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第37話 ゴブリン討伐編③ チート能力縛り

ゴブリンの討伐依頼を引き受けた転移勇者とそのハーレム達。

私達は今、依頼書に記されている目的地まで来ていた。



********



「今度は大丈夫だよね・・・。

 ヒドラみたいな怪物と出くわさないよね?」


「・・・そんな事が頻繁に起きても困りますって。」


前回のクエストのトラウマからか、勇者は斜め上の心配事を呟き続ける。

その怪物を一撃で倒したの、忘れちゃったのかしら?


それ以前に今回の冒険者ギルドの受付はまともそうだったしね。

さすがにゴブリン討伐と偽ってヒドラの元へ向かわせる~、な~んて鬼畜行為、しないはずよ。



「!??

 あわ、あわわわ・・・。」



クロったら、どうしたんでしょ?

急に怖がり出して。


勇者のビビりが移ったのかしら?


「ちょっと、クロ。

 魔物と出会う前から怖がって、どうするのよ?」


これには聖女も呆れ顔ね。

・・・しかし。


「怖いよ、怖いよ~。」


クロは増々怖がるばかり。

?・・・。





「「「グギャギャーーーー!!!!」」」





あっ!?

茂みから野生のゴブリンが現れた!!


その数は依頼書に記されていた通り、ちょうど十体。


「うわっ!?

 あれがゴブリンか!!

 この如何にもモンスターって感じ、グロいなぁ。」


ヒドラの時ほどではないにせよ、勇者も初めてのゴブリンに少し引いている。


ちなみにゴブリンは小鬼のモンスターで、尖った耳と緑色の胴体が特徴よ。

体は小さく、腕力も知能も人間で例えるなら、普通のお子様と大差ないわ。

1VS1なら、クロだって勝てるかもしれない。


しかし群れると侮れない連中で、油断した冒険者が多数のゴブリンに蹂躙される・・・。

な~んて話も珍しくはないの。


「怖いよ、怖いよ~。」


それにしてもクロ、妙なタイミングで怖がりだしたわね。

・・・もしかして。



「「「グギャギャーーーー!!!!」」」



って、今はのんきに考察なんかしてる場合じゃないわ。

弱そうに見えたからか、聖女やクロに向かって、七体ものゴブリンが一斉に襲い掛かった!!


が。



「バリア!!」


「「「グギャ!?」」」



聖女は防御魔法でゴブリンの襲撃を容易く防ぐ。


『バリア』はランク1の防御魔法で、ヒドラ戦で使用した『フォース・バリア』と比べ、防御力は圧倒的に劣る。

けれどその分、魔力の消耗は少なくて済むわ。

それにランク1の防御魔法とは言え、ゴブリンの攻撃くらいなら余裕で耐えられるしね。


「グギッ、グギッ!!」


「ガ~・・・!!」


けれどゴブリンもムキになっているのでしょう。

バリアを壊そうと、諦めずに攻撃を続けているわ。


「うわぁああああんんんん。

 怖いよ、怖いよ~・・・。

 ・・・助けて、ご主人様~!!」


弱小ながらも、モンスターの凶悪な姿にクロはすっかり取り乱している。

いくらバリアのおかげで安全とは言え、戦い慣れていない人間からすれば、そりゃ恐ろしいでしょうね。

けれど・・・。


「クロ。

 クエストに行く前の元気はどこへ行ったの?

 この程度のモンスターに怖がってちゃ、テンイと一緒に冒険なんて出来ないわよ。」


そんなクロに聖女が発破を掛ける。


「!!

 ・・・わかった。

 あたし、ゴブリンなんかに怖がらない!!」


「その意気よ、クロ。

 安心なさい。

 私の防御魔法はゴブリン如きに破れたりしないから。」


聖女の言葉を受け、クロは怯えながらもゴブリンに屈しないよう、抗う。

この様子なら彼女達は大丈夫そうね。


大半のゴブリンが聖女達へと向かっている隙に、私と勇者でゴブリンの数を減らすとしましょう。


「グギャギャーーーー!!!!」


一体のゴブリンが私に襲い掛かって来たので、魔法を使って迎え撃つ!!


「サンダー!!」


「グギャーーーー!??」


私はランク1の雷魔法を駆使し、ゴブリンを一撃で絶命させた。


「おおおっ!!!!

 雷の魔法かぁ・・・カッコいいなぁ。

 俺も使いたいなぁ。」


「・・・ダメですよ、勇者様。

 今回はスキルや魔法に頼らず、あなたがどれほど戦えるか、確かめるのが目的ですから。」


「わ、わかってるよ。」


そもそも勇者が雷魔法なんて使ったら、あまりの威力に天変地異の前触れか!?

って、騒がれそうだわ。



「うん、そうだ・・・。

 これでも俺は元の世界からずっと鍛え続けてきたんだ。

 例え、チート能力を使わなかったとしても、ゴブリンなんかに負けるものか!!」



覚悟を決めた勇者が一体のゴブリンに向かって、剣を構える。


「グギャ!?

 グギャギャギャ・・・。」


彼の構えには隙が全く見当たらず、その姿は正に剣の達人のよう。

剣を向けられたゴブリンは迂闊に飛び込む事も出来ない。

・・・『剣を向けられたゴブリン』は。


「勇者、危ない!!」


「グギャギャーーー!!!!」


「ええっ!?」


勇者が一体のゴブリンに集中している隙を突き、もう一体のゴブリンが彼に襲い掛かったのだ!!

これも鍛錬と実戦の違いね。


基本的に鍛錬による戦闘は1VS1になりがちで、複数VS複数で戦う事は少ないもの・・・。

特に勇者のいた世界では、鍛錬による戦闘の大半が1VS1だと伝えられている。


けれど。


「う、うわぁああああああああ!!」


「グギャ!??」


勇者がゴブリンのこん棒で殴られる前に、彼の剣が相手を斬り倒していた!!

完璧に不意を突かれたのに、敵より早く攻撃を命中させるなんて、大した反射神経だわ。


「ぜぇー、ぜぇー・・・。」


「グギ・・・グギャギャーーー!!!!」


だけど、彼の気が動転している今こそチャンスだと思ったのでしょう。

剣を向けられていたゴブリンが勇者に突撃する!!


「へっ!?

 う、うぉおおおお!??」


ギィン!!


「ギ・・・?」


ところが勇者の剣はゴブリンのこん棒を易々と斬り飛ばした!!

・・・彼の装備している剣は安物だけど、それでもゴブリンの持つこん棒よりは質が良い。

加えてお互いの剣術レベルにも差がありすぎるし、こうなるのは必然ね。


「はぁああああ!!!!」


「グギャア!??」


武器を失って呆然としているゴブリンを勇者の剣が一刀両断した!!


「こ、怖かった・・・。」


「勇者様!!

 今回は敵の方が数が多いのです。

 一体相手に集中しすぎると、危険ですわ。」


「そうみたいだね。

 うん。

 相手がゴブリンでも侮れないや・・・。」


とは言え、ヒドラの件を除くと、初の実戦なのにこれほど動けるのは大したものだわ。

やっぱりこの勇者、性格こそ頼りないけど、チート能力抜きで見ても、只者ではない。



これで倒したゴブリンは計三体。

あとは聖女達に絡んでいるゴブリンをなんとかしないと。


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読んで頂き、ありがとうございました。

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