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第42話 偽りのハーレム編④ 山賊との遭遇

ひょんな事から、山賊に攫われた人々の救出依頼を受けた転移勇者一行。

なので私達は今、冒険者ギルドからの情報を元に山賊が住む山へと向かっていた。



********



「さて、張り切って攫われた人々を救出するわよ。

 目指せ、金貨1000枚!!」


「・・・張り切るのは良いけど、油断しちゃダメだからね。

 聖女。」


実は最初、山賊の『討伐』を求められたわ。

だけど勇者に人殺しは無理だったから、『討伐』依頼から攫われた人々を『救出』する依頼に変わったの。


依頼内容が変わったから、報酬も1/5に減っちゃったけど、それでも金貨1000枚だからねぇ。

いくら勇者の力が凄くとも、楽勝とはいかないでしょう。


「やっぱりギルドの皆の言う通り、ヒドラよりも強い山賊なのかなぁ。

 だったらさ、王女。

 俺もランク2以上の魔法やスキルを修得して、対抗すべき?」


「修得しないで下さい。

 世界が滅びてしまいます。」


「そこまではっきり言わなくても・・・。」


勇者はチート能力のせいでランク1の魔法・スキルでも、ランク5以上のパワーを引き出せる。

そんな状態でランク2以上の魔法・スキルを身に付けたら、冗談抜きで世界が滅びかねないわ。


「そもそもね、テンイ。

 普通、高ランクの魔法・スキルなんて、そう簡単に修得できないわ。

 才能豊かな人間が長い修行を積んで、身に付けるものなんだから。」


「そうなんだ。」


聖女の指摘通り、魔法・スキルはランクが1つ上がるだけで威力が大幅に上昇する。

故にそんなあっさりと使いこなせるようにはならない。


普通であれば・・・。


「一応、異世界人は最初からランク3~4の魔法・スキルくらいは使えるケースが多い。

 と、例の本には書かれていますけど。」


ちなみにランクによる魔法・スキルの修得難易度は大まかに言えばね。


ランク1の魔法でも、使えれば一人前。

ランク2の魔法ですら、プロを名乗れるレベル。

ランク3の魔法なんて、達人と呼ばれる人達しか使えない。

ランク4の魔法まで来たら、使えるのは世界でも有数の実力者だけよ。

ランク5の魔法はそうね・・・扱えるのは神々のみとさえ言われているわ。


「勇者様の場合、チート能力で魔法・スキルの威力が通常の数十倍、数百倍になっています。

 だから他の異世界人と同じように、高ランクの魔法・スキルを扱えるかはわかりません。」


勇者のチート能力は一見、ズルすぎるように感じるけど、使い勝手はすこぶる悪い。

破壊力がありすぎて、少しでも使い方を誤ると自滅しかねないもの。


「・・・じゃあさ。

 もし俺がランク2の攻撃魔法を使ったらさ、どうなると思う?」


「ランク1の魔法・スキルでさえ、ドラゴンやヒドラを軽々と倒せるくらいです。

 ランク2の攻撃魔法なんて使用したら、世界の1%が消滅するのでは・・・。」


つまり100回も使えば、世界を完全に破壊できるってわけね。

・・・あまりにもヤバすぎる。


「うん!!

 俺、ランク2の魔法・スキルを覚えるの、諦めるよ。」


諦めるの早っ!?


だけど賢明な判断だと思うわ。

世界を破滅させないためにも。


こんな感じで軽く雑談しながら、山の中を進んでいると・・・。





「!??

 がるるるる・・・。」





何故か突然、クロが唸り声を上げ始めたの。


「あら?

 どうしたのクロ。

 急に唸り声なんか上げちゃって。」


「聖女様、皆。

 近くに嫌な人達、たくさんいる!!」


えっ?



「へっへっへっ・・・。

 ま~だ俺達に歯向かうバカがいるとはな。」



声と同時に茂みの中からハゲ頭で人相が悪く、上半身裸の男達が現れた!!

その数、ざっと20~30人ほど。


これがギルドの人達が言う・・・山賊?


「ん・・・おおおおおおおお!!!!

 あそこにいる姉ちゃん達、すっげぇ可愛いじゃん!!」


・・・その台詞、どこかで聞いた事があるわね。

路地裏でチンピラといざこざを起こした時だったかしら?


「あのイケメン野郎の連れかぁ?

 よ~し。さっそく邪魔者をぶっ殺して、俺達の女にしようぜ!!

 そして・・・ぐひひ。」


だけどせいぜい軽いナンパ程度のノリで、大して悪意のなかった彼らとは違う。

本気で勇者を殺し、私達を強姦しようと考えてるみたい。


「・・・き、気持ち悪いわねぇ。」


チンピラの時は大して嫌がっていなかった聖女でさえ、嫌悪感を剥き出しにしている。

そりゃまあ、本物の性犯罪者に拒絶反応を示すのは人として当然よね。


でも彼ら・・・?

・・・・・・まあ、考えていても仕方ないわ。


「皆、まずは私からいくわ。

 サンダー!!」


先手必勝!!

私はさっそく、ランク1の雷魔法を使用した。

手から放たれた電撃が眩しい光を放ちながら、山賊へと襲い掛かる。


「おおっと?

 だったら、こっちもサンダーだ!!」


が、山賊の1人が私と同じ、雷魔法を使用する。

雷と雷が激しくぶつかり合い、火花を散らしながら、相殺された。


くっ?

さすがにゴブリンと同じようにはいかない、か。


「ほう。

 あの女、魔法が使えるのか。

 華奢に見えて、意外とやるじぇねぇか。」


「だがよう。

 その程度の魔法で俺らを倒せると思うなよ!!」


雄叫びを上げながら、何人かの山賊が武器を片手に突撃する。


「セカンド・バリア!!」


バギッ!!


「「「ぐへっ!?」」」


しかし聖女の防御魔法により、山賊の突撃はあっさりと防がれた。

『セカンド・バリア』はランク2の防御魔法で、強度は『バリア』以上、『フォース・バリア』未満と言った所かしら。

それでも並の人間や魔物では、この防御魔法を打ち破る事は出来ないでしょう。


「ちっ!!

 あっちの女は防御魔法の使い手かよ?

 厄介だな。」


とは言え・・・。


「・・・う~ん、王女。

 これはちょっとまずくないかしら?」


「そうね・・・。」


「う~~~~!!」


聖女は防御魔法こそ凄いけど、攻撃能力に欠けるわ。

けど私の実力では、1~2人ならともかく、あれほど大勢の山賊は打ち倒せない。

クロはそもそも非戦闘要員。



「・・・・・・。」



そして勇者は・・・。

もし彼が相手を殺す気で戦えば、あんな山賊なんて虫けらの如く、捻り潰せるでしょう。

・・・あくまで『殺す気で戦えれば』の話だけど。



一体、どうしたら良いのかしら?


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