第47話 偽りのハーレム編⑨ ジークの究極魔法
「テンイ。お前も、俺に従わないお前のハーレムもみ~んな、ぶっ殺してやんよ!!
・・・覚悟しやがれ。」
「キャ~~~~(≧∇≦)
ジーク様~!!」
「やっちゃえ。
やっちゃえ~!!」
山賊のお頭へと堕ちた転移勇者ジークが牙を剥く!!
怒り狂うジークを彼のハーレムが焚き付ける。
「でもま、弱そうなお前らにはこの魔法で十分だ。
フォース・ファイア!!」
ジークの手から凄まじい炎が吹き荒れた!!
『フォース・ファイア』はランク4の炎魔法で、その威力は軽く見積もってもドラゴンのブレスに匹敵するの。
・・・にしても、私達を倒すために彼のアジトである古城まで巻き込む気?
見境なさすぎるでしょ!!
「そんな!!
人に向かって、あんな威力の魔法を放ったら、殺・・・。」
同郷の人間からの強烈すぎる悪意に、勇者はただただ呆然するしかない。
「・・・テンイ?
くっ!!
フォース・バリア!!」
今、ジークの魔法をなんとか出来るのは自分だけだと判断したのでしょう。
聖女がランク4の防御魔法を使い、荒ぶる炎に抵抗する!!
「うっ・・・。
くっ!!」
「聖女様。
負けないで!!」
邪悪な炎と聖なるバリアがせめぎ合う。
ヒドラの攻撃を防いだ時より余裕が無さそうで、ハラハラするも、なんとかジークの炎魔法を防ぎきった。
「何・・・?
現地人がランク4の攻撃魔法を防いだ、だと!?」
「はぁー、はぁー・・・。
そっちこそさすがは異世界人ね。
なんてパワーなのかしら。」
互いの強さに驚愕を露わとするジークと聖女。
まあ、ランク4の魔法なんて、世界でも数えるほどしか使用者がいないものね。
「『聖女』と呼ばれる、ランク4の防御魔法の使い手・・・。
・・・あの女、まさか!?」
「聖女エミリー!?」
先ほどの攻防で、ジークのハーレムが聖女の正体に気付いたみたい。
「噓でしょ・・・。
あんな図々しそうなアバズレが、本物の聖女だったなんて。」
「誰が図々しそうなアバズレよ!?」
ハーレムに図星を突かれ、怒り狂う聖女。
「はぁー・・・。
聖女エミリーの噂は聞いていたが、あいつがそうだとはなぁ。
小手調べとは言え、俺の攻撃を防ぐなんて凄ぇぜ!!
・・・それに引き換え。」
ジークが聖女に惜しみない称賛を送る一方・・・。
「テンイ。
お前、転移勇者の癖に女に守られてばっかで、な~んにも出来ねぇのかよ?
このヘタレが、ぎゃはははは!!」
「!!
・・・お、俺は。」
ジークから小馬鹿にされ、しかし勇者は何も言い返せない。
けど今回は敵の力そのものに恐怖したのではなく、きっと・・・。
「気にしなくて良いのよ、テンイ。
私が皆を守るから!!」
だけど勇者が動けずとも、聖女ならばきっとジークの悪意から皆を守れるはず!!
あとはジークの攻撃を防ぎつつ、どうやって攫われた人々を救出するかだけど・・・。
「あんま、俺を舐めんなよ。
エミリー。
あれが全力だなんて、いつ言った?」
えっ?
「はぁああああああああ!!!!」
ジークが両手を天に掲げ、魔力を溜めると同時に空が紅蓮へ染まっていく!!
う・・・嘘でしょ?
あの魔法はまさか!?
「ついに発動するのね。
ジーク様の究極魔法が・・・。」
「ああっ。
いつ見ても惚れ惚れしますわ♪」
・・・『あれ』を見て、惚れ惚れするなんて、狂ってるんじゃないかしら?
あのハーレム。
「ジーク・・・。
魔法で太陽、作ったの?」
クロがそう誤解するのも無理はない。
ジークの頭上には太陽だと錯覚しそうなくらい、巨大な火球が浮いていたのだから!!
「あれはランク5の炎魔法。
フィフス・サン・フレイム。
太陽にも似た火球を作り出し、全てを燃やし尽くす神々の魔法よ。」
「ランク5の魔法ですって!?
神同士の争いで使われる代物じゃない!!
・・・そんなものが使えるなんて、でたらめ過ぎるわ。」
例の本にも、戦闘の才を持つ異世界人はランク5の魔法・スキルさえ扱える。
と、記されていたわ。
けれどそれが真実だったなんて。
いくら聖女でもあの魔法だけは防げない。
だってランク5の魔法なんて、神々が世界の覇権を掛けて争う時に使われるような魔法よ?
あれを食らってしまえば私達どころか、攫われた人々すら、古城ごと消し炭となる。
私も聖女もクロも人知を超える強大な魔力を前にして、呆然とするしかない。
「・・・・・・。
俺は・・・俺は!!」
そんな中、勇者はひたすら葛藤し続ける。
己の取るべき道に迷い、行動を起こせずにいる。
「はーっはっは!!
さすがのアホハーレムも、俺の究極魔法を前にして声すら出ないようだな。
だがその前に・・・エミリー!!」
「な、何よ?」
「小手調べとは言え、お前は俺の攻撃魔法を防いだんだ。
これが最後のチャンスだ。
俺の女になれ!!」
ジークが凶悪な面構えで、聖女に向かって自分のハーレムに加わるよう、勧告する。
「ど~せお前も転移勇者の力で、美味しい思いがしたかっただけだろ?
・・・そんな根性無しに引っ付いて、何の得があるかは疑問だがな!!
その点、俺の元に来れば、欲しい物は何だって手に入るぞ~♪
あ~ひゃっひゃっひゃっ!!」
・・・これは今度こそ、聖女は勇者を裏切るのかもしれない。
だけどそうなっても仕方はない。
彼女は勇者に恩義を感じているクロや、罪滅ぼしが目的で付き従う私とは違う。
どこまでいっても打算第一で彼と共にいるのは紛れもない事実。
しかも歯向かえば死ぬしかないこの状況、例えジークに寝返ったとしても責められないわ!!
「力を利用したくて、テンイに引っ付いてるだけですって?
あんたの言う通りね。
・・・だからどうしたって言うの?」
聖女?
「それでもテンイは私の友達で・・・仲間なのよ!!
仲間なら、ちょっとピンチになったくらいで裏切りはしない。
あんまり私を、聖女を舐めないで!!」
「エミリー!!」
せ、聖女・・・。
やっぱりあなた、とっても格好良い女の子だわ!!
「・・・!!!!
やっぱお前ら、どこまでいっても気に食わねえわ。
何が『仲間なら、裏切りはしない』だ!?
そんな訳あるかぁああああああああ!!」
って、なんでジークはそんなに切れてるの?
なんか心の地雷、踏んじゃった!?
「・・・あら~。
よくわかんないけど、余計怒っちゃったわね。」
「そんな呑気な・・・。
あなた、あいつの魔法をどうにかする手立て、あるの?」
「・・・あるわけないでしょ。
さすがの私もランク5の魔法なんて使えないもの。
ど~する、王女?」
聖女だって規格外の傑物ではあるけど、それでも神々と張り合えるほどじゃないからねぇ。
勝算も無いのにあれだけの啖呵を切れたのは称賛に値するけど。
・・・。
しかしなら、どうすれば・・・。
どうすれば、ジークの究極魔法を防げるの!?
「大丈夫だよ。
皆。」
勇者?
「全員、消し炭になってしまええええええええ!!!!
フィフス・サン・フレイム!!」
ジークが太陽にも似た巨大火球を、私達に向かって放り投げた!!
しかし・・・。
「王女。もう俺は迷わない。
君達の命を守るために・・・。
俺だって戦うんだ!!」
ドラゴンやヒドラでさえ、一瞬で消し炭にするほどの火球を目にしても、怯む事なく前へ出る勇者。
そして彼は火球に向かって手を伸ばし、魔法を唱えた!!
「アイス!!」
「( ゜Д゜)ハァ?
『アイス』だとぉ!?
テンイ、お前・・・アホすぎんだろ!!
ランク1の魔法なんかで、この俺の魔法を・・・魔法、を・・・・・・?」
勇者の手から太陽をも凍らせんばかりの冷気が吹き荒れる!!
全てを燃やし尽くすはずの火球がランク1の氷魔法によって、急激に小さくなっていく。
「そんな・・・嘘だろ、おい?
たかがランク1の氷魔法で、俺の究極魔法を・・・。
ランク5の究極魔法を!?」
・・・ジークが驚くのも無理ないわ。
勇者はチート能力のせいで、通常の数十倍、数百倍の威力で魔法を発動出来る。
だからランク1の魔法でさえ、ランク5の魔法をも上回るパワーが引き出せるの!!
そしてジークの放った『フィフス・サン・フレイム』は勇者の『アイス』によって、完全に消滅。
それでも勇者の『アイス』は勢いが衰えず、ジーク達を氷漬けにせんと襲い掛かった!!
「嘘だ・・・嘘だぁああああああああ!!!!」
「「「きゃああああああああ!!??」」」
ジーク達が勇者の魔法により、氷漬けとなる直前!!
「・・・。
もう良い、止まれぇ!!」
勇者が『アイス』の発動を中断した。
あっ!?
そっか。
パワー自体をコントロール出来ずとも、発動した魔法の中断は可能ってわけね。
あれで勇者、パワー以外の制御はバッチリだもの。
・・・かなり際どかったし、毎回上手くいくとは考えない方が良さそうだけど。
「あ、が、が・・・。
嘘だ、嘘だぁ!!
・・・・・・あっ!?」
氷漬けこそ免れたものの、強烈な冷気による震えと究極魔法を打ち破られたショックで、ジークは隙だらけとなっている。
その隙を逃がさず、テンイはジークに剣を向け、高らかに宣言した。
「ジーク・・・もうお前に勝ち目はない。
大人しく攫われた人々を解放するんだ!!」




