表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

202/211

第200話 故郷編④ 王女最大の危機!!

「これで全員の避難が済みました。

 ノマール兄上。

 今、この国に残っているのは私達だけです。」


「そうだね。

 デルマ。」





名酒『マオー』によって酔い潰れ、爆睡中の転移者カゲトの横で。

シズカ達と共に皆の避難完了を確認し、兄上へ報告したの。

今頃、国民や姉上達は冒険者と共にゴキン町で待機しているはずよ。


だから国に残ってるのは私とノマール兄上、シズカら兄上の部下3人。

そしてカゲトの計6人だけね。

もう1~2時間は経ってるけど、カゲトが目を覚ます気配はない。


「あとは私やシズカ達でカゲトを誤魔化し続けるだけです。

 その間にチュウオウ国の冒険者が応援にやって来る事を期待しましょう。」


「「「「・・・。」」」」


でもさすがに目が覚めたら誰もいないとなったら、逃げやがってと怒ったカゲトが暴れ出すかもしれない。

そうならないよう、魔法で式神を作ったり、幻を見せて、彼の眼を欺く必要があるわ。

そうやって時間を稼いでいる隙にチュウオウ国の冒険者ギルドから、助っ人が来るのを待つって寸法ね。


これが私の考えた作戦よ。

長時間、式神や幻で人を欺き続けるのは困難だけど、他に誰も死なせずジャクショウ国を救う方法なんて思い付かないもの。


「シズカ。

 任せたよ。」


「ハッ。」


へ?


「わっ!?

 シズカ、なんで??

 どうして私を羽交い絞めに・・・。」


「すみません。

 デルマ王女。」


ど、ど~して!?


「静かにするんだ、デルマ。

 邪魔せず大人しくするなら『君には』何もしない。」


なんて言いながら、ノマール王子が剣を抜く。

鋭い目付きでカゲトを睨みながら。


「ま・・・まさか、兄上っ!!」


「こうするのが一番効率的な事くらい、君にだって分かっていただろう。

 ・・・まったく、母親に似て甘いな。

 デルマは。」


「そんなっ。

 彼だって、被害者なのですよ!!」


確かにジャクショウ国を救うだけなら、それが一番効率的かもしれないけれど。


「だが加害者でもある。」


あ・・・。


「すぐに突き刺しても良かったが、理由は違えどお前のような反対者から妨害されるかもしれない。

 万一奇襲に失敗した際、不要な犠牲者が出ても困るしね。

 だから我ら以外の全員が脱出するまで、待っていたのさ。」


「でも、だけど・・・。」


「わかってください。

 デルマ王女。

 こうするのが最も犠牲の出ない方法なのです。」


私にだってわかってる。

来るかもわからない援軍を頼りに式神や幻でごまかし続けるのと。

熟睡している隙に彼を『倒す』のと。

どちらの方が確実かくらい。


「・・・。」


それでももしもあの時、勇者がこの国へ大きな被害を出していたら。

・・・その結果、カゲトのような末路を辿ったらと思うと。


もがけどもがけど抜け出せず。

けれど国の皆や死んでしまった父上を思うと、強引に振りほどく程の気力も沸かず。


こうやって迷っている間にも、剣を構えたノマール兄上はカゲトへ一歩、また一歩と近づいていく。

もういつでも突き刺せそうな程接近したのにカゲトが目を覚ます様子はない。





「手を汚すのは私に任せるんだ。

 デルマ。

 是が非でもこの手でカゲトを討つ!!」





優し気な表情を一瞬見せた後、兄上の剣が無防備なカゲトの体に迫る!!

私はそれを声なき悲鳴を上げながら、見守る事しか出来ない。





「!!??

 なっ・・・。

 うわぁああああああああ!!!!!!!!」





しかし強烈な殺気に意識を取り戻したカゲトが訳もわからず魔力を暴発!!


「「何っ!?」」


「「きゃああああ!!??」」


距離が離れていた私達は尻餅をつく程度で済んだわ。

けれど思い切り魔力暴発に巻き込まれたノマール王子が盛大に吹き飛ばされ、壁へ叩き付けられてしまったの。


「ノマール兄上!!」


「「「王子!!」」」


「あ・・・が・・・。」


既にシズカから振りほどかれた私は彼女達と共にノマール兄上の元へ駆け寄ったわ。

・・・兄上は口から血を吐きながら、とても苦しそうにしている。

このまま放っておけば、兄上の命は・・・。


私が・・・エミリーのように回復魔法を使えれば、あっと言う間に兄上を助けられるのにっ。


「人様を誘拐した挙句、邪魔になったら殺そうだなんて・・・。

 ほんっとうにどの世界も人間なんて腐り果てているな!!」


どうしよう・・・。

カゲトが怒っている。

このままじゃノマール兄上がっ。





「止めて!!」





打開策さえ思いつかないまま、私はカゲトの前に立ち塞がったわ。

力尽くで追い払うどころか、説得さえも絶望的なこの状況。

でも、なんとかしないと!!


「お願いします。

 必ずあなた『も』元の世界へ帰してみせます。

 だからどうか、皆の命だけは・・・。」


未だ勇者すら元の世界へ帰せてないのに、初対面の異世界人がこんな言葉を信じてくれるなんて思えない。

けれど言葉を尽くすしか、私に出来る事はないから。


ところがカゲトは先ほどまでの怒りを忘れてしまったかのように、驚愕した表情で私を見続けるばかり。


?・・・。



「め、女神様!?」


「へ?

 女神様ならこの世界、別にいるけど。」



戸惑う私にカゲトが無遠慮に近づき、そして胸元へ顔をうずめたの。


「えっ?」


「なんて良い匂い・・・。

 ああ、気持ち良い。」


「あ、あの~。」


ど~してこの異世界人は急にこんな事をし始めたのかしら?

たまに勇者もどさくさ紛れに私に抱き着いたりするけど、例の本にも書かれていない彼の国の文化なの??


「・・・ま、いっか。

 どうせもう遅いし。」


「って、ナイフ!?

 キャ・・・。」


「逃げるなよ~?

 ノマール達にトドメ刺すよ。」


そう脅されては身動きも取れず、そして彼はすんごい真顔で私の服を切り裂き始めたの。

そこに殺意はなく、ボトルシップでも作るかのような集中力で慎重に私の服を切り裂き続ける。

・・・刺しかかってくるのとはまた別種の恐怖を感じるわ。


「わぁ・・・。

 なんて綺麗な肌なんだろう。

 胸のサイズはほどほど程度だけど、これはこれでこう・・・。」


「・・・あの~。

 せっかくお気に入りの服だったのに切り裂いちゃうなんてあんまりですよ。

 それに女の子が上半身裸でいるなんて、周りから非常識に思われるじゃないですか!!」


「その反応が非常識だと思いますが・・・。」


どういう訳か呆れた声でシズカが呟く。


「そ~いや君、ちっとも恥ずかしがらないなぁ。

 もっと恥じらってくれないと、物足りないんだけど~?」


「・・・そんな訳の分からない事を言われても。

 触られても、裸を見られても恥じらわぬよう、教育を受けましたから。」


城内の人達との混浴でね。

一応ながらも私は王女。

その程度で恥ずかしがってちゃ、嫁ぐなんて出来ないってラーシャ母上がさ。


「うっわ!?

 さすが罪もない僕らを誘拐するような野蛮国。

 倫理感の欠片もない教育方針だぁ。」


「誤解しないでくれません!?

 変な親子が迷走してただけですから!!

 大体、あなた達まで迷走に乗っかるから、ますますデルマ王女が変な女性になって・・・。」


「しょ、しょ~がないだろっ。

 デルマ王女と一緒にお風呂、入りたかったんだから!!

 乱暴さえしなきゃOKだって、ラーシャ様も言ってたし。」


更にシズカが部下同士で口論を始める有様。

もう何がなんだか。


「あ、さすがにそこは自重してたんだ。

 つまり・・・。」


ゴクッ。


誰かの唾を飲む音が聞こえた瞬間、いきなりカゲトが私を押し倒す。

なんで!?

しかも何の脈略もなく下まで脱がせようとする有様。


「ちょっとーーーー!!??

 さ、さすがにそれは・・・。

 ってかど~して!!」


「ど~しても何も君を喰べてしまいたいからさ。

 言わせんなよ、恥ずかしい。」


んなあっ!?


「い、いやいやっ。

 胸を触られたり、裸を見られるだけならど~でもい~けど!!

 さすがにそれは、それだけはーーーー!!??」


「・・・何をされてもクールな女の子の必死な恥じらい。

 うん。

 いいねっ、いいねっ。」


何が良いの~~~~????


「そもそも私みたいな醜女にそんな事をしたがるなんて、おかしいわーーーー!!!!」


「醜女? 君が?

 この国は美的感覚まで狂ってんの?」


そんな事、知らないわよ~~~~。


「違いますって!!

 ただ姉君達の嫉妬交じりの言葉に騙されてるだけでっ。

 本気でデルマ王女を醜女だなんて思ってる人なんて、誰一人・・・。」


「んな事言ってる場合じゃないだろ!!

 シズカ。

 デルマ王女をお救いせねばっ。」


「あっ!?」


混乱していたシズカ達が我に返り、私を救おうとするも・・・。


「動くな!!

 ノマール共々皆殺しにするぞ?」


「「「あ・・・。」」」


強烈な殺気を向けられ、シズカ達の足が止まる。


「・・・もう僕は取り返しの付かない罪を犯したんだ。

 だったら罪の一つや二つ、増えたところで今更だよな。」


そんな彼女達を無視し、カゲトは泣き笑いを浮かべながら私を脱がそうとし続ける。


「やだーーーー、やだーーーー!!!!」


「デル・・・マ・・・。

 やめて、くれ・・・。」


「良いね、良いね、その反応。

 ああ・・・マジ興奮する~・・・。」


なんかここのところの私、こんな目に合ってばっかり~!!??


誰かーーーー・・・。

助けてーーーー!!!!!!!!





「やめろーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」





こ、この声は!!??


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んで頂き、ありがとうございました。

少しでも「続きが気になる!」「面白い!」と思って頂けたら、評価★★★★★と、ブックマークを頂ければと思います。

どうぞよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ