第36話 ゴブリン討伐編② お子様の育て方
とある日、転移勇者一行はゴブリンの討伐依頼を引き受けた。
なので私は受付の人に子供を預けれそうな場所がないか相談する。
「ねえ、王女。
なんでそんな事を聞くの?」
勇者が不思議そうに聞いてくる。
なんでって、そんなの決まってるじゃない。
「もちろん、クロをこの町に置いていくためですわ。」
「・・・えっ?
やだ~~~~!!
王女様、あたしを置いてかないで~~・・・。」
って、ちょ!!
クロ。
どうしてそんなに泣き喚くの!?
「・・・あの~。
いくらクエストに子供が邪魔だからって、捨てていくのはさすがに・・・。」
「こらぁ!!
誰もクロを捨てていくなんて、言ってないでしょ!?
ただ単にお留守番してもらうだけだから。
クエストが終わったら、ちゃんと迎えに行くから!!」
別に私は自分の事を良い子だなんて思っていない。
けれど邪魔だからって、お子様を簡単に切り捨てるような外道でもないわ。
「あっ、そうだったのですか。
安心しました。
・・・極稀ですがそういう方もいらっしゃいますので。」
「うわぁ。
異世界って、怖い・・・。」
まったくもう。
「クロ、安心なさい。
クエストが終わったら、ちゃんと迎えに来るから。
だからそれまでお留守番してて?」
「やだ、やだ~!!
クロも一緒に行きたい。
一人ぼっちはもうやだ~~・・・。」
「あのね、クロ。これは遊びじゃないの。
魔物退治って、とっても危険なお仕事なのよ?
例え相手がゴブリンだろうと、失敗すると大人だって殺されちゃうんだから。」
そんな危険な場所に、戦う力の無いクロを連れては行けない。
「・・・う~。
でも、でも・・・グスン。」
困ったわねぇ。
「ねえ、王女。
確かにクロを魔物退治に連れて行くのは危険だよ?
けど一人、お留守番させるのも心配だよ。」
「あっ!?
・・・それもそうですね。
この様子だと、置いていっても勝手に付いて来るかもしれませんし。」
そんな真似をされたら、余計に危ないわ。
仮に大人しく待っていたとしても、知らない場所に彼女を一人、置いてくのもリスクが大きい。
「仕方ありませんね。
私もクロと一緒にお留守番しますので、ゴブリン討伐は勇者様と聖女二人で行ってきてください。」
ゴブリン討伐くらいなら、勇者と聖女の二人で十分でしょう。
それ以前に私だって、あの二人から見ればクロ同様、足手纏いに過ぎないのだから。
「え~・・・。
あんたの小賢しい頭、トラブルが起きた時に役立つからねぇ。
いてくれた方がありがたいんだけど。」
「ちょっと聖女。
トラブルが起きる前提で話を進めないでよ。」
評価してくれるのは少し嬉しいけど、当たり前のようにトラブルが起きても困るわ。
「だって、テンイなのよ?」
「うっ!?
・・・確かに。」
「二人とも!!
俺をトラブルメーカーみたいに言わないで。」
勇者と旅して大して時間が経ってないにも関わらず、既にドラゴンともヒドラとも遭遇してるからね。
本人に非があるかはともかく、巻き込まれ体質なのは事実だわ。
例の本にも、異世界人はトラブルに愛されてると書かれているし。
・・・そういう人間だからこそ、異世界召喚に巻き込まれたんだろうけど。
「よく考えるとさ。
テンイと一緒にいるって事は、波乱万丈な人生に挑むのと同じよね。
・・・よしっ!!
クロもゴブリン討伐に連れて行きましょう。」
ゑ?
「ほんと!?
やったぁ~!!」
「ええええええええ!??
・・・それで良いの?」
こらこらこらこら!!
聖女ったら、何てバカな事を。
「ダメだってば。
いくらなんでも危険すぎるもの。
大体、クロを魔物と戦わせるなんて無謀よ!!」
「それくらい、わかってるって。
別にクロに戦ってもらおう、な~んて思ってないから。」
ん?
「じゃあなんで、クロを連れて行くの?」
「荒事に慣れてもらうためよ。
魔物に襲われようが、トラブルに出くわそうが、落ち着いて対処できるようにね。」
慣れさせる?
「つまり、クロの心を鍛えたいって事かい?」
「簡単に言えばそうね。
どうせテンイと一緒にいる時点で、波乱万丈な人生が待っているのよ?
だったら危険から遠ざけようとするより、危険な目に合っても冷静でいられるようになるべきだと思うわ。」
「俺のせいでトラブルに巻き込まれる・・・。
みたいな言い方は納得いかないけど。」
う、う~ん・・・。
聖女の意見にも一理あるわね。
今のペースだと、私達の旅はこれからもトラブルの連続よ。
仮にゴブリン討伐よりももっともっと危険な目に合った時、クロにパニくられても困るわ。
・・・だったら余裕がある内にこういう事に慣れさせた方が良いのかもしれない。
「・・・そうね。
わかったわ。
クロもゴブリン討伐に連れて行きましょう。」
「わ~い!!
やったぁ~。」
「さっきも話したけどクロ、別にあなたに戦えとは言わないわ。
私か王女の後ろに隠れてなさい。
・・・そして絶対、自分勝手な事して周りに迷惑掛けないこと。
この約束を守れなかったら、次からはお留守番だからね。」
「は~い。」
元気良く返事してるけど、大丈夫かしら?
不安だわ・・・。
「大丈夫。
クロは俺が必ず守るからさ。
だからクロ。
王女やエミリーの言う事、ちゃんと聞くんだよ。」
「は~い。」
けど不安だからって、過保護になりすぎるのもダメなのね。
転移勇者のハーレム要員である以上、クロは穏やかな人生を歩めない。
であれば、少しでも運命に立ち向かえるよう、心を鍛えた方が良いでしょう。
「では、行きましょうか。
ゴブリン討伐へ。」
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「なあなあ。
さっきの連中が話してた、ゴブリン討伐と偽って、ヒドラの元へ向かわせるとかさぁ。
んなバカな話、ありえんの?」
「つい最近、ちょっと離れた町でそんな事件があったそうよ。
大勢の人が騙されて、ヒドラの餌にされたんだって。」
「なにそれ。
超こえぇ・・・。」
「だけど、異世界からやってきた超美形な勇者様がね。
美しい王女様や聖女様と共にヒドラを討伐したそうよ。
私も会ってみたかったなぁ。」
「・・・そ~んな安っぽい三文芝居みたいな話、嘘に決まってんだろ。
けど超美形な勇者と、美しい王女や聖女・・・。
・・・まさか!?
あっ、でもさっきの連中。
黒猫族のガキ、連れてたしなぁ。」
「でも、勇者様。
ヒドラの餌にされていた黒猫族の女の子を救い出したそうよ。」
「「・・・。」」
「って、そんなはずね~よな。
大体、ヒドラをぶっ殺せるような連中がさ。
ゴブリン討伐なんて、今更引き受けるか?」
「だ、だよね~。
考えすぎよね~・・・。」
「それにさっきの連中さぁ。
確かに美形揃いだけど、超頼りなさそうだったし~?
あんな奴らがヒドラを倒すなんてありえね~。」
「デスヨネ~。
あ~あ、もしあの人達がヒドラを倒した勇者様だったらな~。
山賊だって軽く蹴散らせるのに。」
「それそれ!!
誰か早くあの山賊ども、なんとかしてくれね~かな~・・・。」




