第201話 故郷編⑤ 崩壊へのカウントダウン
「やだーーーー、やだーーーー!!!!」
このままじゃ私、転移者カゲトに喰べられちゃう!!
誰か、誰かーーーー・・・。
「やめろーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
城壁の破壊音と共に力強い叫びが轟く。
こ、この声は!!??
「ゆ・・・勇者様!?
皆!!」
アビス様に乗った勇者達が駆け付けてくれたの。
その姿は正に伝説のドラゴンに跨る英雄そのものだったわ。
「ぎゃあ!!
き・・・金色のドラゴン!!??」
アビス様に恐れをなし、慌てて距離を取るカゲト。
「大丈夫かい!?
王女っ。
・・・・・・。」
「勇者、様・・・。
って、鼻血、鼻血!?
さてはカゲトの不意打ちね!!」
「濡れ衣だ、バカ!!」
狡猾な転移者のせいか、鼻から血を流す勇者のためにアイテム・ボックスからタオルを用意する。
ついでに私の替えの服もね。
カゲトに切り裂かれちゃったから。
「良かった、王女。
無事で・・・。」
服を着る私を見、ちょっぴり残念そうにしつつも、安堵する勇者。
「デルマお姉ちゃん!!
大丈夫~!?」
「ったく、心配させんじゃね~よ。」
「クロ、ヴェリア・・・。」
そして。
「・・・だいぶまずい状態ねぇ。
ノマール王子。」
「聖女、エミリー・・・。」
「しょ~がない。
回復魔法で助けてあげるわ。
デルマのお兄さんだしね。」
だるそうにしながらも、エミリーが回復魔法『ヒール』でノマール兄上を癒す。
良かった。
彼女がいればどんな大怪我もあっと言う間に治っちゃうもの。
いつものメンバーが揃い、限界に近かった私の心が晴れていく。
・・・って、そうじゃなくてっ。
「どうして勇者様がここへ!?
まさかジャクショウ国を救おうとする私を叱りに・・・。」
「んな訳ないでしょ!!
もう王女ったら、怒るよ?」
えっ!?
「確かに俺にジャクショウ国を助ける義理なんかないさ。
でも君にとっちゃ故郷だろう?
・・・たまには君のために戦わせてくれよ。」
ひょっとしたらとは思ったけど、本当に彼は純粋に私を助けるため・・・。
「勇者に聖女に魔族に金色の竜だなんて・・・。
あはは。完全に僕、正義の味方様に倒される悪役じゃん。
でもさ、悪ばかり栄えるのが現実ってやつなんだ。
それを今から証明してやる!!」
だけど感傷に浸る暇もなく、カゲトが剣を抜きなんらかのスキルを発動させようとしている。
私でもわかるほどの凄まじいパワー。
才能だけなら山賊王どころかタケルにさえ匹敵するかもしれない。
「死ねーーーーーーーー!!!!
五の奥義・・・。」
カゲトが大きく剣を振りかぶる。
が。
「遅いっ!!」
凄まじい速さで勇者がカゲトに接近し、手に持った剣で胴打ちを決めたの!!
「ヴっ!?
あ・・・が・・・。」
偽りながらも激痛が走り、カゲトは剣を離し、腹を抑えながら悶絶するばかり。
「嘘だろ、テンイ・・・。
ランク5のスキルの使い手を不殺の剣一本で倒したのか!?」
そう。勇者が手にしているのは不殺の剣。
訓練用に使われる事が多い剣で、いくら斬っても肉体が傷付く事はない。
でも代わりに偽りの痛みを与え、精神にダメージを与える事が出来るの。
その痛みは大体、木刀で殴られた時と同じくらいね。
「なん、で。
どう、して。」
「当然だよ。
隙が大きすぎるもの。」
どうやらカゲトは元の世界じゃ全然鍛えてなかったみたいね。
それじゃあ、この世界へ来る前から剣の修行に明け暮れていた勇者に敵うはずがない。
「・・・やめて。テンイ。
もうその剣でぶたないで。
こっちの世界でも痛い思いをするなんて、嫌だっ。」
「・・・・・・。
じゃあすぐにこの国から出て、二度とこんな悪さはしないと約束してくれる?
してくれるならこれ以上、攻撃しないからさ。」
「しますっ。しますっ。
だからもう許してよーーーー!!」
土下座をして謝り倒すカゲトに悲しそうな目を向ける勇者。
こんな態度を取られてはこれ以上、攻撃するなんて彼には出来ないでしょう。
「甘すぎるぞっ、テンイ!!
君の実力ならカゲトすら軽く殺せるだろうに・・・。」
「いや、んな事言われても困るって!!
俺、人殺しなんかしたくないし。
そもそもカゲトがあ~なったのだって、あんた達が別世界の人間を誘拐し続けるからだろっ。」
「・・・私だって同じ過ちを繰り返す気なぞなかったさ。
だが父の暴走のせいとは言え、カゲトは被害者から加害者へ変わってしまったんだ。
あいつはもう引き返せないんだ!!」
「そんな言い方するなんて、あんまりじゃないか!!」
けれど勇者の対応にすっかり回復したノマール兄上が苦言を呈し、そこから口論へ発展してしまう。
彼からすればカゲトは正に自分が辿ったかもしれない末路の1つ。
それを思うと温情で済ませたくなるのも無理ないと思うわ。
「!!??
ダメっ・・・。
ダメーーーー!!!!」
「おいっ。
ど~したんだ、クロ!?」
へ?
なんでクロったら、急に勇者の元へ走り出して・・・。
「・・・バカだな、テンイ。
油断しすぎだ!!
五の奥義・神無諸手突ーーーー!!!!」
って、あれはどんな強者すら貫くランク5の剣技スキル!!
まさかカゲト、降参する振りしてずっと不意打ちの機会を狙ってたの!?
「なっ!?」
勇者がカゲトの方へ目を向けるも、さすがに遅すぎる・・・。
エミリー達のフォローも間に合いそうにない!!
そしてカゲトは一人の黒猫族の少女を貫いた。
嘘。
「「「「クロ!!??」」」」
「あの黒猫族の女の子・・・。
カゲトの殺意に気付き、テンイを庇ったのか?」
私とエミリーは急いでクロの元に駆け寄った。
まだ助かるかもしれないと信じて。
「クロ・・・。
嘘、だろ・・・。」
「へ?
あ・・・。」
カゲトからしてもクロを突き刺したのは完全に想定外だったようで、勇者への追撃も忘れ呆然としている。
クロの胴体から既に剣は引き抜かれているも、あまりに傷が深すぎる!!
かろうじて息はあるけど、これじゃ・・・。
「ヒール!!
・・・ダメッ。
重傷すぎて、気休めにしかならないっ。」
「そんなっ!?
あ、そうよ!!
『リザレクション』よっ。
あの回復魔法ならどんな重傷だって!!」
「無理よっ。
だってあれ、ランク5の魔法以上に魔力を消耗するもの・・・。
今の私じゃ・・・。」
うっ・・・。
でもこのままじゃ、クロが・・・クロが死んじゃう!!
私もせめてクロの出血量だけは抑えながら、全力で頭を回転させ、彼女を救う方法を考える。
だけど何も思い付かない。
どんどん彼女の体が冷たくなっていくのがわかり、打つ手の無い現状に絶望は広がるばかり。
「てめぇ・・・。
よくも俺の大切な仲間を!!」
「不意打ちであのような幼子を貫くとは!!
カゲト。
貴様はそれほどまでに堕ちてしまったのか!?」
「ぼ・・・僕のせいじゃない!!
あの黒猫の子供がいきなり飛び出して来ただけだっ。
あんな子供まで無残に殺す気なんてなかったんだっ。」
怒り狂うヴェリアとアビス様に怯え、見苦しい言い訳を続けるカゲト。
そんな言い訳、どうだって良い!!
クロを・・・クロを返して!!
「だ・・・大体、その黒猫の子供はテンイを庇ってあ~なったんだろ?
だったらその子を殺したのはテンイのようなもんだっ。
クロが死んだとしても、それはテンイのせいだ!!」
「俺の、せいで・・・。
クロが・・・。
あ。」
あまりに救いようのない言い訳に私まで怒りに染まりそうになる中。
「・・・え?
テンイ・・・様!?
なんなの、この信じられない程の魔力は!!」
シズカの呟きが私の耳に届いた途端。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
勇者の絶叫と共に世界の崩壊が始まった。




