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第24話 第3のハーレム編② ハーレム要員の宿命

「・・・。」





ここは町の病院の一室。


勇者が救い出した奴隷少女は未だ眠り続けている。

そんな彼女を勇者は心配そうに見守り続けていた。


一応、聖女の魔法で容態はかなり回復しているんだけど。


「勇者様。

 彼女の様子はどうですか?」


「王女、エミリー。

 ・・・まだ眠ったまま、起きないんだ。

 医者は命に別状は無いって、話してたけどさ。」


「そうですか・・・。

 では、目を覚ますのを待つしかありませんね。」


「・・・うん。」


目を覚まさないのは心配だけど、だからと言って、無理に起こすわけにもいかない。


「テンイ。お役所の人達があなたからも話を聞きたいんだって。

 今、外で待っているから、行って来てくれない?

 彼女の様子は私と王女が見ておくわ。」


「うん、わかった。


 ・・・ねえ、王女、エミリー。

 彼女を俺達のPTに入れても良いかな?

 一人にさせるのも心配なんだ・・・。」


え?


「う~ん・・・ま、良いんじゃない?

 こんなちっちゃな子なら、正妻を巡るライバルにもなりゃしないし。」


「あ、あはは。ありがとう。

 王女は?」


例の本曰く『転移勇者は積極的に人助けを行う反面、助けた後のフォローは行わない事が多い』そうよ。

でもだとしても、それを指摘して気分を害すような真似は厳禁だって、書かれていたわ。


・・・まあ助けた相手の面倒は最後まで見るのが常識、って言い分も単なる無茶ぶりだと思うけど、ね。

そんな事、実践している人が実在するかも怪しいし。


けれど彼女に関しては、ある程度は助けた後のフォローも必要だろうから、それを忘れない勇者は偉いと思う。

ただ・・・。


「え、え~とですね。

 そういった話は彼女の意見も大切ですわ。

 だから彼女が目を覚ましてから聞いてみましょう。」


私は慌てて彼女のPT入りに待ったを掛ける。


「なるほど。

 それもそうだね。」


「・・・え~。」


あれ?


勇者は納得したみたいだけど、聖女は納得してない感じね。

予想外の反応だわ。


「それよりも勇者様。

 あんまりお役人の方を待たせるのも悪いですわ。」


「あっ、そうだった。

 じゃあ行ってくるよ。」


彼女を心配そうに見つつも、勇者は部屋から出ていく。


「ねえ、王女。

 あなた、もしかして彼女をPTに入れたくないの?」


「どちらかと言えば、入れたくないわね・・・。」


そう答えると、聖女はやや剣呑な目付きで私に反論する。


「PTに入れたくない理由は、彼女が足手纏いだから?

 それとも黒猫族で元奴隷だから??」



「???

 別に足手纏いだからPTに入れたくない、なんて言う気はないわ。

 それを言ったら、私だって足手纏いに近いもの。」


そりゃ数十人、数百人もの子供を冒険に連れて行くんだ!!

・・・なんて話なら、ともかくさ。

一人くらい、お子様が増えても大丈夫だと思うわ。

元奴隷だから、普通の子供よりはしっかりしてるでしょうしね。


「あと、彼女が黒猫族で元奴隷だから・・・ってのはよくわからないわね。

 なんでそんな事がPTに入れたくない理由になるの?」


「なんでって・・・。

 あんた、やっぱり変な王女ね。」


やや呆れつつも、どこか感心した様子の聖女。

他の国の王族は、黒猫族や元奴隷を特別扱いしてるのかしら?


薄情かもしれないけど、私は相手が黒猫族だろうが元奴隷だろうが、優遇する気も冷遇する気も無いわ。

同じ『人』には変わらないもの。


「でもだったらなんで、彼女をPTに入れたくないのよ?」


そんなの、理由は二つしかない。


「決まってるでしょ。

 彼女を勇者のPTに加えるなんて、危険すぎるからよ!!

 せっかく助けたのに勇者の暴走に巻き込まれて死んじゃったりしたら、可哀そうじゃない。」


「あ~・・・そう言う事ね。

 あなたらしいっちゃ、あなたらしい意見だけどさぁ。

 ・・・テンイが聞いたら彼、泣くわよ。」


・・・まあちょっぴり失礼かもしれないけど、彼がまだ自分の力を制御しきれていないのも事実よ。

本人にその気がなくとも、力を暴走させ、彼女を傷つけてしまう可能性は決して低くない。


「それだけじゃないわ。

 転移勇者のハーレム要員ってなるのは簡単だけど、一度なっちゃったらもう二度と抜け出せない事が多いの。

 彼女を一生、勇者のハーレム要員として縛り付けるのもどうかって思って・・・。」


「ちょっと待ちなさい!!

 誰も彼女をテンイのハーレム要員にするなんて、言ってないでしょ!?」


「・・・え?

 例の本には、基本的に転移勇者(♂)の女仲間は全員、ハーレム要員として扱われるって書いてあったけど・・・。

 私も勇者のハーレム要員のつもりだしね。」


もっとも父が勇者を理不尽に誘拐している以上、彼の私への好感度は凄く低いでしょう。

けどだからこそ、私は立派なハーレム要員として振る舞う必要があるの。

自分の女仲間が魅力的なハーレム要員である事、それが転移勇者の一番の望みらしいからね。


好感度を上げておけば、勇者から危害を加えられる可能性も減るだろうし。

・・・彼が私に危害を加える気があるかは、正直よくわからないけど。


それに例の本曰く『転移勇者は自分を裏切った者を決して許さない』とある。


勇者も今はまだ、彼女に対してそこまで強い執着は持っていない。

だからここで別れてしまえば、少しは寂しがるでしょうけど、普通に受け入れられるはず。


けれどもし、PTに加えて勇者が彼女に強い思い入れを持ったとしたら・・・。

彼のハーレム要員以外の道を歩く事を、決して許さなくなるかもしれない。

そう考えると、PTに入れない方が彼女にとって良いと思うの。


「ま~、あんたの本に書いてある超理論は一旦、無視するとしても、よ。

 いくらテンイが女たらしだとしても、こんなちっちゃな女の子にそこまで執着しないでしょ?

 ってか、無闇に他人を束縛するようなタイプにも見えないけど・・・。」


・・・そりゃ勇者の人柄だけで見れば、その通りかもしれないけどね。

けど彼も転移勇者の一人だもの。


「仮に彼女がこれからの人生、ずっとテンイのハーレム要員だったとしてもよ?

 それでも私達と一緒に行くのが、彼女にとって一番幸せだって。」


「なんでよ!?」


「そりゃあ・・・。」





「・・・う、う~ん。

 ?

 ここは?」





あら?

聖女と口論してたら彼女、目を覚ましちゃった。


ぐぅ~~~~。


「お腹、空いた・・・。」


あらら。


「とりあえずご飯でも食べさせましょっか。」


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