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第202話 故郷編⑥ 最後の魔力暴走

いつの間にか勇者なら大丈夫だと無意識に思ってしまっていた。

もう力を暴走させ、周りを傷つける事なんか無いと。


でもそれは間違いだった。


未熟な少年だろうが、優秀な大人だろうが関係無い。

もしもチート能力のような人知を超えた力を持ってしまったら・・・。


強大な力を暴走させ、全てを滅ぼす可能性が消える事は決してない。

・・・人に心がある限り。



********



「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」





勇者の絶叫と共に世界の崩壊が始まった。


「勇者・・・?」


風が吹き荒れ、電撃が走り回り、正体不明の衝撃により破片が次々と降り注ぐ。


「魔力暴走!?

 ・・・でも今までとは桁違いのパワー。」


転移者カゲトのせいで瀕死状態のクロを抱きかかえながら、エミリーが呟く。

この世界へ来たばかりの彼は不安と心の弱さからよく魔力暴走を引き起こしていた。

けれどギリギリながらフォロー可能な範囲で、なんなら純粋なパワーは平常心で魔法やスキルを放つ時より劣る。


でも今回の魔力暴走はそんな次元に収まるような規模じゃない。


「な、なんて揺れだっ。

 とてもじゃないが立ってられんぞ!!」


「そ・・・それより見てっ!!

 町がっ!?」


「「「「「「!!!!????」」」」」」


地面は激しく揺れ続け、外では雷雲や竜巻が飛び交い、建物が次々と崩壊し続ける。

その勢いは収まるどころか、ジャクショウ国の外へまで広がりつつあった。


「ぎゃあ!!??」


「余波だけであのカゲトを!?」


魔力暴走の余波がかすめただけでカゲトが失神し、体が痙攣し続ける。

ランク5のスキルの使い手をこんな簡単に瀕死へ追い込むなんて。


「おいおい、マジかよ・・・。

 テンイの奴、もしかして俺の父上よりやべ~んじゃね~?」


あまりのパワーに強大な力を持つヴェリアすら怒りを忘れ、呆然とするばかり。


「そのような事を呟いている場合かっ!?

 共にテンイを止めるぞっ。

 ヴェリア!!」


「お、おうよっ。」


「「フィフス・マジック・サプレッション!!」」


ヴェリアとアビス様が他者の魔力を抑えるランク5の魔法を使用。

普段ならランク4の魔法、スキルまでしか使えないヴェリアも、強烈な危機感からか無意識にランク5の魔法を発動させる。


その結果、幾分か力の広がりが弱まりつつはあるも・・・。


「なあっ!?

 なんてパワーだよっ!!」


「・・・ぐぬぅ。

 さすがは我が主、信じられぬ才の持ち主よ!!」


それでも魔力暴走を抑える事は叶わず、打ち破られるのも時間の問題であるのはすぐわかる。


「世界の・・・終わりだ・・・。

 我が国が愚かだったせいで・・・。」


・・・そんな。

・・・そんなっ。


「勇・・・者っ。」


このままじゃ勇者は世界を滅ぼす破壊神になってしまう。

物語の英雄なんかからは程遠い、おっちょこちょいで頼りない彼だけど。

でも少しでも強く、正しく生きようと一生懸命だった彼が・・・彼がっ!!





「お辞めくださいっ、勇者様!!

 どうか心をお沈め下さいっ・・・。

 世界を滅ぼさないで下さいっ!!」





私は未だ叫び続ける彼を掴んで、必死になって声を出す。


・・・苦しい。

魔力暴走のせいか、彼に触れるだけで凄まじい衝撃が私の体を巡る。


でもっ、でもっ!!


「お願いします!!

 どうかっ、どうかっ!!」


泣きながら世界を滅ぼさないでと叫ぶ。

叫び続ける。


「デルマ・・・。

 え~いっ、もうこ~なりゃヤケよっ。

 ダメで元々、やってやろうじゃないの!!」


そんな中、エミリーが全身全霊で魔力を込め、体から眩いばかりの光を放つ。


「リザレクション!!」


そしてクロに伝説の回復魔法『リザレクション』を使用。

・・・彼女程の才能の持ち主でさえ、発動するかも怪しい大魔法だけれど。


「テンイ!!

 クロは絶対、私が助けてみせるわっ。

 仲間一人救えないで、何が聖女よ!!」


魔力を放出しながらエミリーが吼える。


「だからあなたも魔力暴走を抑えなさい!!

 もしもあなたが世界を滅ぼしたら、クロだって悲しんじゃうわっ。」


「そうだ。

 己の心を保つのだ・・・テンイ。

 お主なら、出来るっ!!」


「おいこら、自分の力なんかに負けんじゃね~よっ・・・。

 自分の弱さに屈するんじゃね~よっ!!

 それでも男かっ!!」


エミリー、アビス様、ヴェリアが必死になって勇者へ声を掛ける。


「お願いします!!

 どうかっ、どうかっ!!」


私も意識を失いそうな程の衝撃の中、叫び続ける。

地面が揺れ、瓦礫が飛び交い、雷や嵐が吹き荒れる中、一心不乱に叫び続ける。





「・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・あ。」





勇者が私の声にわずかながら反応する。


「王・・・女・・・?」


「お願い、します・・・。

 世界を、滅ぼさ・・・ない、で。」


既に心身ともに限界だった私はそのまま意識を失ってしまったの。





「王女ーーーーーーーー!!!!!!!!」


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読んで頂き、ありがとうございました。

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