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第51話 偽りのハーレム編⑬ ジークの最後

(注)最終決戦ではありません。序盤のVS山賊戦です。

世界に絶望した元転移勇者ジークが最凶の自爆魔法『フィフス・セルフ・ディストラクト』を発動!!

勇者が防御魔法でジークの自爆を抑えようとするも、ランク5の自爆魔法はあまりにも強すぎた。

彼のバリアが破れるのも時間の問題だったの・・・。


・・・それでも勇者は罪の無い人達を守ろうと、必死になって力を振り絞る。

そんな彼を助けるため、私は聖女に提案したの。





「聖女、あなたなら使えるはずでしょ・・・?

 『ストロング・バリア』の魔法を!!」


「・・・あっ!?

 そっか、その手があったわ!!

 私より強力な防御魔法の使い手なんてテンイ以外、いなかったから使える事自体、忘れてた・・・。」


・・・聖女らしいわね。

もっとも私もジークの力に絶望するあまり、『ストロング・バリア』の存在を失念してたんだけど。


「早く、聖女!!

 これ以上は勇者が持たない・・・。」


「任せなさい!!

 ・・・テンイ、遅れてごめん。

 私だって、戦うわ!!」


聖女は急ぎ魔力を練り、そして魔法を発動させる!!





「フォース・ストロング・バリア!!」





彼女の魔法が勇者のバリアに対し、発動する。

すると、今にも壊れそうな勇者の防御魔法が光り輝いた!!


「エミリー!!

 今更お前が出しゃばった所で、何になるってんだ!?

 ひゃはは、無駄だ無駄だぁーーーー!!

 ・・・ぁぁぁぁああああ???」


「!!・・・・・・?

 ・・・あ、あれ??

 なんか急にバリアが壊れにくくなった!?」


勇者の張ったバリアの強度が増し、ジークの自爆魔法を抑え込む!!


「王女様?

 聖女様、何したの~?」


「それはね、クロ。

 聖女は魔法で勇者の防御魔法を強化したの。」


『フォース・ストロング・バリア』はランク4の魔法で、バリア系の防御魔法を強化する効果があるの。

『ストロング・バリア』系の魔法は重ね掛けが可能で、大勢が使用する事で野良ドラゴンのような災厄すら跳ね除けられるわ。

見習い魔法使いは『バリア』系の魔法よりも、『ストロング・バリア』系の魔法で仲間の防御魔法をサポートする方が多いとも聞く。


・・・でもまあ、聖女は彼女自身が世界屈指の防御魔法の使い手だもの。

他の人から『ストロング・バリア』を使ってもらう事はあっても、自分が『ストロング・バリア』を使う事は早々無かったんでしょう。

自分自身の『バリア』は『ストロング・バリア』で強化出来ないしね。


って、そうだ。

勇者と聖女に任せっきりにするのも良くないわ。

私も・・・!!


「ストロング・バリア!!」


ランク1の強化魔法を使い、勇者のバリアを更に強化する。


「あらま。

 王女も『ストロング・バリア』使えたのね。」


「・・・あなたと違って、ランク1だけどね。

 それでも少しは勇者の力になれるはずよ。」


この手の魔法は大勢で使うほど、加算形式で効果が大きくなるからね。


「エミリー、王女・・・。」


「テンイ、私達も力を貸すわ。

 皆であいつから世界を守るわよ!!」


「うんっ!!」


「ご主人様~、聖女様~、王女様~。

 頑張って~~~~!!!!」


クロの声援を聞きながら、私達三人は力を合わせ、ジークの自爆魔法を抑えに掛かった。


「・・・うっ。

 嘘だ、うそだ、うそだうそだぁーーーー!!!!」


聖女(と一応私)の援護の甲斐あって、勇者の防御魔法がジークの自爆魔法を上回ったわ!!

勇者のバリアはひびさえ入らなくなり、自爆による強大なエネルギーを完全に抑え込んでいる。


これならいける・・・!!

勇者を・・・罪の無い人々を死なせずに済みそうよ。


「嫌だぁああああ!!!!

 そんなの、嫌だぁああああ!!!!


 今まで俺がどれだけこの世界に裏切られたと思ってんだぁああああ!!!!

 俺は絶対、この世界をぶっ壊してやるんだぁああああ!!!!」


それでもジークは自爆魔法の発動を止めようとしない。

それほどまでに・・・ジークの憎しみは強いの?





「ジーク。

 お前、そんなにこの世界を憎んで・・・。


 ・・・俺ももし王女達と出会えなかったら。

 あいつみたいにこの世界の全てを憎んでたのかな?」





バリアの強化に必死でよく聞こえなかったけど、勇者が同情した様子で何かを呟いていた。

その後、決意を決めた表情でジークを見やり・・・。


「ジーク!!

 お前にこの世界は壊させない・・・。

 お前にこれ以上、罪は犯させない!!」


「嫌だぁああああ!!!!

 嫌だぁああああ!!!!」


世界を守る勇者の防御魔法と、世界を壊さんとするジークの自爆魔法がせめぎ合う!!


・・・一体、どれくらい続いたのでしょう?

それは1分も経っていなかったかもしれない。

逆に何時間ものせめぎ合いだったかもしれない。


そして・・・。



********



私達はなんとかジークの自爆魔法を抑えきる事に成功したわ。

私達四人はもちろんの事、古城にいる攫われた人達にも被害は出ていない。


・・・ジークの近くにいた元ハーレムは全員、跡形もなく消し飛んじゃったけど。

そしてジークも・・・。


「あっ・・・。

 あっ・・・。」


自爆魔法の使用により、全身黒焦げの状態で棒立ちとなっていた。

まだギリギリ死んでいないけど、あの様子だと命尽きるのも時間の問題よ。


「これは・・・ヒールじゃとても回復しそうにないわ。

 リザレクションなら復活出来るのかしら?

 ・・・まっ、私はリザレクション、使えないんだけど。」


リザレクションはヒールの上位魔法で、死んでさえいなければどんな状態であれ完全に回復するの。

しかしリザレクションの修得難易度はランク5の魔法すら上回ると言われ、歴代の聖女でさえ、この魔法を使えたという話は聞かないわ。


「俺の・・・せいかな?

 俺のせいで、ジークもジークのハーレムも死んで・・・。」


勇者が泣きそうな顔で呟いている。

けどね。


「それは違います!!」


「・・・え?」


「あなたのせいではありません。

 彼らがこのような末路を辿ったのは、彼ら自身がそうなる道を選んだからです。

 決して、自分が彼らを殺したなどと誤解しないで下さい!!」


そうよ。


今回の出来事を見て『勇者が人を殺したんだ~』って、言っちゃったらさ。

世界の不幸は全て転移勇者のせい、な~んて暴論に繋がりかねないもの。

そんなの、冤罪を吹っ掛けてるのと同じよ。


「王女の言う通りよ。

 別にあなたが手を下したわけじゃないわ。

 背負わなくていい罪なんて、捨てちゃえば良いのよ!!」


「うん!!

 ご主人様は、な~んにも悪くないもん!!」


「みんな・・・ありがとう。」


そうそう。

無実の罪を背負わされて、勇者がやけになっても、それで困るのは世界だからね。


「どう・・・し・・・て、俺・・・だけ・・・。

 なん、で・・・テンイだ・・・け・・・恵まれ・・・て。」


ジーク?

あなた、何を勘違いしているの!?


「それは違うわ!!

 ジーク。」


「王女?」


「あなただけが恵まれなかったんじゃない。

 勇者だって恵まれていない・・・。

 ・・・恵まれていないから、この世界の悪人達に誘拐されちゃったのよ。」


「王女・・・。

 それは。」


どんなに強い力を授かろうが、望んでもいないのに異世界に連れ去られて、さ。

恵まれてるはずないじゃないの。


・・・でもね。

私は今にも力尽きそうなジークに近づき、彼の手を握りながら語り掛ける。


「デルマ!!

 俺の・・・手を。」


「だけど、あなたの傍に聖女やクロのような子がいれば。

 正しい心を持ったハーレムと一緒なら!!

 こんな間違いは犯さなかったのに・・・。」


ジークの不幸は彼の周りに理解者が一人としていなかった事かもしれない。


「正しい心を持ったハーレムって。

 随分とシュールな台詞ね。」


「こら、エミリー!!

 しーっ・・・。」


「?~。」


・・・後ろで聖女達がふざけてるけど、それは放っておいて、と。


「ははは、そうかもな。

 俺の傍にもお前達のようなハーレムがいれば、良かったのに・・・な。」


涙を流しながらジークは語る。

しかし彼の手から力がどんどん抜け落ちていくのがわかる。


「なあ・・・テンイ。」


「・・・なんだい?」


「お前は自分のハーレムを・・・大事にしろ・・・よ。

 そして俺のようにはなる・・・な・・・。」


「・・・何か誤解してるみたいだけど、さ。

 俺は王女達を、仲間を大切にするよ!!

 やけになって罪の無い人を傷つけたりしないよ・・・。」


誘拐犯の娘である私まで大切にするなんて、宣言しなくても良いんだけどさ。

死に際のジークに同情し、話を合わせたのかしら?


「絶対に・・・だぞ。」


その言葉を最後に今度こそジークは力尽きた。





こうして山賊騒動は幕を閉じた。

悲しき元転移勇者の命と引き換えに・・・。


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読んで頂き、ありがとうございました。

少しでも「続きが気になる!」「面白い!」と思って頂けたら、評価★★★★★と、ブックマークを頂ければと思います。

どうぞよろしくお願いします。
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