第52話 偽りのハーレム編⑭ 転移勇者の道
「勇者様!!
私達を救って頂き、ありがとうございます・・・。」
「我々は見ていましたよ!!
・・・あなた達が悪しき山賊を打ち砕く姿を。」
「いや、『救った』ってのはともかくさ。
『山賊を打ち砕いた』ってのは誤解だよ。」
転移勇者一行は無事、山賊に攫われた人々を救い出した!!
攫われた人々からはもちろん、冒険者ギルドからも盛大に感謝されたの。
あとね。
あの古城から何人かが今回の戦いを見ていたようで、件の山賊が全滅した事も既に広まっているわ。
よほど嬉しかったのでしょう。
ギルドの人達がね。
「攫われた人々を救い出すどころか、山賊すら成敗してくださるとは!!
あなたこそ、誠の勇者です。
ささ、討伐報酬として金貨5000枚をお渡しします。」
な~んて言い出したの。
けど勇者は。
「『金貨5000枚は』いらないよ・・・。
だって俺達は攫われた人々を助け出しただから。」
と、討伐報酬を頑なに断った。
多分、報酬を受け取ったら、自分の手で山賊を・・・人間を殺めたような気になっちゃうからでしょう。
それを聞いた聖女が『報酬がいくらだろうが、あなたが山賊を殺めていない事には変わりないのよ!!』
・・・な~んて言って、金貨5000枚を貰おうとしたけどさ。
勇者から寂しそうな笑顔で見つめられ、さすがの図太い彼女も引き下がったみたい。
この世界でも人を殺せば当然、罪に問われる。
でも山賊のような悪党は殺しても罪に問われず、むしろ賞賛されるわ。
だとしても勇者にとっては山賊でさえ殺めたくない『人間』だから、ね。
一応『攫われた人々を救い出した』報酬として、金貨1000枚はしっかりと受け取ったけど。
こうして件の山賊騒動は幕を下ろし、私達は新たな町に向かって、旅を再開したの。
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「はぁ~・・・。
今回の戦いはほんと、肝を冷やしたわねぇ。」
「山賊、怖かったの~。」
お散歩のような旅の最中、聖女とクロがのほほんと会話する。
・・・まあ、私達はおろか数万、数十万もの命が消える可能性もあったからね。
まさか山賊との戦いで、これほどの危機が迫るとは思わなかったわ。
これも勇者の運命力が成せる技かしら?
ただ私は愚かながらも悲しい最後を辿った『カマセ』のジークが最も印象的だった。
「・・・ジーク。」
「ど、どうしたんだい?
王女!!
そんな切なそうにジークの名を呟いて、さ。
・・・ま、まさかさぁ。
ジークにほ、ほ、惚れた・・・とか?」
勇者、あのね。
敵・・・しかも山賊になんか惚れるわけないじゃない。
「違いますよ。」
「あ~、この反応は本音っぽいね。
ほっ。」
・・・どうして勇者は私の嘘と本音がわかるのかしら?
何故ほっとしてるかもわからないけど。
まあ、それはともかく。
「ただ・・・ジークの最後を見て思ったのです。
彼の事を心から慕うハーレムが一人でもいれば。
彼は道を踏み外さずに済んだのではないかと。」
「王女・・・。」
「そして決意したのです。
これからはもっと勇者様を大切にしなければ、と。
ジークの様に誤った道へ行かせないためにも。」
「・・・。」
同じ異世界人でも勇者とジークは違う。
勇者はダメな所も多いけど、どちらかと言えば善良よ。
進んで人を傷付けるような真似はしないと思う。
けれどもし、ジークのように人の悪意に触れ続けてしまえば。
誰からも裏切られ、一人になってしまったら・・・。
心を壊し、多くの罪を重ねてしまうかもしれないわ。
「王女ったら、考えすぎよ。
テンイはジークみたいにならないわ!!
だって、私達が付いてるんですもの。」
「王女様~、心配しないで~。
あたし、ご主人様のこと、もっと、も~っと大切にするから~♪」
「ありがとう。
エミリー、クロ。」
聖女とクロに元気良く告げられ、笑顔で礼を告げる勇者。
「・・・・・・。
あっ、そうだ!!
王女!!」
あら?
「ど、どうしたのです?
勇者様。」
「君、ジークが死ぬ寸前、あいつの手を握ってたよね?
なんでなのかな~・・・。」
え~っと、確かに握ってたけど。
別に彼に惚れたからじゃないわよ。
「・・・あの時のジークがとても寂しそうだったもので。
せめて死ぬ寸前だけでも彼に触れたかったのです。
最後の最後まで一人、と言うのも可哀想ですから。」
それはもちろん、いくらかはジークの自業自得よ。
だけど一番悪いのは彼を強引に攫った悪人達だもの。
既に当人の手で裁きを受けたかもだけど・・・。
異世界人が道を踏み外しやすいのも、元を辿ればこの世界の悪意が強いからかもしれない。
「そ、そ、そういう理由ならさ~。
俺の手も握ってくれないかな~?
なんか急にさみしくなってさ~♪」
な・・・何を言ってるのかしら?
勇者ったら。
・・・まっ、いっか。
「わかりました。」
言われた通り、素直に彼の手を握る。
「ちょちょちょ!??
おおおお、王女!?
躊躇い、なさすぎだよ!!」
「いや?
手を握るくらい、全然構いませんよ。
そもそも勇者様、今までだって私の肩を揺さぶったり、胸へと抱き着いたりしてたじゃないですか。」
さすがに肩を揺さぶるのは酔うから勘弁して欲しいけどね。
胸へと抱き着くのは構わないけど。
「・・・そ、それはそのぅ。
け、け、けっしてどさくさ紛れに抱き着こうとかさ。
そんなやましい事なんて、これっぽっちも考えていない、事もない・・・ごにょごにょ。」
「?」
彼ったら、なんで急に慌て出したのかしら?
別にそんな事で怒ったりなんかしないわよ。
私。
そんな事で心乱さぬよう、母上からしっかり教育を受けたもの。
「あ~っ!!!!
王女ったら、自分だけテンイの好感度を上げるつもり?
こ~なったら私もテンイとスキンシップを取って、好感度UPよ!!」
「よくわかんないけど、あたしも~♪」
「わぁあ!?
エミリー、クロ?」
いつの間にかエミリーが後ろから勇者へ抱き着き、クロがもう片方の勇者の手を握る。
・・・こ~してみると勇者、本当にハーレムを築いているみたいね。
なんだかんだで嬉しそうだし、さ。
こんな調子ながらも、私達の旅路はまだまだ続くのであった。




