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第198話 故郷編② 王女の離脱

Side ~聖女~


「さて、と。

 お買い物はこんなところかしらね。」


「は~い。」


チュウオウ国での生活が始まってもう2週間。

私はクロや人間の姿に化けたヴェリアと一緒にお買い物をしていたの。


ホントはテンイも誘おうと思ったけど、剣の素振りの最中だったから止めといたわ。


「エミリー。

 『リザレクション』は習得出来そうですか?」


あ~。

デルマが貸してくれたリザレクションの理論書の話題?

『リザレクション』は死んでさえいなければ、どんな状態からでも完全復活出来る究極の回復魔法よ。


「理屈はわかったけど、私の魔力じゃ難しそうでさぁ・・・。

 つ~か私達しかいない時にそのぶりっ子、辞めてよね。」


「あらあら、うふふ♪」


「?~。」


やっぱヴェリアがぶりっ子だと気色悪いわ~。

正気、彼女は乱暴な口調で話してる方が似合ってる。





「エミリー様!!」





ん?


「あら、どなたです?」


「ん~・・・。

 あっ!!

 あんた、ノマールとかいう地味王子の傍にいた・・・。

 ・・・なんて名前だっけ?」


「シズカです。

 って、我が主を地味扱いしないでくれません!?

 割かし美男子なんですよ!!」


デルマの故郷、ジャクショウ国の使いの者がど~してこんなところに?


「・・・まさかいつまで経っても魔王退治へ行かない私達にケチ付けに来たの?」


「んだと、ゴルァ!!

 てめえら、魔族の敵かっ!?」


「ひっ!??

 ち、ちがっ。」


魔族に仇なす輩だと思い、ヴェリアが魔族の姿に戻りながらシズカを威圧する。

やっぱヴェリアはこういう感じの方がしっくりくるわ~。


「ま~ま~ヴェリア、そう興奮しないの。

 私もテンイも、それにデルマも魔王や魔族に危害を加えようとか思ってないからさ。」


そもそもテンイやデルマ、あとついでにクロも魔王と全然接点無いもの。

全く関わっていない相手に殺意を抱く程、彼らは乱暴な性格じゃない。


私は接点あるし、多少思うところもあるけどね。

でも恨むのは筋違いでしょ~し、何より神喰いよりも恐ろしい相手と争いたくなんかない。


「でもいくらデルマがその気じゃなかったとしてもよっ。

 こいつらは違うんだろ!?」


「ただの妄言だから、相手にしなくて良いって。

 ジャクショウ国の力じゃ魔王どころかはぐれ魔族の集団にだって、勝てっこないでしょ~し。」


元よりジャクショウ国が魔王を倒せとか言ったのは、魔族が暮らす大陸『ブラック・アイランド』へ侵略戦争を仕掛けたかったから。

あの大陸には他じゃ早々手に入らない、珍しい資源とかがたくさんあるらしいからねぇ。


だからチート能力者に突撃させてあわよくば・・・ってのが狙いだったの。

はっきり言って、勝ち目の無いギャンブルに全財産賭けるよ~なものね。

大抵、企みがバレて国ごと滅ぼされるのがオチだし。


「・・・本気で魔王討伐と言う名の侵略戦争を仕掛けたがってたのは王やごく一部の方だけですよ。

 我が主、ノマール王子は自国の防衛や他国への牽制のために転移勇者の力を借りようとしてましたから。」


「どっちにしろ迷惑な話ね。」


初っ端からトラブルが起きなかったら、そういう風に話を持っていくつもりだったのかしら。


「それはともかくエミリー様。

 デルマ様があなたへ話したい事があるそうです。

 どうか私に付いてきてくれませんか?」


「私に?

 デルマが??」



********



ってな訳で私はシズカに付いてったの。


ちなみにヴェリアはクロと一緒に家へ帰したわ。

話がこじれそうな気がしたし。


「あ、エミリー。」


「ど~したのよ?

 デルマ。

 私に話したい事なんて。」


何故か冒険者ギルドの前で待っていたデルマに対し、声を掛ける。

そして彼女は後ろめたそうな顔をしながら、とんでもない事を言い出したの。


「・・・急な話だけどさ。

 私、パーティを抜けて故郷へ帰る事にしたの。」


「えーーーー!!??

 なんでーーーー!!!!」


あんまりにも唐突な話に驚きながら事情を尋ねたところ、ど~やらあのバカ王がまた転移者を召喚したらしくってね。

だけど転移者は言うことを聞かないどころか王を殺し、ジャクショウ国を支配しちゃったんだって。


つ~かあの王様、あの希少な『召喚の転移陣』を2個も持ってたのね。

豚に真珠とは正にこの事だわ。


「ノマール王子を始め、ほとんど全員が反対しました。

 もしも転移者に反抗されたら誰も止められないから、と。

 しかし王子ら反対者の目をかいくぐり、一部の者達と勇者召喚を・・・。」


「何考えてんのよ、ジャクショウ国の王様はっ。

 そんなに魔王を討伐したかったの!?」


「魔王が、と言うより己が何も成し遂げられぬ小国の王である事に我慢ならなかった、と。

 ノマール王子は王に対し、そのように語ってました。」


つまり物欲もあったけどそれ以上にどでかい事をやって、国として、偉大な王として認められたい!!

みたいな動機で2人も異世界人を召喚したって訳かしら?

・・・なんとも下らない動機ねぇ。


なお、あのバカ王が転移者を元の世界へ帰す手段を用意しなかった理由は大体私の予想通りだったみたい。

帰す手段を準備する事自体が困難なのと、初めから死ぬまで利用する気満々だったから不要だと判断したらしくて・・・。

あの王、倫理観もリスク管理も空っぽっつ~か、無計画に犯罪やらかして失敗する小悪党と同じレベルね。


「別にこのまま王女の身分を捨てても構わなかった・・・。

 国に戻れなくても平気だった・・・。

 ・・・なのに国が、故郷が滅ぼされるかもしれないと思うと。」


なるほどねぇ。


でもそれほど故郷に情を抱けるなんて少し羨ましいわ。

私なんか、自分や家族に酷いことした故郷なんぞどうなろ~が心底ど~でもい~もの。

隣のおばちゃんのように仲の良かった人の無事は祈ってるけどさ。


「ま、事情はわかったけどさぁ。

 そ~いう事なら皆で解決に向かえば・・・。」





「ダメっ!!」





えっ!?


「そんな事なんか、出来ない。

 だってジャクショウ国は勇者をこの世界へ無理やり引きずり込んだ元凶・・・。

 彼に助けを求めるだなんて、絶対に出来ない。許されない・・・!!」


「許されないって。

 ま~テンイにジャクショウ国を好きになる理由なんかないけど。」


「それどころか勇者を拉致したジャクショウ国を救うだなんて!!

 そんなの、彼に対する裏切りよ・・・。

 もう私、彼と共にいる資格なんてないわ。」


・・・んなお~げさな。

前にクロとかにも話したけど、デルマったら本気で『ヒガイモウソウ』と言う名の呪いに掛かっちゃってるわねぇ。


「バカね~、あんた。

 テンイがその程度の事であなたに腹を立てるはず、無いじゃない。

 いい加減付き合い長いんだし、それくらい分かるでしょ?」


「!!??

 で・・・でも、私・・・。」


「私から見れば、そもそも罪悪感を抱く必要すらないと思うわ。

 テンイを召喚したのはあなたの父親で、あなた自身は無関係なんでしょ?」


肉親が他者に迷惑を掛け、無関係な身内が罪悪感を抱く・・・。

そういう事だってありえるでしょう。

けれどデルマの場合、ちょっと抱きすぎてるわ。





「・・・確かに無関係かもしれない。

 でも無責任すぎた。

 軽く考えて、本気で止めようとしなかった。」





へ。


「帰す手段くらい、用意した上で召喚するだろうと思ってた。

 父の愚かさを侮りすぎていた・・・。

 そのせいで罪の無い勇者が召喚され、元の世界へ帰れなくなっちゃったの!!」



********



「本当にシズカと二人で行くの?」


「ええ。」


ジャクショウ国の第四王女、デルマが決意を秘めた瞳で語る。

祖国の危機を救うため、私達と離れる決意を。


「・・・大丈夫よ。

 ちゃんとギルドに金貨5000枚で依頼を出したから。

 前金も金貨500枚、ポ~ンと出す契約だし、嘘依頼だなんて思われないはずよ。」


「嘘依頼だと思われなかったとしてもさぁ。

 ランク5の魔法・スキルの使い手なんて早々見つかんないでしょ・・・。」


デルマは自分達だけでチート能力者を倒すだなんて、まず無理だと考えている。

だから冒険者ギルドにクエスト依頼したわ。

・・・都合よく受注者が現れる可能性は低そうだけど。





「エミリー。あなたは勇者の傍にいてあげて。

 あなたやクロ、ヴェリアやアビス様がいれば、きっと彼は大丈夫だから。」


「デルマ・・・。」


「そして彼へ伝えてくれない?

 例えパーティから離れても、必ずあなたを元の世界へ戻す方法は見つけ出すって。

 ・・・よろしくね。」





こうしてデルマはシズカが『鳥寄せ』で召喚した鳥へ乗る。

どうやらシズカは『鳥寄せ』と気配を隠すスキル『隠密』を使って、チュウオウ国までやって来たようね。


「じゃあ行きましょう、シズカ。」


「はい。」


そしてデルマとシズカが空を行く。

大鳥に乗って。



********



「ってな訳でデルマは国へ帰っちゃったわ。」


「なんだって!!??」


その後、すぐに家へ戻りテンイ達に経緯を説明する。


「デルマ・・・お姉ちゃん・・・。」


「ったく、あいつもあれで頑固だよなぁ。」


確かに変なところで頑ななのよねぇ。

あの子ったら。


「王女はそんな理由で・・・。

 そんな理由で、ずっと・・・。」


「ま、あなたとほぼ同じ理由で召喚された転移者がさぁ。

 道を踏み外しまくってるのを聞いて、罪悪感が吹き出ちゃったんでしょ?

 あの子の母親の故郷が転移者に滅ぼされたり、山賊王みたいな存在も見てきた訳だしさ。」


あの子も最近はテンイに対する後ろめたさをほとんど見せなくなったんだけどね。

でも見せなくなっただけで、消えてはいなかったみたい。


「で、これからど~すんの?

 テンイ。」


「・・・。」


私はテンイに問いかける。

けれど意外にも彼は口を開こうとせず、悩み続けている。


「・・・もしかしてジャクショウ国のこと、本気で憎んでるの?

 それとも・・・。」


「違う!!

 別にジャクショウ国なんて好きじゃないけど・・・。

 ・・・の、望みなら俺は・・・。」


あ、彼ったらやっぱりジャクショウ国の事なんて割かしど~でも良かったのね。

私と同じで。


「でも王女、迷惑がらないかな・・・。」


「迷惑がる理由がどこにあんだよ?」


「ヴェリア。

 ・・・。」


・・・何気に見落としてたかもしれない。


デルマだけじゃない。

実はテンイも・・・。





「あたし、デルマお姉ちゃんを助けたい・・・。

 助けに行こうよっ。

 テンイお兄ちゃん!!」


「・・・クロ。」





けれどクロの言葉を聞いて、テンイが口を開く。

そして彼が出した答えは私の予想通りだったの。


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読んで頂き、ありがとうございました。

少しでも「続きが気になる!」「面白い!」と思って頂けたら、評価★★★★★と、ブックマークを頂ければと思います。

どうぞよろしくお願いします。
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