第30話 お勉強編③ 迷走系ハーレム
私はジャクショウ国の王女デルマ。
今は父である王の命令を受け、勇者テンイ達と共に魔王討伐の旅を続けている。
・・・のだけど、そんな命令に真面目に従うつもりなんて、最初から無いわ。
今は王から余計な干渉を受けないために、故郷から遠く離れたチュウオウ国と言う場所へ向かってるの。
チュウオウ国で生活を安定させた後、勇者を元の世界へ帰すための方法を探す予定よ。
ここ最近はヒドラ騒動のあれこれで大変だったけど、なんとか解決したしね。
なので今は目的地に向かって足を進めていたの。
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「ねえねえ、王女様~。
あたし、ハーレム要員として普段、何したら良いの~?」
チュウオウ国を目指している途中、新しい仲間である黒猫族のクロが問い掛ける。
「え!?
え~と・・・ね。」
大人のハーレム要員であれば、男に胸でもくっつけながら、愛想を振り撒くのが正解なのかしら?
今、正に聖女が勇者にそうしてるからね。
・・・勇者ったら、あわあわしながらも結構嬉しそう。
けどお子様のクロに、そんな事をやらせるのはねぇ。
もっと成長するまでは、やらせないでおきましょう。
だとすれば。
「ヨイショして持ち上げる・・・とかかしら?」
「わかった~。」
クロは元気良く返事した後、意気揚々と勇者の傍へと駆け寄った。
「ご主人様~。」
「あら、クロ。」
「どうしたんだい?
・・・って、うわわ!?」
そして突然、彼の体を両手で持ち上げる!!
クロは彼を持ち上げたまま、荷物でも運ぶかの如く、歩き始めた。
「えっ!?
ええええええええ!??」
「ヨイショ、ヨイショ!!」
ちょちょちょ・・・クロ!?
「こら~~~~!!
何やってんのよ、クロ!?」
「?~。
ご主人様をヨイショって、持ち上げてる~♪」
違う、違う。
そうじゃない!!
「違うって、クロ。
『ヨイショして持ち上げる』って、そう言う意味じゃないから!!
とにかく早く勇者を降ろしなさい!!
・・・そ~っと、そ~っとよ。」
「???
は~い。」
とても不思議そうな表情で、勇者をそ~っと降ろすクロ。
急に小さな女の子に持ち上げられた勇者は、ただただ戸惑うばかり。
「クロったら、案外力持ちね。
黒猫族だからかしら・・・?」
聖女が妙な所で感心してるけど、それは今、どうでも良いから。
「あのね、クロ。
よく聞きなさい。
『ヨイショして持ち上げる』ってのは、人を物のように持ち上げるって意味じゃないの!!」
「?~。
じゃあ、どういう意味なの~?。」
「え、え~と・・・ね。あっ!!
『太鼓持ち』よ。
『ヨイショして持ち上げる』ってのは、『太鼓持ち』の事よ!!」
「『太鼓持ち』があたしのお仕事・・・。
わかった~♪」
だ、大丈夫かしら?
「ご主人様~♪」
「こ・・・今度はなんだい?
クロ。」
「太鼓出して~♪」
Σ(゜Д゜)エエー。
「た、太鼓ぉ?
なんで急に・・・?」
「あのね、王女様が言ってたの。
『太鼓持ち』があたしのお仕事だって。
だからあたし、ご主人様の太鼓、持つの~♪」
「だからそうじゃないってば!!」
・・・私、そんなに説明が下手くそなのかしら?
「もう・・・。
王女!!」
「も、申し訳ありません。
クロは奴隷だったせいか、言葉の勉強が全然足りてないみたいで。
どうかお許しを・・・。」
「そこじゃないよ!!
・・・なんで『ヨイショ』とか『太鼓持ち』とか、そんな変な言葉から教えようとするの?
もっと先に教えるべきこと、たくさんあるでしょ!?」
嘘でしょ!?
「そ・・・そんな?
勇者様の世界では『ヨイショ』や『太鼓持ち』などを何よりも尊ぶって。
そう伝えられていたのですが、間違っていたのでしょうか!?」
「・・・それはどこ情報なんだい?」
勇者達の世界は割と変わっていて、表向きには『ヨイショ』や『太鼓持ち』を嫌悪してるんだって。
だけど実際には『ヨイショ』や『太鼓持ち』が得意な人間の方が、お得で幸せな人生を送れる事が多い・・・。
例の本にそう記されていたわ。
もっとも私達の世界でも、似たような傾向にあるけどね。
偉い人や権力のある人達って、自分にとってお得な人間や、自分を気持ち良くしてくれる人間が大好きみたいだから。
もちろん全員がそうって訳じゃないけど、そんな人達が目立つのも事実よ。
「どうせ、例の変な本の内容を鵜呑みにしたんでしょ。
・・・けどさ、人間社会なんてそんなものじゃない?」
「エミリー・・・冷めすぎでしょ。
別に俺達の世界は『ヨイショ』や『太鼓持ち』を大事になんか・・・。
大事になんか・・・してないのかなぁ?」
勇者ったら、いやに悩んでいるわ。
どうも思い当たる節があるみたいね。
なるほど!!
「やっぱり勇者様の世界でも『ヨイショ』や『太鼓持ち』は尊重されているのですね!!
わかりました。
クロが立派に『ヨイショ』や『太鼓持ち』を行えるよう、私も頑張って教育しますので。」
「?~。
よくわかんないけどあたし、ご主人様のために頑張るの~♪」
「いやいや、頑張らなくて良いから。
王女も子供相手にそんな夢の無い教育なんかやめて!!」
「そう遠慮しなくても良いのですよ。
勇者様♪」
彼だって、上手に『ヨイショ』や『太鼓持ち』されたら嬉しいはずだしね。
「ねえ、エミリー・・・。
なんとかならないの?」
「・・・諦めなさい、テンイ。
まっ、大した実害はないでしょ。」
「そんな~・・・。
うぅ、クロの将来が不安だよぅ(TдT)」
呆れ果てる聖女と、何故か泣きそうになっている勇者を尻目に、私はクロを立派なハーレム要員に育てようと、改めて決意した。




