第26話 第3のハーレム編④ ハーレム要員の基本技術
なんやかんやあって、悪いヒドラから奴隷少女クロを救った勇者テンイ。
彼と彼女の意志もあり、クロが私達の旅に同行する事はほぼ確定となったわ。
けれど聖女曰く、クロにはやらないといけない事があるんだって。
それは・・・。
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「見違えたわね・・・。」
「そうね。
まさか、ここまで変わるとは。」
「・・・?」
元奴隷であるクロは生活環境が酷すぎたからか、はっきり言って凄く汚かった。
このままでは見た目的にも衛生的にも良くないので、お風呂に入って徹底的に洗ったの。
『黒猫』族だし、お風呂を嫌がるんじゃないかって思ったけど、その心配はいらなかったみたい。
聖女の話によると、大抵の亜人はお風呂に入る習慣があるようね。
ついでに服もボロボロすぎたので、聖女が持ってた猫系の亜人の子供服を着させたの。
どうやら昔、戦災孤児とかの世話をする際に用意した物が余っていたみたいね。
そんなこんなで体を洗って、服を新調しただけであら不思議。
少し痩せ気味ではあるけど、見違えるように綺麗な女の子になったわ。
逆に心配になるくらい・・・。
「クロ・・・本当は凄く可愛い女の子だったのね。
逆に心配になるわ。
こんなに可愛い奴隷少女だったら、理性の無い大人から酷いいたずらをされたのかも・・・。」
「あ~。それは多分、大丈夫じゃない?
さっきまでが汚すぎたし、そういう対象としては見られなかったはずだわ。
それにそんな経験があるなら、男が近づいただけで拒絶しそうだしねぇ。」
まあ、勇者に助けられた時も特に怯えていなかったし、男に対するトラウマは無さそうだけど。
「?・・・。
よくわかんない。」
本当にわかってなさそうだわ。
じゃあ大丈夫かしらね。
それはともかく。
「クロ。よく聞きなさい。
勇者様のお供として、あなたには立派なハーレム要員になる義務がある。
けど子供で、奴隷だったあなたは知らない事が多すぎる。
・・・だから合間を見て、私がみっちり教育するからね!!」
早く一人前のハーレム要員となって、勇者の好感度を上げないといけないものね。
さっきは『転移勇者に気に入られる=逃げられなくなる』みたいな説明をしたけど、何も悪い事ばかりではないわ。
勇者に気に入られるほど、待遇が良くなりやすいもの。
例の本にも『転移勇者のお気に入りになれば、贅沢三昧も夢じゃない』って書かれてるしね。
「きょ、教育!?
・・・嫌、私、教育・・・絶対嫌!!」
ええっ?
何なの、その怯えよう??
「・・・どうしてそんなに震えるのよ?
あなた、そこまで教育を受けたくないの??」
世の中、お勉強が嫌いな子は多いと聞くけど、震えるほど拒絶する子は早々いないはずよ。
「んー・・・?
クロ。
なんで教育、嫌なの?」
「あたし、叩かれるのは嫌。蹴られるのも嫌!!
ご飯を食べさせてもらえないの・・・嫌!!!!」
・・・どうして『教育する』が、『叩く』とか『蹴る』とか『ご飯抜き』って話になるの?
武術の教育が苦手だったとか??
けど武術の教育で『ご飯抜き』はおかしいわよね。
「きっとこの子、奴隷時代に教育と言う名の虐待を受けていたのよ。
ロクでもない主が奴隷に暴力を振るうなんて、珍しい話じゃないもの。」
そっちの意味だったの!!
クロったら、随分と酷い目に合ってきたのね。
「クロ。安心しなさい。
別にあなたを叩いたり、蹴ったり、ご飯抜きにしたりしないから。
教育ってそういうものじゃないのよ?」
「本当!?」
「教育を受けるとね、知らなかった事がたくさんわかるようになるの。
得意な事が、もっと得意になる事もあるのよ。」
「・・・あたしの知ってる教育と全然違う。」
いや、まああなたの知ってる教育は、教育という名目の虐待だからね。
「じゃあさっそく、教育としてクロの知らない言葉を教えてあげる。
あなた『ナデポ』って言葉は知ってる?」
「ナ・デ・ポ?」
やっぱり知らないようね。
もっともこれは異世界の単語であるため、クロに限らず、この世界で知っている人はそれほど多くない。
「何、その『ナデポ』って変な言葉?
新種の果物かなんか??」
「違うわよ!!
『ナデポ』は異世界の言葉の1つで、ハーレム要員にとっては基本となる技術よ。
本に書いてあったわ。」
「あんた・・・。
また、あのおかしな本を鵜呑みにして。」
どうして聖女は、名書『転移勇者との付き合い方 ~ハーレム編~』をおかしな本呼ばわりするのかしら?
「あのね、クロ。とついでに聖女。
『ナデポ』って言うのは、男性に頭を撫でられた時、頬を(*´ェ`*)ポッとさせる女の子の事よ。
『ナデポ』している女の子を見ると、転移勇者は凄く大喜びするらしいわ。」
「・・・よくわかんない。」
お子様には早かったかしら・・・?
「あ~・・・理解出来なくもないわね。
『俺に撫でられるのが嬉しいんだ』とか『俺に惚れてるんだ』って、気分になるんでしょう。」
あと単純に『スキンシップを喜んでくれるのが嬉しい』とも書いてあったわね。
だから『ナデポ』はハーレム要員にとって大事な技術なんだって。
撫でられた男性に本気で惚れている場合は、自然と『ナデポ』出来ちゃうらしいけど。
「でね、クロ。
もし、勇者に頭を撫でられたら『ナデポ』してくれない?
きっと勇者、大喜びするはずだから。」
「・・・どうやったら『ポッ』って出来るの?
あたしわかんない。」
う、う~ん。
別にクロ、勇者に嫌悪感は無いみたいだけど、惚れてもいないでしょうしね。
惚れてもいない相手に『ポッ』っとする演技をやれってのは、少し難しいかもしれない。
それを言ったら、私もクロと似たようなものだけど。
「『ポッ』っとする自信が無かったら、喜んだ振りでもしておきなさい。
それでも勇者、喜んでくれると思うから。」
「あんたも大概、そう言う所、雑ねぇ。」
撫でた子供が嬉しそうにする、ってのも心が和むシチュエーションだものね。
「・・・。」
あ、あら。
なんだかあんまり気乗りしてないようね。
もしかして・・・。
「クロ。
ひょっとして誰かに頭を撫でられるの・・・嫌?」
「えっ!?
ううん・・・別に平気。」
・・・なら良いけど。
「き、君・・・えっ、えっ?
嘘だろ!?
まるで別人みたいだ。」
あっ!!




