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第38話 ゴブリン討伐編④ 転移勇者VSゴブリン

現在、転移勇者PTはゴブリンの群れとの戦闘中。

十体中、三体を倒し、残りは聖女達に絡んでいる七体のみ。



「ほらほら!!

 あなた達の攻撃は所詮、この程度なの?

 もっと頑張んなさいよ。」


「「「グギャギャーーーー!!!!」」」



なお、聖女は不敵な笑みを浮かべながら、ゴブリンを挑発していた。

怒り狂ったゴブリンがバリアを破壊せんと、健気にも攻撃を続けている。

クロも多少は慣れたのか、荒ぶるゴブリンを前にしても比較的落ち着いているわ。


にしても、タゲ取ってくれてるのだろうけど、相変わらず勇ましすぎる聖女ね。

風格が歴戦の猛将そのものだわ・・・。


けどまあ、これはチャンスよ。


「勇者様。

 ゴブリンが聖女達に気を取られている隙に後ろから攻撃しましょう。」


と、小声で伝える。

だけど。


「え~・・・。

 いくら相手がゴブリンだからって、それは卑怯すぎない?」


「・・・卑怯って、勇者様。

 これは武術の試合ではなく、魔物との命の取り合いですよ?

 そんな事に拘っていると、いつか足をすくわれますわ。」


正々堂々戦いたいって気持ちもわかるけど、少し能天気だと思うわ。

そもそも今回は相手の方が数が多い上、ゴブリンだってさっきは勇者の不意を突くような真似をしている。

とは言え、魔物との戦いではあの程度の事、卑怯の内にも入らない。


魔物との命の取り合いなんて、そんなものだから。


「!!

 そうだね・・・これは魔物との命のやり取りなんだ。

 綺麗事ばかり、言ってられないか。」


うんうん。

勇者も納得してくれたみたい。


私の案を受け入れ、勇者は聖女達を襲撃しているゴブリンの後ろへそろりそろりと近づく。

そして彼の攻撃が当たる所まで接近した直後!!


「切り捨て御免!!」


「グギャア!??」


勇者の剣が一体のゴブリンの背中を切り裂いた。


「グギャ!?」


もう一体のゴブリンが気付いた時にはもう遅い。

振り向いた直後、勇者によって斬り伏せられたわ。


「ファイア!!」


「ギャギャア!??」


私も炎の攻撃魔法を使用し、ゴブリンを一体やっつける。

残りはあと四体!!


「グギャ、グギャ・・・。」


「グギャウ!!」


生き残ったゴブリンが慌てて距離を取り、唸り声を上げる。

大勢の仲間を倒され、焦っているようね。


だけどまだ油断は出来ない。



「皆、離れてて。

 少し試したい事があるんだ。」



って、えええ?


「いやいや、勇者様。

 敵はまだ四体もいるのですよ。

 さすがにお一人では・・・。」


「そう言わずにやらせてみなさいよ。

 王女。

 危なくなったら、私が助けてあげるからさ。」


う、う~ん。

まあ、今回は勇者の実力を測るのが主目的だから・・・ね。


それにゴブリンは数に任せた集団暴行こそ恐ろしいものの、一撃のパワーはそれほどでもない。

一撃や二撃程度なら、攻撃を食らってもまず死なないでしょうし、ここは勇者に任せてみましょうか。


「・・・わかりました。

 ではご武運を。」


私は勇者から離れ、聖女の近くまで引き下がる。

けど私も、いつでも加勢できるようにしないと。

聖女も口ではああ言ってたが、いつでも防御魔法で援護できるよう、身構えてるしね。


でも勇者の試したい事って、一体何なのかしら?


「・・・。」


カチャン。


嘘!?

剣を鞘に納めた・・・?

その後、勇者は鞘に手を掛けたまま、ゴブリン達を睨み付けている。


一体、何がしたいのよ!?

あなたは!!


「「「グギャアアアア!!!!」」」


今がチャンスだと言わんばかりに、一斉に勇者へと襲い掛かるゴブリン!!

危ない!?

と、一瞬思ったけど・・・。


「・・・今だ!!

 はぁああああ!!!!」


「「「ギャア!??」」」


ゴブリンが自分の間合いまで近づいた瞬間、鞘から剣を抜き、相手を一刀両断したのだ!!

こ、これはまさか居合術!?

見事だわ。


「ふうっ。」


ゴブリンが全滅したのを確認した後、勇者は一息ついた。


「おお~・・・。

 テンイったら、魔法やスキル無しでも全然、やっていけそうじゃない。

 さすがね。」


「ご主人様、かっこい~!!」


「そ、そうかな。

 ・・・えへへ。」


鍛錬の癖が抜けてなかったり、妙な遠慮をしたりと、危なっかしい所も少なくなかったわ。

しかし彼一人でほとんどのゴブリンを倒しており、チート能力無しでもその実力は確かなようね。

はっきり言って私、剣術だけの彼と戦っても勝てる気がしなかったもの。


「聖女の言う通りです。

 あなたは魔法やスキル無しでも、十分な強さを持っています。

 もちろん油断は禁物ですが、もっと自信を持って良いと思いますわ。」


「みんな・・・ありがとう!!

 俺、今回のクエストで少し自信が付いたよ。」


これなら装備次第で、オーガクラスの魔物にだって、剣術だけで勝てるかもしれない。

・・・あんまり危険な相手との戦いは避けるべきだけど。


しかしまあ、この様子だとチート能力に頼らずとも、この世界を生き抜いていけそうね。



********



「あ~、一仕事終わった事だし、今日はもうゆっくりしたいわぁ。」


「ははは。」


ゴブリン討伐を終えた私達はクエスト完了の報告を行うため、冒険者ギルドへと向かっていた。

ちなみにこの手のクエストは、討伐の証として魔物の体内にある魔石をギルドへ納めるようなの。


場合によっては魔法や道具で状況を観察したり、ギルド職員や依頼人などが見届け人になるようだけど。

とは言え、ゴブリン討伐くらいでそこまでする事は無いようね。


勇者が意気揚々と冒険者ギルドへ入った途端・・・。





「「「お待ちしておりました!!」」」





!!??


「あの~・・・王女、エミリー。

 冒険者ギルドって、ゴブリン討伐くらいでここまで派手なお出迎え、するの?」


「いやいや、そんなのありえないって。

 ・・・でもならどうして?」


「?~。」


私も冒険者ギルドについて、それほど詳しいわけじゃない。

でも新人冒険者がゴブリン討伐を成功させたくらいでこんなリアクション、するはずないわ。


戸惑う私達に向かって、ゴブリン討伐の依頼を受けた際、お世話になった受付が話しかけてきた。


「き、聞きましたよ!?

 件のヒドラを打ち倒した勇者様って、あなた達の事ですよね?」


「ヒドラだけじゃない。

 ジャクショウ国を襲おうとしていた野良ドラゴンを倒したのも、君達なんだろ?」


!!!!

ど、どうしてそれを。


「えっ、え~・・・っと。」


「誤魔化さないでください!!

 聞きましたよ。

 聖女のように美しい女性が、嬉しそうにドラゴンやヒドラの素材を売り飛ばしていたと。」


「「「あっ。」」」


「?~。」


・・・なるほど。

それでバレたって訳ね。


「やっちゃったわ。」


「もう・・・聖女ったら!!

 まあ、やっちゃったものはしょうがないけど。」


はっきり言って、ドラゴンやヒドラを倒したなんて知られるのは、あまり好ましい事じゃない。

良からぬ事を考える輩が寄って来そうだからね。


けど事件のあった場所からそれなりに離れているし、きっとバレないでしょう。

と、思って油断したわ。

困ったわねぇ。


「あの・・・。

 勇者様や聖女様に是非、受けて頂きたい依頼があるのです!!」


「えっ?」


こ、これは勇者に超危険な依頼を頼もうとしている!?

断るべきかしら?

内心で迷っていると、受付が予想外の事を話し出した。





「どうかこの町の人々を苦しめる、山賊達の討伐依頼を引き受けて頂けないでしょうか?

 お願いします!!」


さ、山賊討伐ですって!?


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読んで頂き、ありがとうございました。

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