあれ、元の世界に帰れず、悲しい思いをしているテンイを笑顔にさせる事が目的なの。

・・・まあ、健気な目的ではあるんだけど、そんな斜め上な動機でハーレム要員になりたがる女、この子達以外にいないでしょ~ね。


「でもやっぱり理解出来ないわ。

 クロがハーレム要員の定型文で勇者を褒めたらさ。

 『さ』も『し』も『す』も全然違う結果になったじゃない?」


「なったわねぇ。」


あれは多分、兄が可愛い妹とのスキンシップを楽しむ感覚に近いんじゃないかしら?

少なくとも、褒められて優越感に浸っていた訳じゃないと思うわ。


「う~ん・・・。

 やっぱりテンイとクロ、転移勇者やそのハーレム要員としてはイレギュラーなのかも。」


いや、その理屈はおかしい。


「別にテンイとクロがおかしいんじゃないと思うわ。

 あんたの持ってる『転移勇者との付き合い方 ~ハーレム編~』の方がおかしいの!!」


「うっ!?

 それは・・・・・・・・・・・・困ったわねぇ。

 なんか段々、あの本に書かれている事を疑ってしまう自分がいるわ。」


「疑いもせず信じる方がおかしいって。」


転移勇者は優越感に浸る事しか頭に無いだの。

彼らが求めているものは結局、金・暴力・SEXの3つだけだの。

・・・無論、そういう転移勇者もいなくはないでしょう。


でもねぇ。


「大体、テンイやジーク並に強い連中が、揃いも揃ってあの本通りの性格だったらさ。

 世界はもうとっくに崩壊してるわよ!!」


「( ゜д゜)ハッ!」


理性を失くした大怪獣が野に解き放たれるのと同じだもの。


「よくよく考えるとあの本に書いてある事、結構矛盾してるのね。

 ・・・けど、あの本くらいしか転移勇者との付き合い方なんて載ってないわ。

 だから今更、全否定するのも不安で・・・。」


「まったくもう。

 あんたって子は。」


「?~。」


相変わらず王女は迷走してるわねぇ。


「と・・・とりあえず、クロ。

 その調子で定型文の『せ』や『そ』も上手く使うのよ。」


「は~い♪」


やれやれ。



********



「ねえねえ、王女様~。

 いつご主人様に『センスある~』って、言えば良いの?」


「そうね・・・。

 勇者があのオーク達をカッコ良く倒したら、言ってあげて。」


「わかった~。

 よくわかんないけど、わかった~♪」


「・・・よくわかんないけど?」


そしてその翌日。

チュウオウ国を目指して旅を続ける私達の前に、今度は数体のオークが立ち塞がる!!


オークは二足歩行の(豚+イノシシ)÷2のモンスターよ。

あまり強いモンスターとは言えないけど、それでもゴブリンやコボルト以上に強く、一般人や駆け出しの冒険者からすれば危険な相手ね。

なんだかんだでこの世界、あちこちに人に襲い掛かるモンスターがいるから、普通の人間では生きて旅を続けるのも難しいわ。


「「「ブモー!!!!」」」


「おっと?」


けれどテンイはオークの突撃を危なげなく避け、隙が生まれた所を抜け目なく剣で斬り付ける!!

旅をしたばかりの頃に比べると、テンイも実戦に慣れて来たのか、どんどん動きのキレが良くなっていくわ。

うんうん・・・順調に強くなってくれてるよ~で何より♪


「ハッ!!」


「プギャウ!?」


先日のコボルトに引き続き、テンイは数体のオーク相手に剣一本で勝利する。

やっぱり異世界人の戦闘センスは凄いわねぇ。

それともテンイが特別なのかしら?


「おめでと~、テンイ!!

 段々動きのキレ、良くなってきてるじゃない。」


「ありがとう、エミリー。

 俺も少しは強くなったのかな?」


強くなったと言うより、本来の実力を上手く引き出せるようになったって感じだけどね。

この調子ならいずれ、私の運命も・・・。


「ほら、クロ。

 今がチャンスよ。」


「うん!!」


そんな風に話していると、妙なチャンスをものにしようと、二人の女が立ち上がる。


「ご主人様~♪」


「なんだい、クロ?」


「センスある~♪」


「・・・・・・。」


王女の指示の元、クロがテンイのセンスを褒め称えた。

しかし何故かテンイは真顔のまま、クロを見つめ続けている。

その後、突然笑顔を作り・・・。


「ねえねえ、クロ。

 その『センスある~♪』って、ど~いう意味かな~。

 教えてくれる?」


「え!?

 ・・・ん~っと、ん~っと。」


あ。

これはもしかして・・・。


「王女様~。

 『センスある~♪』って、ど~いう意味なの~?」


「・・・やっぱり。」


クロったら、言葉の意味もわからずに褒めた気になっていたのね。

あの子らしいっちゃらしいけど。


「いやいや、ちょっとクロぉ!?

 あのね。センスある~ってのはね。

 凄いな~、憧れちゃうな~、って意味よ。」


それじゃ普通に凄いって褒めるのと変わらなくない?


まあ確かに、センスの意味を質問されても、説明するのは難しいけどさ。

ふわっとした用途で使われる事も多いもの。


「へぇ~・・・。

 そ~なんだ~♪」


「こらこら、ク~ロ。

 定型文の『そ』を使う相手は、私じゃなくて勇者でしょ?」


「あっ、そっかぁ~♪」


「あっ、そっかぁ~♪

 じゃ、ないよ!!」


前々から疑問だったんだけどさ。

ターゲットの目前でこう褒めよう、ああ褒めようって相談するのは、如何なものかと。

なんかもう台無し過ぎるわ。


「・・・あ。

 勇者、様。」


「もう・・・。

 王女ったら、ま~た妙な事をクロに吹き込んで!!」


こんなにもグダグダなハーレム要員、他にいるのかしら?


「も、申し訳ありません。」


「・・・ねえ、王女。

 そんな無理して、取り繕わなくて良いんだよ。

 普通でいいんだ、普通で。」


一昨日の私とほぼ同じ事を言ってるわねぇ。

テンイったら。


「?~。

 普通にって、ど~いう事なの~。」


「えっと、ね。

 私の態度があまりにも不自然だから・・・。」


「うんうん。」


おっ!?

ついに王女もテンイの気持ちがわかって・・・。


「・・・もっと自然な形でハーレム要員らしくなさい!!

 って事よ。」


「そ~なんだ~♪」


「違うよ!?」


・・・わかってなかったわね。

それから王女はクロにハーレムとしてどうあるべきかを語り続ける。

よりにもよって、テンイの目の前で・・・。


これにはさすがの彼のお手上げみたい。


「う~・・・。

 エミリー・・・。」


「・・・まあ、しょうがないわよ。

 王女はある意味、究極の勘違い女なんだから。」


「うん、そだね・・・。」


そりゃあ『自分は誰からも愛されている』とか、そんな感じの勘違いをする女はいるけどさぁ。

あそこまで個性的な勘違いを続けられる女は早々いない。


「まっ、勘違いに気付くまで気長に待てば?

 味方なのには変わりないんだしさ。」


「・・・。

 そうだね。」


ただまあ、王女が嘘も演技もへったくそなタイプだったのは、テンイからすれば良かったのかもしれない。

もし彼女が上手にハーレム要員を演じれるような娘だったら、彼との距離は今以上に遠かったでしょうから。





「この異界の力を宿した魔女が!!

 お前のせいで俺はこんな目に・・・。」


「ふざけてないでくれる?

 あなたが落ちぶれたのは全部自業自得じゃない!!」


「・・・なんだと?

 貴様ぁ!!」





ん″?


どったの?

何の言い争い??


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読んで頂き、ありがとうございました。

少しでも「続きが気になる!」「面白い!」と思って頂けたら、評価★★★★★と、ブックマークを頂ければと思います。

どうぞよろしくお願いします。
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