表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/221

第33話 お勉強編⑥ 悩める少年勇者

「クロ。

 4+3はいくつ?」


「え~っと、7!!」


「はい、正解よ。

 じゃあ、5+8は?」


「え~っと、あれれ?

 指が足りないよ、王女様~・・・。」





勇者がチンピラ相手に騒動を起こした後。

幸いにも夜が更ける前に次の町へと辿り着き、宿へ泊る事が出来た。


・・・勇者も思う存分泣き喚いたおかげで、どうにか落ち着きを取り戻している。

まだ少し落ち込んでいるみたいだけど、きっと明日には立ち直るでしょう。

彼、すぐに落ち込む半面、立ち直るのも結構早いようだしね。


今は宿の一室でクロに足し算を教えているわ。


「ダメよ、クロ。

 この程度の計算、指を使わずに出来なくっちゃ。」


「う~・・・。」


一桁の足し算くらい、私の国ではもっと小さな頃から学んでいたわ。

ただこの世界、人によっては簡単な読み書きや計算を学ぶ機会すら無い事も多い。

ましてやクロは元奴隷だからねぇ。


勉強なんて、いきなり難しい事から学ぼうとしても上手くいかない。

最初は簡単なものから、少しずつ身に付けないとね。


とは言え彼女、ハーレムのお勉強よりもこういう類のお勉強の方が理解が早いみたい。


「足し算のお勉強は問題なくこなせるのにねぇ。

 やっぱりこの子、ハーレムのお勉強が苦手なのかしら?」


「こんな子供にハーレムのお勉強をさせるの自体、おかしいって事に気付きなさい。」


私の呟きに聖女が呆れた様子で茶々を入れる。

そ、そうなのかしら・・・?


けれど、転移勇者のハーレム達の中にはね。

クロのような年齢の女の子が、ロクに学ばずとも立派にハーレム要員を務めていた!!

・・・な~んて逸話が度々残されているわ。


冷静に考えると、にわかに信じがたい話だけど。

おそらく相当、ハーレム要員としての才能に恵まれていたのでしょう。


クロは見た目こそ可愛いけど、きっとハーレム要員としての才能には恵まれていない。

だからこそしっかりお勉強を積んで、一人前のハーレム要員になってもらわないとね。

勇者の心を支えるためにも。


ただまあ、他に学ぶべき事があるのも事実だから、今日は違うお勉強がメインだけど。



トントン。



あら?


「入っていいかな?」


勇者の声だわ。


「構わないわよ、テンイ。」


ガチャ。


「こんな夜遅くにごめんね。

 王女にどうしても頼みたい事があってさ。」


少し申し訳なさそうな表情で、私達の部屋へ入る勇者。


「頼みたい事?

 ・・・まさか、夜のお勤めとか!?

 くっ、やっぱりテンイの正妻を目指す上で王女は最大のライバルなのね!!」


「違うよ!?

 おかしな勘違いをしないで!!

 エミリー。」


勇者は顔を真っ赤にしながら聖女の戯言を否定する。

なんで私が勇者の正妻を目指すライバルになるのかしら?


私が勇者に恨まれている事くらい、聖女は知ってるはずだけどなぁ。

ずれてるわね。


「ね~、王女様。

 夜のお勤めってな~に?

 ご主人様と王女様、今からお仕事に行くの~??」


「あ~、え~っとね・・・。

 今は知らなくて良いのよ、クロ。

 もっと大きくなったら、教えてあげるから。」


「教えなくて良いから!!

 ・・・まったくもう。

 王女もエミリーもこんなお子様に妙な事ばっか、吹き込まないでよ。」


なんで勇者はハーレムのお勉強を妙な事扱いするのでしょう?

例の本にも『転移勇者(♂)は自分の女仲間が魅力的なハーレム要員である事に至福の喜びを感じる』って、書いてあるのにね。


「それはともかく、私に頼みたい事とは何でしょうか?」


改めて問い掛けると、勇者はゴホンと咳をし、真剣な表情で私を見ながら口を開く。





「王女。

 俺にもっと凄い魔法やスキルをたくさん教えてくれないか?

 俺・・・強くなりたいんだ!!」





な、なんですってぇ!!


「お、お止めください。勇者様!!

 世界を滅ぼそうだなんて、お考えになるのは・・・。

 ・・・どうか、どうか我々にご慈悲を。」


「何を勘違いしてるの、王女!?

 誰もこの世界を滅ぼすなんて、言ってないでしょ!!」


「・・・へっ?

 そうなのですか??

 てっきり今日の一件で、自暴自棄になってしまったとばかり・・・。」


「あれくらいの事でヤケになるほど弱くないって。俺。」


その割にだいぶ泣き喚いていたじゃない、あなた。

でも確かに世界を滅ぼしてやるとか、そんな事を考えている風には見えないわ。


「じゃあどうして、強くなりたいのですか?

 勇者様は既にこの世界でも屈指の戦闘力を誇るのですよ??」


一般的に異世界人達の平均的な魔法・スキルの習熟度はランク3~4くらいだと伝えられているわ。

努力を積み重ねたり、戦闘に特化した才能があれば、ランク5の魔法・スキルを修得するケースもあるんだけど。


けれど彼はこの世界に来てそれほど経ってないにも関わらず、既にランク5の魔法・スキル以上のパワーを引き出せる。

ランク5の魔法・スキルと言えば、神々の戦いで使用される程の威力を誇り、今の段階でも相当ヤバいと思うわ。


ただ私・・・不安なの。

勇者の力は本当に今で頭打ちなのかと。

もっともっととんでもない力を秘めているのではないかと。


「いや、確かにチート能力のせいで俺のパワーはとんでもない状態になっている。

 けどさ。

 いくら力があっても、心は・・・俺の心は弱いままなんだ。」


「「あ~、確かに。」」


「二人とも、酷い!!」


「?~。」


まあ、今までの経緯を見てたらねぇ。


いきなり異世界へ連れて来られたり、ヒドラの餌にされそうになって、パニックになるのはさすがに仕方ないわ。

でも私ですら勝てるようなチンピラ相手にさえ、心をかき乱されているのを見ると、強い心の持ち主だとは・・・ね。


ただ勇者の場合、手の施しようがない臆病者かと問われたら、それは・・・。


「だから、もっともっと凄い魔法やスキルを覚えたら!!

 きっと自分に自信が持てると思うんだ・・・。

 強くなれると思うんだ!!」


「・・・今の実力でも、全然自信を持って良いと思いますが。

 単にチート能力が凄いだけでなく、努力で身に付けたであろう剣術や戦闘センスも相当なものですから。」


むしろチート能力も天性の素質も備えておきながら、なんで自信が持てないのかがよくわからない。


「・・・!!

 あ、ありがとう。

 でもやっぱり、俺は・・・。」


彼は何故、そんなに自分を否定するのでしょう?


「まっ、テンイにも色々あるんでしょ。

 実力があるからって、必ずしも自分に自信が持てるとは限らないわ。」


そう言うものかしらね?

大した実力も才能も無い私にはわからない世界だわ。


だけど、一つだけ確認したい事がある。





「本当に凄い魔法やスキルを修得すれば、自信を持てるのでしょうか?」


「・・・えっ?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んで頂き、ありがとうございました。

少しでも「続きが気になる!」「面白い!」と思って頂けたら、評価★★★★★と、ブックマークを頂ければと思います。

どうぞよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ