第208話 黒猫族編 クロの選択
Side ~クロ~
あたし、クロ。
テンイお兄ちゃん達と一緒にいろんなところを冒険してるの。
ついさっきまで、デルマお姉ちゃんの国にいたんだよ。
今はアビス様に乗って、お家へ帰るとこなんだ~。
・・・あれ?
・・・。
この気配、もしかして!?
「アビス様、ね~アビス様!!
お願いっ、あの山まで連れてって!!」
「む。」
早く、早くっ。
「我は構わぬが・・・。」
「ちょっと落ち着きなよクロ。
あの指差してる山へ行きたいんだね?
・・・でもどうしてだい??」
「おば~ちゃんがいるの・・・。
黒猫族の皆がいるのっ。
魔物に襲われてるみたいなの!!」
********
「え~ん・・・。
僕たち、あの牛の化け物に食べられちゃうの?」
「無念じゃ。
余に力があれば。」
「・・・わしらもここまでか。」
「ブモォオオオオオオオオ!!!!!!!!」
「ウォオオオオオオオオンンンンンンンン!!!!!!!!」
「「「「「「「「えっ!!??」」」」」」」」
「ミノタウロスめっ。
クロのおばあちゃん達を傷つけたら、承知・・・。」
「ブヒンッ!!
ブヒヒーン!!??」
「・・・って、速攻で逃げ出した!?
あ、そっか。
いくら魔物でもアビス程の大きさの竜は怖いよね。」
良かった。
ミノタウロスに襲われる前におば~ちゃん達が助かって。
「タマおば~ちゃん!!」
「!!??
まさかお前、クロか・・・。
クロかぇ!?」
********
「わ~ん。
おば~ちゃ~ん・・・。」
「良かった。
クロ、お前だけでも無事で本当に良かった。」
あたし、山賊にお父さんやお母さんを殺されちゃってね。
あたしも奴隷として売られちゃって、おば~ちゃん達がどこにいるかもわかんなくなって。
もう二度と会えないと思ってた・・・。
だから会えて良かった。
「はい。
おば~ちゃんも食べて。
美味しいよ。」
「ああ、ありがたく頂くよ。
・・・おおっ。
なんておいしい果物かぇ。」
でもおば~ちゃん達、お腹がペコペコだったみたい。
だからデルマお姉ちゃんが水やヒデヨシさんが作った果物を出してくれたんだ。
皆、おいしそうに食べてくれてあたしまで嬉しくなっちゃう。
「・・・。」
そんなあたしやおば~ちゃんをテンイお兄ちゃんがね。
どこか寂しそうな顔でじっと見ていたの。
「ど~したの?
テンイお兄ちゃん。」
なんだか心配になって聞いてみたんだ。
そしたらね。
「・・・あのね、クロ。
君は俺達と戻らず、ここでおばあさん達と一緒に暮らすかい?」
「えっ!?」
ど・・・どうしてそんな事、言うの?
「いやいや、勇者様!!
さすがにそんな事は出来ませんて。」
・・・あっ!!
思い出した~。
「そ~だった。あたし、ハーレム要員だった。
確か一度、ハーレム要員になったらさ・・・。
一生、男の人・・・テンイお兄ちゃんから離れちゃダメなんだよね?」
デルマお姉ちゃん、最近は普通のお勉強ばっかでハーレム要員としてのお勉強・・・。
全然しなくなっちゃったんだ~。
だからすっかり忘れてた・・・。
「って、こらっ。
王女!!
ま~た君は妙な事を吹き込んで!!」
「わ~~~~、違うんですっ。
あの頃は勇者様の事、まだよく知らなくて・・・。
そんな理由じゃないから、ないですから!!」
へ?
違うの??
「じゃ、ど~して故郷へ戻っちゃダメなんて言うのさ~?」
「いや、だってこの山・・・。
ミノタウロスのような魔物はいるし、黒猫族の皆もロクに食事にありつけてないようですし。
そんな山にクロを置いてくなんて、いくらなんでも危険すぎますよ!!」
「・・・あ。
でも、俺と一緒にいても危険な目に合うかもしれないからさ。
ほら、つい最近だって命を落とすとこだったし。」
「それは・・・。
う~ん。
どっちの方がクロにとって安全なのかしら?」
あの・・・。
え~っと。
「・・・転移勇者様。
叶う事ならこのままクロも連れて行ってくれないでしょうか?
わしらとこの山で暮らしてもそう遠くない内に命を落としかねない故。」
「だよな・・・。
最近はミノタウロスのような危険な魔物がウジャウジャいるし。」
「クロちゃんのお父さん、お母さんを殺した山賊達もね。
魔物に成す術もなく食べられちゃったんだよ。
そんな危険なとこにいるより、転移勇者様と一緒にいた方が良いよ!!」
・・・。
「騒ぐでない、皆のもの・・・。
どの道を選ぶかはクロ自身が決める事だ。」
「だよなぁ。
で、クロ。お前はど~したいんだ?
テンイ達と一緒に行くか?
ば~さん達と一緒に暮らすか?」
・・・。
・・・・・・。
「そんなの、決められないよーーーーーーーー!!!!!!!!」
黒猫族の皆と離れ離れになるのは嫌!!
テンイお兄ちゃん達と離れ離れになるのも嫌!!
「誰とも離れたくないよーーーー!!!!」
「人生は出会いと別れの繰り返し。
・・・な~んて言うけど、さすがに今のこの子には酷な話かしら?
ただでさえ両親が殺され、奴隷として長い間一人ぼっちだったからねぇ。」
「だがよぉ、エミリー。
どんなに辛くとも選ばなくちゃダメなんだ。
しゃ~ね~だろ。」
確かにヴェリアお姉ちゃんの言う通りだけど・・・。
でもっ。
だけどっ。
「そっか。
誰かと別れなきゃダメな時って、必ず来るんだよね。
・・・俺だっていつかは。」
どうすれば良いの?
どっちを選べば良いの!?
「でも仮にクロが黒猫族の皆と一緒にいたかったとしても、よ?
こんないつ命を落とすかわかんない山に置いてくのだけは受け入れられないわ。
せめて黒猫族の皆が安全な場所へお引越ししてくれれば・・・・・・あっ。」
あっ?
この反応は!!
「デルマお姉ちゃん!!
なんか良い事、思いついたの!?」
「落ち着きなさいって、クロ。
勇者や黒猫族の皆が納得してくれたらの話だから。
あのですね、皆さん。
こういうのはどうです?」
********
「じゃあ、皆。
今から足し算のお勉強よ~。」
「「「「は~い。」」」」
おば~ちゃん達とまた出会ってから、何日か経って・・・。
今はチュウオウ国にある私達のお家で足し算のお勉強、するところなの~。
黒猫族の皆と一緒にね。
「ふむ・・・。
皆でお勉強というのも中々興味深いのぅ。」
そ~言えば皆の中に黒猫族以外の女の子が1人、混じってたの。
白髪の子でヒミカちゃんって言うんだよ。
倒れてたとこをおば~ちゃんが拾ったんだって。
ちょっと変わった喋り方だけど、皆とは仲良しみたい。
多分だけど、あの子は・・・。
「王女。
お勉強するのはとっても大切な事なんだけどさ。
ハーレムのお勉強だけは絶対ダメだからね。」
「絶対ダメとまで∑(゜Д゜)!!?」
「当然じゃないか!!
もう、君と来たら・・・。」
あ、そうそう。
あのね。
デルマお姉ちゃんが思いついた事はね。
おば~ちゃん達、黒猫族の皆も一緒にチュウオウ国で暮らそうよ。
って事だったの。
10人くらいなら一緒に暮らす人が増えても全然大丈夫だからって。
「本当にありがとうございます、テンイ様。
クロだけでなく、我々までも助けてくださって。」
「・・・それより本当にい~んですか、タマさん?
お給金の話。」
「衣食住に不自由しないだけで十分ですじゃて。
いざと言う時の金貨も頂いてますしの。
わしらへ給金を支払うくらいなら、あの子達へのお勉強をお願いしますじゃ。」
「それはそのつもりですから。」
でね。
おば~ちゃんのようなお年寄りの人にはこの屋敷でお掃除とかのお仕事をお願いする事にして。
それ以外の人達は一人前になるまで、お勉強とかしながらこの屋敷で暮らすことにしたの。
「クロ、この前は俺を助けてくれてありがとう。
でも次は絶対、あんな事しちゃダメだからね。
・・・クロが殺されちゃったら俺、悲しくなってまた魔力暴走、起こしそうだし。」
「そうよ、クロ。
ハーレム要員はね。男の人だけ守れば良いってものじゃないの。
自分も皆も全部守れて、初めて一人前なんだから。」
「その『ハーレム要員』ってのは余計だけれど・・・。
ま、そ~いう事かな。」
そっか。あたしが死んじゃったらテンイお兄ちゃん達、悲しんじゃうんだ。
じゃ次は絶対あんな事になんないよう、気をつけなくちゃ。
「・・・私もクロに偉そうな事言えるほど、それが出来てる訳じゃないけどね。
だからこそお互い頑張りましょう。」
「そだね。
俺もぜ~んぶ守れるよう、もっと強くなるよ!!」
「うんっ♪」
あたしももっともっと頑張らなくちゃ。
そしてテンイお兄ちゃん達とず~っと楽しく過ごすんだ~♪
「どちらかだけじゃなく、両方を選ぶか・・・。
そういう道もあるんだな。」




