第2話 序章② 王女デルマ
・・・あれ?
私、少し気を失っていた??
確か、錯乱した勇者が魔力を暴走させて・・・。
「お、王の間が吹き飛んだ・・・じゃと!!??」
えっ!?
上を見上げると、青空が目に映る。
勇者の魔力が壁や天井ごと、王の間を吹き飛ばしたのね。
だったらなんで私達、生きているのかしら?
あんな爆発に巻き込まれて生きていられるほど、私達は頑丈じゃないはずよ。
「はぁ、はぁ・・・。
な、なんて強大な魔力なの。
聖女である私でさえ、皆を守るのがやっと。」
あっ、そうか。
聖女が防御魔法で皆を守ってくれたんだわ。
彼女のおかげで、王の間は消し飛んじゃったけど、死傷者はいなかったみたい。
けど聖女、怪我こそ無いけど息絶え絶えで座り込んでいて、とてもしんどそう。
きっとあの一撃を防ぐため、全てのパワーを使い切ってしまったのね。
ドラゴンの攻撃をも防ぐと言われる聖女でさえ、一撃耐えるのがやっとだなんて。
「・・・な、なんだよ。この力。
俺が・・・俺がやったのか?
俺が王の間を吹き飛ばしたのか!?」
一方、勇者は己の魔力の強さに激しく動揺してはいるが、全く消耗を感じさせない。
彼にとっては、あの一撃でさえ軽く叩く程度のものなのかしら?
「ば、化物じゃ・・・。
あの者は人の皮を被った化物じゃ!!」
「ひっ、こ、こっちを見たぞ。
こ、殺せ。は、早くあいつを殺すんだ!!」
「バカ、刺激するんじゃない。
あいつが戸惑っている内に早く逃げるんだよ!!」
王も兵士達も勇者の恐るべき力に動揺し、罵倒を浴びせ続ける。
「や、やめろ。そんな目で見るな!!
俺は化物なんかじゃない・・・。」
そんな王達の罵倒に傷つき、再び勇者の心が乱れ始めた。
もし勇者がもう一度魔力を暴走させたら・・・。
ちらりと聖女の方を見るも、彼女は既に疲れ切っており、意識を保つのがやっとのようね。
次、攻撃をされたらきっと防ぐ事は出来ないでしょう。
・・・。
「やめろ、やめろぉおおおお!!」
「どうか落ち着いて下さい、勇者様。
お願いします!!」
勇者の暴走を防ぐため、私は平静を装いながら、声を掛ける。
怖い・・・。
私もあの勇者の力がすごく怖い。
けど、このままだと私も他の人達も皆殺しにされてしまう。
まだ私は死にたくない!!
「あ・・・。」
「勇者様、私はあなたの敵ではありません。
どうか気をお静め下さい。」
「・・・き、君は一体。」
良かった。
まだかなり動揺しているようだけど、少しだけ落ち着きを取り戻したみたい。
今がチャンスよ!!
「王よ、どうか勇者様を元の世界へ帰してあげて下さい。
お願いします。今ならまだ間に合います。」
私は勇者を元の世界へ帰すよう、懇願した。
「む、無理じゃ・・・。」
「何故です!?
私達は既に勇者様への信用を失ってしまったのです。
頼み事など、聞いてもらえるとは思えません!!」
勇者にとって、王への信頼度などもう0に近い状態。
これ以上、刺激しても百害あって一利なしよ。
だったら、今すぐにでも元の世界に帰した方が、お互いにとってベストだと思うわ。
だけど王は信じられない事を言い出した。
「わしは転移勇者を元の世界へ帰す道具なぞ、持っておらぬ。
この化物を帰すことは出来ぬのじゃ・・・。」
なっ、なんですって?
「そ、そんな。王よ。
元の世界に帰す手段も用意せぬまま、転移勇者を召喚したのですか?」
「黙れ、兵士の分際で!!
わしは王であるぞ。王の命令に従う事なぞ、当たり前の事じゃ。
従わぬ者が間違っているのじゃ!!」
・・・ふざけないでよ。
「嘘だ・・・もう元の世界へ帰れない、のか?
父さん、母さん、皆、もう会えないのか??
う、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁああああ!!!!」
「・・・ひっ、ひぃいい!?
また化物が魔力の暴走を・・・。
だ、誰でも良い。あいつを止めるのじゃあ!!」
いい加減にしなさい!!
「父上!!
あなたはいつからにそんな外道に成り下がったのですか!?」
「デ・・・デルマ王女?」
「だから私は転移勇者の召喚に反対したのです。
・・・他の世界から罪も無い青年を誘拐し、奴隷のように、使い捨ての道具のように扱おうとするなんて!!
そんなの人間として最低の行為です。恥ずかしくないのですか!?」
私は初めから転移勇者の召喚に反対だったの。
その理由は2つあるわ。
1つ目の理由は、転移された勇者が必ずしも幸福をもたらすとは限らない事。
むしろ暴走し、災厄をもたらす可能性の方がずっとずっと高いの。
転移勇者自身が力に溺れ、傲慢になっていくからでしょうね・・・。
召喚者達の醜さに嫌気がさして、この世界に否定的になるのも大きいと思うわ。
そして2つ目の理由は、さっき叫んだ通りよ。
転移勇者の召喚だなんて言っても所詮、別世界から人を誘拐し、無理やり奴隷のように扱おうとしているだけだもの。
・・・別に転移勇者を贔屓するつもりなんてないわ。
けどそんな外道行為を正当化するなんて私、嫌よ・・・。
「う、うう・・・。」
!?
「ゆ、勇者様?」
え、ええ?
なんで勇者様、泣きながら私に縋り付いてくるの?
「王女、デルマ王女。
・・・えっぐ、ひっぐ。」
「ええっと、どうなってるの・・・?」
何がどうなっているのかしら?
全然、理解が追い付かないんだけど。
「デルマ王女がばけm・・・いや、勇者様の暴走を止めた?」
「王女の御心が転移勇者に届いたんだ!!」
そう言えばさっき彼、魔力を暴走させる寸前だったような・・・。
父上の外道っぷりに腹を立てていたせいで、すっかり忘れてたけど。
泣き続ける勇者に対し、私は恐怖も怒りも忘れ、ただただ戸惑うしかなかった。
周りの皆もその異様な空気に飲まれ、言葉を発せずにいる。
・・・と、思ってたら予想外の人物が空気を読まず、騒ぎ始めたの。
「ゆ、勇者様、勇者様~。
なんて凄いお力なのでしょう!!」
「きゃっ?」
突然、聖女が私を突き飛ばし、勇者を抱きしめ始めた。
「えっ、ちょ・・・ちょお!?
待って、待って。
君は確か聖zy、ぶっ!!??」
聖女のような絶世の美女に抱き着かれ、顔を赤くしながら慌てふためく勇者。
・・・あ、顔に胸が当たっている。何か嬉しそう。
さっきは混乱の余り、聖女の美貌にも目が入らなかったのにねぇ。
「申し遅れました。
私は聖女、エミリーと申します。
勇者様。私はあなたの力に感服致しました。
どうか是非、あなたの伴侶とさせて下さい。」
・・・・・・ええええええええ!!!!