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第35話 ゴブリン討伐編① 依頼の受注

私の名は元ジャクショウ国の王女デルマ。

王命である魔王討伐を放置し、転移勇者テンイを元の世界へ戻す方法を探している。


けどおそらく、勇者を元の世界へ戻す方法は簡単には見つからないでしょう。

だからまずは勇者がこの世界で充実した日々を過ごせるよう、手を尽くす事にしたの。


彼は魔法やスキルさえ使えば、ドラゴンやヒドラをも軽々と倒してしまう。

その一方、パワーが強すぎて小回りが利かず、力の使い方を誤ると、周りに甚大な被害を及ぼす可能性があるわ。


幸い、勇者には素晴らしい剣の才能がある。

なので、魔法、スキルを頼らずとも戦えるのか確かめるため、ゴブリン討伐のクエストを引き受けようって話になったの。



********



・・・聖女が『ドラゴンやヒドラの素材を売りたい』って、言い始めたから、少し後回しになったけど。

ドラゴンやヒドラの素材は高額すぎて、一気に売り飛ばす事は出来ないのが悩ましいわね。


「はい。テンイ、王女。

 これが売上の分け前ね。」


聖女が売上の分け前を私達に渡す。

正直、これだけでも数年は遊んで暮らせるだろうけど、今は少しでも良いから勇者の心を鍛えたいの。

今の状態だと、チンピラに絡まれただけで大騒動に発展しかねないので。


「ありがとう。

 エミリー。

 ・・・そう言えば、クロには分け前を渡さないのかい?」


あのドラゴンやヒドラの素材は、クロが仲間に入る前に手に入れたものよ。

だからクロに分け前を渡す義務はないかもしれないけど・・・。


「クロ?

 ああ、しばらくは彼女に分け前なんて不要でしょ。

 お小遣いとして、月に銀貨3枚くらいあげれば十分じゃない?」


「?~。」


って、ちょっと!?


「・・・いくら何でも酷すぎない?」


「そうよ!!

 聖女。

 あなた、そんなに自分の分け前を減らしたくないの?」


「ん~・・・。

 それもかなりあるけど。」


かなりあるの!?


「それ以前の問題だってば。

 王女、あなたには前に話したと思うけど、お子様のクロに大金を渡すのは危険よ。

 きっと悪人達に狙われちゃうわ。」


「!??

 そんなの、やだぁ~・・・。」


うっ!?

確かに聖女の言う通り、お子様に大金を持たせるなんて、危険極まりない行為ね。


しかもクロはアイテム・ボックスやゴールド・ボックスを使えない。

何百枚もの金貨を持ち運ぶのさえ、一苦労しそうだわ。


「それはそうだけどさぁ。

 だからって、銀貨3枚は少なすぎない?」


「そうよ!!

 そんな少額じゃあ、まともな生活だって送れないわ。」


銀貨3枚程度では、数日生活するのだって難しい。


「あのねぇ、あなた達・・・。

 言ったでしょ、お小遣いとして渡すって。

 クロの生活費はもちろん、私達で払うのよ。」


えっ?


「普通、保護者は子供に生活費を出させたりしないわ。

 衣食住に掛かるお金は全部、保護者が払うものよ。

 その代わり、子供が自由に使えるお金はお小遣い程度だけどね。」


「なるほど。

 日本でも小学生に何十万、何百万円も持たせる親なんて、いないからね。

 だけどご飯代とかは親が全部払ってくれるから、問題なく生活できる、と。」


・・・よく考えればその通りだわ。

聖女はたまに思慮深くなる。


「あとは誰がクロの生活費を払うかだけど・・・。

 それくらいなら私が払ってあげましょうか?」


「・・・いや、俺が払うよ。

 クロを連れて行くって決めたのは俺だから。」


「あら、そう。

 じゃあよろしくね、テンイ。」


そんな事を話し合っていると、クロが私の服をクイクイと引っ張っていた。

・・・話についていけなかったようね。


「え~っと、あのね。クロ。

 これから毎月、あなたにお小遣いとして銀貨3枚、あげようって話してたの。

 あげたお金は好きに使って良いわよ。」


「ほんと!?

 やったぁ!!」


「でもね、クロ。

 貰ったお金を無駄遣いすると、後で欲しいものが出来ても買えなくなるわ。

 だからよく考えて使うのよ。」


「は~い。」


子供にお小遣いを渡して使わせるってのは、お金の使い方を学ぶ良い機会なのかもね。

私はお小遣いを貰って喜ぶクロを眺めながら、そんな風に考えていた。



********



そんなやり取りをしている間にこの町の冒険者ギルドへと到着。

前回のようなおかしなギルドでなければ良いけど・・・と、心配しながら中へと入る。


入った瞬間、勇者や聖女に目を奪われてる人も少なくないようだけど、それはいつもの事ね。

あの2人、中身はともかく外見はとんでもない美形だもの。


・・・私を見つめる人も結構いるようだけど、勇者や聖女が美形すぎて、場違いだと思われてるのかしら?

別に構わないけど。


それ以外だと・・・。


「誰か山賊討伐を引き受ける冒険者はいないのか!?」


「誠に申し訳ございません。

 件の山賊達は異常に強く、今となっては誰も引き受けなくなってしまい・・・。」


やけに山賊がどうちゃら、って話が聞こえてくる。

山賊討伐は意外と難易度が高いけど、誰もが敵わないような力を持っている事はほぼ無いわ。

きっと勇者なら、そのチート能力で簡単に蹴散らせるでしょうね。


もっとも私は絶対、勇者に山賊討伐なんてさせないつもりだけど。

だって・・・。


「・・・ゴブリン討伐の依頼は、と。

 あ、あったあった。


 ふむふむ、10体討伐で報酬は金貨5枚。

 場所もちゃんと書いてあるし、これは嘘の依頼じゃなさそうだわ。」


「それなら安心だね。

 偽依頼で酷い目に合うのは、もう懲り懲りだし・・・。」


あらら。


ちょっと考え込んでいる間に勇者達、ゴブリン討伐の依頼を見つけたようね。

まっ、どっちみち山賊討伐なんて私達には縁の無い話だし、これ以上考えるのはやめましょっか。


「あの~、すみませ~ん!!

 このゴブリン討伐の依頼、受けたいんですけど。」


「はい、わかりました。

 ではこの書類にサインを・・・。」


ギルドの受付の対応も普通ね。

書類も見た限り、特別おかしな内容ではなかったわ。


「あの~・・・一応、確認したいんですけど、この依頼書に書かれている場所。

 ゴブリンじゃなくて、実はヒドラの生息地!!

 ・・・な~んて事はないですよね?」


「それって、少し離れた町の偽ギルドがやらかした事件ですか?

 いくらなんでも、そのような鬼畜な真似をするはずありませんよ・・・。

 詐欺どころか、殺人と同じですから。」


「ははは。

 ・・・ですよね~。」


それでも心配だったのか、勇者が受付の人に問うも、微妙に呆れた表情で否定された。


そうよね。

あの偽ギルドの受付達が異常なだけよね。


「本音を言いますと、今はゴブリンよりも他に退治して欲しい奴らがいます。

 だけど、依頼内容を騙すような真似をしても、いたずらに犠牲を増やし、我々の評判も落ちるだけ・・・。

 まともな冒険者ギルドなら、わざと関係者を騙すような真似はしませんよ。」


「まっ、それが一般的な冒険者ギルドよね。」


受付の話す通り、純粋にギルドを発展させたいだけなら、露骨に騙すような真似は避けた方が良いわ。

所詮、卑劣なやり方で荒稼ぎしても、それで得をするのは少数の醜い人間だけだもの。


クエスト自体は大丈夫だとして、あとは・・・と。


「私からも聞きたい事があるの。

 この冒険者ギルドって、子供は預かれないの?」


「残念ですが、そのようなサービスは行っておりません。

 宿屋や託児所ならお伝えできますが。」


それは残念。

しょうがないから、宿屋か託児所の場所を教えてもらうとしましょうか。


「ねえ、王女。

 どうしてそんな事を聞くの?」


勇者が不思議そうに聞いてくる。

なんでって、そんなの決まってるじゃない。



「もちろん、クロをこの町に置いていくためですわ。」


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