第49話 偽りのハーレム編⑪ 裏切り者の末路
視点を変えれば、今話はなろう系ではお馴染みのテンプレ話です。
が、人によっては少々残酷に感じるかもしれないので、苦手な方はブラウザバック推奨です。
この話を読み飛ばしても話の流れがわかるように調整します。
私の愛読書『転移勇者との付き合い方 ~ハーレム編~』にはこう記されていた。
転移勇者は自分を裏切った人間を絶対に許さない、と。
裏切り者は激しい拷問を受け、惨たらしい最後を迎えるだろう、と。
「きゃああああああああ!!!!!!!!」
悲鳴がした方を振り向くと、ジークの元ハーレムの二人が業火に包まれている!!
「あ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″!!!!????」
しかし彼女達の叫びも長くは続かず、先ほどの山賊と同じく、骨すら残らず消し炭となった。
誰がこのような真似をしたかは、語るまでも無いでしょう。
「・・・・・・。
なんだ、もう燃え尽きたのか。
人間なんてあっけねえなぁ。」
静かすぎるジークの呟きが逆に恐ろしい。
彼は自らのハーレム全員に裏切られてしまった。
勇者に敗れた。
ただそれだけの理由で・・・。
ジークは呆気に取られている元ハーレムに対し、淡々とした様子で攻撃魔法を発動。
「フォース・ソウルブレイク・ファイア。」
彼の手より生み出された漆黒の炎が元ハーレムの五人を包み込む!!
「「「「「ぎゃああああああああ!!!!????」」」」」
彼女達は漆黒の炎に巻かれながらも、衣服さえ燃やしていない。
なのに絶え間なく悲鳴を上げ続けているわ。
「王女。
あの魔法って確か・・・。」
「ええ。
精神を焼き尽くす、悍ましい炎魔法よ。」
『フォース・ソウルブレイク・ファイア』はランク4の魔法で、消えも燃えもしない漆黒の炎を放つの。
当然ながら、肉体的には全くダメージは無いわ。
けれど本物の炎に燃やされた時と同様の苦痛は受けてしまう。
つまり精神が壊れるまで、燃やされる苦痛を与え続ける、鬼や悪魔でさえ使用を躊躇う魔法よ。
「いやぁああああああああ!!??」
「あ″つ″い″よ″~~~~、い″た″い″よ″~~~~・・・。」
「ジーク様~~~~!!!!
どうかお許しを~~~~!!!!」
・・・先ほど燃やされた元ハーレムの二人はまだマシだったのかもしれない。
燃やされる苦痛をこれほど長く味合わなかったのだから。
「許すわけないだろ?
俺が受けた苦痛はこんなものじゃないんだ。」
燃えない炎にのたうち回る元ハーレムに対し、ジークは静かに語り掛ける。
その表情は一見、穏やかながらも、泣いているようだった。
「皆!!
早くこの場から離れましょう。
巻き添えを受けたら一巻の終わりよ。」
はっ!?
そうよ、聖女の言う通りだわ。
「ええ、わかったわ。
クロも早く!!」
「う、うん・・・。」
私達三人はジークの暴走に巻き込まれないよう、慌ててその場を離れ・・・。
・・・三人?
「あ・・・。
あああぁ・・・。」
って、しまった!!
勇者ったら、恐怖のあまりへたり込んでるじゃない。
「勇者!!」
私は急ぎ、勇者の元へと駆け寄った。
早く彼も連れて行かないと、ジークの報復に巻き込まれてしまう!!
「早く立ちなさい!!
ジークの暴走に巻き込まれるわ!!」
へたり込んだ彼の手を必死で引っ張るも、中々前へ進まない。
勇者って意外とがっしりしてるから、私程度の腕力じゃ思うように動かせないの。
か、彼を運ぶための魔法かスキルは・・・。
「王女様~。
あたし、ご主人様をヨイショするの~!!」
「クロ!?」
いつの間に近くまで来たのか、クロが勇者を軽々と持ち上げる。
そうか。
自慢(?)の腕力で勇者を運んでくれるのね。
「助かったわ。
さあ、クロ。
聖女へ向かって、勇者をヨイショするのよ!!」
「うんっ!!」
ちなみにここでの『ヨイショ』はもちろん、重い物(勇者)を運んでと言う意味よ。
・・・まさかハーレム要員がそんなやり方で主人を『ヨイショ』するなんてね。
「テンイ、王女、クロ!!
急いで、急いで!!」
急かす聖女へ向かって、私達は必死になって走り続ける。
ジークの暴走に巻き込まれないために・・・。
「「「ひぃ・・・ひぃ~~~~~~~~!!!!!!!!」」」
生き残っている元ハーレムも凶行を繰り返すジークに怯え、一目散に逃げようとするが・・・。
「・・・。
フォース・パラライズ・サンダー!!」
ジークの手から放たれた紫色の雷が逃亡する彼女達に襲い掛かる!!
それどころか私達の方へも雷が・・・って、嘘!?
「!??
フォース・バリア!!」
バチッ!!
けれど、聖女が防御魔法で守ってくれたおかげで、私達四人は無事だったの。
でも・・・。
「きゃああああ!??」
「か、体が痺れて・・・。」
「動けない!?」
ジークの元ハーレムは一人残らず、紫色の雷に直撃してしまう!!
『フォース・パラライズ・サンダー』は雷属性の魔法で、ランク4の魔法ながら殺傷力はほぼ無いの。
でもこの魔法から生み出された電撃を食らうと、体が麻痺し、動けなくなってしまうわ。
・・・あのドラゴンでさえ、この魔法に直撃したら、動きが封じられてしまうほどよ。
「・・・。」
痺れて動けない元ハーレムの一人の方へ、ジークが静かに足を進める。
元ハーレムは恐怖の余り、必死に足掻くも一歩たりとも動く事が出来ない。
「やめて、お願い!!
近づかないで・・・。
殺さないで!!」
涙を流しながら懇願する元ハーレムに対し、ジークも涙を流しつつ、顔を近づけた。
そして唇に口付けを・・・って、あれ?
ひょっとして、彼女は許す気?
などと思ったのも束の間。
「フォース・ファイア・キッス!!」
元ハーレムの体が突如、燃え始めたの!!
まるで原因不明の人体発火の如く。
「あごぶぁわああああああああ!!!!????」
そしてそのまま灰へ化す。
・・・『フォース・ファイア・キッス』。
これもランク4の炎魔法だけど、相手の唇に口付けする事で発動するかなり特殊な魔法よ。
使い勝手はすこぶる悪いけど、発動を許してしまえば、体内に強烈な炎を送り込まれ、成す術なく燃え尽きてしまうわ。
瞬間的な苦痛なら『フォース・ソウルブレイク・ファイア』すら上回るかもしれない。
「うえ~ん!!
怖いよ、怖いよ~・・・。」
「クロ!!
見ちゃダメ!!」
容赦なく仲間を惨殺するジークに怯え、とうとうクロは泣き始めてしまった。
聖女が防御魔法を維持しながらも、彼女を凄惨な光景から背けさせる。
しかしそれでもジークの報復は終わらない。
次なる標的を定め、元ハーレムの一人へと向かうも・・・。
「ジーク様・・・どうかお許しを。
そ、そうだ。
先ほどはテンイ達の魔法のせいで、あなた様を裏切るような言葉を発してしまったのです。
決して、私の本意ではありません。
どうか信じて下さい!!」
「ほう?」
元ハーレムは惨殺されたくないあまり、さっきの発言を私達のせいにしようとしたの。
「・・・って、あんたねぇ。
よくもまあ、そ~んな出任せをペラペラと。」
泣きじゃくるクロをあやしながら、ツッコミを入れる聖女。
・・・聖女の言う通り、彼女がジークを裏切ったのは完全に本人の意志よ。
大体、勇者は彼女らをハーレムに加える気なんて一切なかったもの。
魔法の力でジークを裏切らせるような真似、するわけないじゃない。
けれどジークが彼女に騙され、私達へ牙を剥く可能性も低くない。
いくら嘘丸出しな台詞でも、人は信じたいものに盲目だから。
未だ勇者はすくんでいるし、もしもジークに襲われたら・・・。
「・・・。」
だがジークは無表情なまま、元ハーレムを殴り付ける。
「ぎゃ!?
・・・えっ?
ジー・・・ク、様。」
「そんな嘘に俺が騙されると思ったのか?」
さらにもう一度、元ハーレムを殴り付ける。
「ぶっ!?」
「ふざけんな!!
何が魔法のせいで俺を裏切った、だ!?
ぜ~んぶお前の本心なんだろうがぁ!!」
怒鳴りながら、泣きながらジークが元ハーレムを殴り続ける!!
最初の内は悲鳴や懇願を行っていた彼女も、何度も何度も力一杯殴られ続けたせいで、いつの間にか意識を・・・命を失っていた。
それでもジークは構わず彼女を殴り続ける。
魔法もスキルも一切使わず、素手による殴打だけで命を奪うなんて。
ジークは・・・狂ってる!!
「なんで、どうして・・・。
・・・わからない、わからないよ。
どうして仲間を簡単に裏切れるんだ?
どうして仲間を容赦なく殺せるんだ!?」
勇者がへたり込んだまま、震える声で呟く。
今回の彼は初めからジークの強さそのものにはそれほど怯えていなかった。
だけど彼らの悪意に・・・人間の憎悪に恐れ、慄いている。
・・・私だって、何故ジーク達がそこまで残虐になれるかはわからない。
けれど。
「勇者!!
今は怯えている場合じゃないわ。
早く立ち上がるのよ。
このままあなたが怯えていては、あなた自身の命が危ういの。
聖女やクロだって、危険な目に合うかもしれないの!!」
こんな態度を取るなんて、私はハーレム要員失格ね。
でも勇者、あなたをこんな所で死なせるわけにはいかないの!!
それに出来れば、聖女やクロも助かって欲しいし・・・。
「!!!!
俺がこんな調子じゃ、聖女やクロ・・・王女まで危険な目に・・・?
・・・そうだ。
今はジーク達の狂気に怯んでいる場合じゃない!!」
ようやく怖がっている場合では無いと理解したのでしょう。
ずっと怯えていた勇者が立ち上がってくれたわ。
「なんとか復活したようね、テンイ。
さて王女、どうしましょう。
逃げる? 止める??」
「う~ん・・・。」
本音で言えば、一目散に逃げ出したい。
けれどあの状態のジークを放っておけば、どれほどの災厄を振り撒くかわかったものではない。
とは言え、勇者の力をもってしても、暴走したジークを殺さず制すのは難しいと思うわ。
・・・次はどう動けば。
「もう遅ぇよ。」
え?
「逃げても、止めようとしても無駄だ。
・・・俺はもう決めたんだ。
こんな腐った世界、ぶっ壊してやるって。
だから一緒に死んでくれ・・・。」
「やだぁーーーー!!!!
離して、逃がして・・・。」
元ハーレムの最後の一人を抱えながら、ジークが叫ぶ。
その後、彼の体からはち切れんばかりの光が放出された!!
この輝きは・・・まさか!?




