第32話 お勉強編⑤ チンピラとの決着!?
「行くぞ・・・。
巨大化!!」
巨大化!?
「おいおい・・・お前。
そんな初心者でも使えるランク1のスキルで俺達に勝とうってかぁ?」
「はっ!!
ちょっと剣が大きく出来る程度で、強くなったなんて思・・・。
思・・・・・・。」
一般的にスキル『巨大化』は、手に持っている武器を2~3倍の大きさにする程度の効果しか無いわ。
けど勇者が使うと・・・。
「あわわ・・・。
あわわわわ・・・・・・!?
なんじゃ、こりゃああああああああ!!!!」
・・・この町すら、簡単に一刀両断出来そうなくらいの大きさになるの。
現にあのヒドラでさえ、このスキルを使って一撃で倒したからねぇ。
「どうだ!?
降参し、反省するなら、許・・・。」
「ひゃああああああああ!!!!
・・・終わったんだ。
俺の人生はここで終わったんだぁ!!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!
もう二度とあなた様に逆らいませんから、命だけはお助けーーーー。」
「お願い、許してぇ~~~・・・。
どうか見逃してぇ!!」
チンピラ達どころか、助けようとしたはずの女の子さえ命乞いを始める始末。
まあ、町すら斬れるサイズの剣持った男がいたら普通、取り乱すわよね。
「・・・ええっと。
いくら何でも怯えすぎじゃないかな・・・。
そもそもなんで君まで怯えてるの?」
「きゃああああああああ!!!!」
「( ゜д゜)」
それどころか勇者が声を掛けただけで、女の子は先ほどよりも大きな悲鳴をあげる!!
あまりにも斜め上な展開に勇者はポカーンとした面構えになったわ。
「・・・ご主人様。
皆をびっくりさせてる~・・・。」
って、呑気に眺めている場合じゃない!!
「い、いけません。勇者様・・・。
彼らはちょっと女の子を困らせていただけなのですよ!?
命まで奪うのはさすがにやりすぎです!!」
「違うよ!?
いくら何でもチンピラが多少周りに迷惑を掛けた程度で殺してやろう、なんて思わないって!!
・・・ただちょっと脅して反省させたかっただけだから。
本気であいつらを傷つける気なんて、全然無かったから!!」
「あ、な~んだ・・・。
良かった。
その程度なら問題ありませんね♪」
ほっ・・・。
例の本によると『転移勇者はチンピラ相手だと、過剰に危害を加える事が多い』らしいから心配だったの。
それでもハーレム要員なら転移勇者を全肯定し、称賛すべきだって書かれてたんだけどね。
・・・さすがの私でもそんな理屈には納得出来ないわ。
行きすぎた暴力を肯定する気にはなれないもの。
でも単に怖がらせる程度なら、誰の体も傷つかないし、平気平気・・・。
「良くねえよ!?」
「・・・いくら脅すだけだったとしてもなぁ。
そんな町も斬れそうな剣を向けられる身になってみろ!!
心が傷つくんだよ・・・。」
・・・。
「正論すぎて、ぐうの音も出ないわね。」
聖女の冷静な指摘が痛い。
「・・・ええっと。」
周りのリアクションに困り果てた勇者が、チンピラ達の方に目を向けた途端!!
「「「「ぎゃああああああああ。お、お助けーーーーーーー!!!!」」」」
チンピラ達は一人残らず一目散に逃げ出した!!
絡まれていたはずの女の子も涙目になりながらチンピラ達と仲良く逃げ出している。
・・・。
「さすがご主人様~♪」
「あうっ!?」
しかし何故かクロが嬉しそうな声色で、唐突に勇者を褒め称えた・・・。
って、なんでっ!?
「・・・クロ。
それは何の皮肉だい?」
「?~。」
引きつった顔でクロを見る勇者だけど、無邪気すぎる表情に言葉を失い、感情の行き場を失くしちゃったようね。
「こらぁああああ、クロ!!
なんでこんなタイミングで『さすがご主人様』なんて言い出すの!?」
「え~・・・?
ご主人様が周りをびっくりさせるような事をしたら『さすがご主人様~』って、褒めるんじゃないの~?」
うっ!?
確かに私、そんな感じで教えたわね。
「・・・うん、私の教え方が悪かった。
ごめんなさい、クロ。
でもね、今は勇者を褒め称える時じゃないの。」
「なんで~?」
なんで~・・・って、見ればわかると思うけど。
「あのね、クロ。勇者はね。
格好良く女の子を助けるつもりが、やり方がマズ過ぎたせいで逃げられちゃったのよ・・・。
褒め称えるような事なんて、一切してないわ。
勝手に首を突っ込んだ挙句、いたずらに騒ぎを大きくしちゃっただけだもの!!」
「うあっ!?」
「・・・だから今回ばっかりは、勇者を褒めたりしちゃダメ!!
わかった?」
「は~い・・・。」
私に注意され、クロはしょんぼりした表情となる。
少し言い過ぎたかもしれないけど、褒めて良い時・褒めてはいけない時はしっかり見極めるべきだからね。
「・・・王女。
何もそこまで言わなくったって、良いじゃないか?」
ひゃっ!?
さっきの話、全部丸聞こえだったの・・・?
しまった!!
「あ・・・あの、勇者様。
どうかお許しを・・・。」
そんな巨大な剣を持ったまま、泣きそうな顔で私を睨まないで!!
・・・こ、怖すぎる。
「王女・・・あんたねぇ。
正直にぶっちゃけ過ぎよ!!
・・・なんでこんな時ばっかり、テンイに遠慮が無いの?」
ううっ・・・。
「なんだよ、なんだよ。あの巨大な剣は・・・。」
「まさか魔王軍がこの町を破壊しようと!?」
「やべぇ、早く追い出さないと。剣の持ち主はどこだ!!」
「・・・だがあんな剣の持ち主に俺達なんかが敵うか?」
って、騒ぎがめっちゃ大きくなってる!?
まあ、勇者が今持っている剣、雲すら突き抜けかねないサイズだからねぇ。
町のどこにいようが、見え見えかぁ・・・。
「とりあえず、テンイ。
一旦、スキルを解除したら?」
「・・・。」
聖女に言われるがまま、無言でスキルを解除する勇者。
「魔王軍め、この町から出・・・あれ?
あれほどの巨大な剣が消えた??」
「んっ?
まさかこいつらが魔王軍!?
・・・なわけないか。」
「おい、お前ら!!
この辺で化物が使いそうな巨大すぎる剣を持った奴、見かけなかったか?」
化物が使いそうって。
「え~っと・・・。
モゴ!?」
「しっ!!
クロ、黙ってなさい。」
「ふがふが。」
何も考えずに馬鹿正直に話そうとしたクロの口を聖女が抑える。
「な、何の事かしら♪~( ´ε`;)ゞ
私達、な~んにも知らないんだけど~・・・。」
その一方、私は全力ですっとぼけていた。
「そ、そうか?
この辺りにいたと思ったが。」
「・・・逃げた、か?
とにかくこの付近に恐ろしい剣を持った化物が潜んでいる。
お前達も早く避難した方が良い。」
その通りね。
早くこの場から離れた方が良いわ。
・・・私達が騒ぎの元凶だとバレる前に。
自警団的な人達の他に、ヤジ馬なんかも集まり始めている。
私達はどさくさに紛れ、この町から逃げ出した。
********
町を離れ、再び街道を歩く勇者一行。
あ~・・・せっかく町に着いたと思ったら、こんな騒ぎになるなんて。
けどまあ、物理的な被害は0だし、あの騒動もすぐに収まるでしょう。
あのチンピラ達と女の子には、少し悪い事をしちゃったけど。
「・・・。」
・・・。
それにしても勇者ったら、さっきからずっと無言だし、暗い表情を隠そうともしていないわ。
・・・気まずい。
「ゆ、勇者様。
そんなに落ち込まないで下さい。
別に取り返しの付かない罪を犯したわけではないのですから。」
反省し、これから起こさないよう気を付ければ、全然許される罪だろうしね。
「ご主人様、落ち込まないで~。」
「そうそう、人生に失敗は付きものだって!!
元気出しなさい。テンイ。」
聖女。
その励まし方はどうなのかしら?
皆で勇者を励ましていると、彼は唐突に立ち止まる。
そして。
「う、ううう・・・。
なんで、どうして俺ばっかこんな目に合うんだーーーー!??
うわぁああああああああ!!!!」
大泣きしながら聖女の胸へと抱き着いた。
「あ~・・・よしよし。
泣かない、泣かない。」
少し驚きながらも、勇者をあやす聖女。
彼もヒドラの件で少しは逞しくなったと思ったけど・・・。
「やれやれ。
テンイが格好良い勇者へと成長する日は遠そうね。」
呆れながらも聖女は泣き喚く勇者をあやし続ける。
勇者はどこまで行っても勇者ね。
彼が一人前の男になれる日はいつなんだろう?
と考えつつも、私は聖女にあやされている勇者を眺め続けていた。




