表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/211

第55話 定型文編③ 真・ハーレム要員の定型文 「さ」編

Side ~聖女~


「ねえねえ、王女。

 チュウオウ国まであとどれくらいかなぁ?」


「まだまだ遠いですわ。

 けど、焦らなくても大丈夫ですよ。

 チュウオウ国は逃げたりしませんから。」





私は旅の聖女、エミリー。

世界の中心とも呼ばれる大国、チュウオウ国を目指して、今日も仲間と共に旅を続けている。


最近、やたらと派手な事件が多いせいで忘れかけていたけど、私達の目的地はチュウオウ国なの。

自由を目指すなら、テンイを誘拐したジャクショウ国から離れて暮らす方が良いからね。


「チュウオウ国かぁ・・・。

 どんな国なんだろう?」


まだ見ぬ国に思いを馳せる少年の名はテンイ。

彼は地球と呼ばれる異世界から召喚された転移勇者よ。


金髪の容姿端麗な美少年で、当たり前のよ~にすれ違う女の子から見惚れられているわ。

私や王女がいるから、逆ナンはされないけどね。


そして転移勇者としても類まれな才能を秘め、ドラゴンやヒドラでさえ軽々と打ち倒せるの。

容姿・実力共に世界でも比肩しうる者はほとんどおらず、彼に微笑まれて恋に落ちない娘なんてまずいないでしょう。


・・・と、言いたい所なんだけどねぇ。

彼には悪いけど、私はテンイに恋愛感情を全く抱いていない。


いやぁ・・・なんつ~か彼。


確かにカタログスペックは物凄いのだけど、泣き虫で頼りないからねぇ。

チンピラに絡まれて取り乱したり、カッコ付けようとして大騒動を起こしたり・・・

トラブルにも私以上に愛されているし、悪気が無いのはわかってるけど、中々の困ったちゃんよ。


だから惚れるとか以前の問題で、ど~しても世話の焼ける男の子、って印象が強いの。

彼と接していると、弟の事を思い出すわ。


まあ、そうは言っても友達としてなら普通に好感持てるけどね。

それなりに良い子で、気楽に付き合えるしさ。





「・・・あ~~~~!!!!

 あっちからモンスターさんの気配がするの~!!」





あら?


クロったら、また『索敵』でモンスターを察知したんだ。

彼女の『索敵』は獣人がよく持っている特性で、近くにいる人やモンスターを察知出来るの。


私も魔法で『索敵』と似たような事は出来るけどね。

けど魔法を使わずともオートで察知可能な『索敵』の方が秀でてると思うわ。


「モンスター!?

 クロ。

 どんなモンスターかわかる?」


「う~んと・・・。

 ・・・わかんな~い。

 でもゴブリンさんとおなじくらい、怖そうなの~。」


「・・・つまり、あまり強いモンスターじゃないのかしら?

 けどま、気を付けて行きましょう。」


そうね。

どんなに弱いモンスターが相手でも、不意を突かれると危険よ。

そうやって周りを警戒しながら歩いていると・・・。





「「「ギャウ、ギャウ!!!!」」」





・・・モンスターの唸り声が聞こえてきたの!!


「二本足の犬!?」


「いえ、勇者様・・・。

 あれはコボルトと言うモンスターです。

 全部で3体いますね。」


コボルトは犬の顔と人間の体を併せ持つ、モンスターの一種よ。

個々の強さはゴブリンよりもわずかに強い程度だけど、群れている事も多く、数の暴力で攻められると侮れないわね。

でも3体くらいなら、テンイなら剣一本で勝てそうだわ。


「・・・ねえ、王女、エミリー。

 あのコボルト達、俺一人で戦って良いかな?

 もちろん魔法やスキルは無しでさ。」


「ええ、わかりました。

 ではよろしくお願いします。」


王女はどちらかと言えば、テンイを危険から遠ざけようとするけど、この程度の相手なら大丈夫だと判断したのでしょう。

彼の要望にあっさりと応える。


「「「ギャオーン!!!!」」」


「よしっ、行くぞ!!

 コボルトども!!」


襲い掛かる3体のコボルトに対し、テンイの剣が煌めく。


「聖女。

 万が一、勇者が危なくなったらフォロー、頼むわね。」


「わかってるわよ。」


戦いに絶対安全、なんて無いもの。


けどテンイは純粋な剣技だけでも達人を名乗れる程度には強い。

ど~やら元の世界で相当剣術の鍛錬を積んでいたようで、それが異世界でも活きているようね。

コボルト3体くらいなら、余裕で勝てるでしょう。


「い~い、クロ。

 もし勇者がカッコ良くコボルトを倒したらさ。

 すかさず『さすがご主人様~♪』って褒めるのよ。」


「う、うん。

 うう・・・緊張する~。」


・・・でもだからって、戦闘中にハーレムごっこの打ち合わせなんかしなくても。

本人達からすりゃあ大真面目なんだろうけど、テンイにバレたら憤慨されるわよ。





「食らえ!!!!」


「キャウーン!?」





そして私達の予想通り、テンイは簡単にコボルト達を打ち倒した。


「さすがね、テンイ。」


「あはは、ありがとう。」


私が軽く褒めると、テンイも少し嬉しそうに返事をする。

しかし相手がたかがコボルトとは言え、相変わらずテンイの剣技は凄いわねぇ

・・・チート能力無しでもこれほど強いのであれば、もっと自信を持てば良いのに。


「キャーーーー、さすが勇者様~♪

 見事な戦いぶりでしたわ!!」


その後、王女が私から見てもわざとらしいくらい、満面の笑顔でテンイを褒め称えた!!


「あ、あはは・・・。

 ありが、とう?」


あまりにわざとらしすぎて、テンイの反応もぎこちない。

・・・王女ったら、どうして自分の態度の不自然さに気付かないのでしょうね。


いくら作り笑顔そのものが上手くてもさぁ。

常日頃、淡々と振る舞っているあんたが唐突にキャピキャピしても、嘘臭すぎるって!!


「ほらほら・・・。

 クロもボーっとしてないで、勇者を褒め称えなさい。」


「あっ!?

 え、えーと・・・。

 さ・・・さすがです、ごちゅ!?」


あ、噛んだ。


「・・・あ~ん、王女様。

 嚙んじゃったよぅ・・・。」


「・・・もう、クロったら。

 しょうがない子ねぇ。」


褒め損ねたクロを見やり、王女が呆れた様子で呟く。

まあ、いつもの事だからテンイも呆れ果てるだけで、怒ったりはしないでしょうね。


「・・・。」


「う~・・・・・・。

 う?

 ご主人様??」


と、思っていたら、何故かテンイは真顔そのままにクロの傍まで近づく。

え?

まさかあれくらいでクロに怒る気?





「・・・思うところはあるけど。

 ・・・・・・。

 一生懸命な感じが可愛いからOK♪」





って、まさかの笑顔で大喜び!?


「ええええええええ!!!!????」


計算外の反応すぎて、王女が叫び声をあげる。


「!!??

 よくわかんないけど、やったぁ!!」


クロの頭を撫でるテンイと、なんか知らんけど褒められて嬉しそうなクロ。


「え・・・ええっと・・・。

 どうなってる、の?」


い、一応、結果だけで見れば、ハーレム要員に褒められて喜ぶ転移勇者って構図だけどさ。

これって自尊心をくすぐられたから、喜んでいるの?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んで頂き、ありがとうございました。

少しでも「続きが気になる!」「面白い!」と思って頂けたら、評価★★★★★と、ブックマークを頂ければと思います。

どうぞよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ