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第18話 初クエスト編④ クエストの裏側

怪しさしかないゴブリン(一体)の討伐依頼を引き受けた勇者一行。


何度も断ろうとしたけど結局、流されるまま魔物の住処まで案内される羽目になった。

虚ろな目付きとなったギルドの受付と共に・・・。



********



「い、いやだ・・・。

 行きたくない!!」


けれど受付がひたすら怯えるせいで、中々魔物の元まで行く事ができない。


「・・・そんなに嫌なら行かなくても良いのよ?

 私達も行くのを止めて、どこか遠くへ旅立つから。」


そんな態度の受付に呆れ、聖女がやる気無さそうに提案する。

も。


「そ、それだけはダメだ・・・。

 おおお、俺に構わず先へ行け!!」


「わかったわ。勇者様、聖女。

 ・・・先へ行く振りして、とっとと逃げましょう。」


「や、やめろぉおおおお!!!!」


どうしてもゴブリン(?)と私達を戦わせたいみたい。

この受付。

しかし自分は案内するのすら嫌だ、と。


こんなやり取りがもう何回も行われている。


「どうしよう?

 ・・・やっぱりこの受付、俺を煽って騙そうとしていただけなのかな。

 だったら王女達の言う通り、さっさと逃げた方が・・・。」


「そ、それだけは。

 それだけはあああ!!」


ムキになっていた勇者でさえ、受付の異様な態度のせいで熱が冷め、逃げ腰になっている。

が、今度は受付の態度が憐れすぎて、見捨てるのを躊躇しているみたい。


「ねえねえ、聖女。

 この手の詐欺依頼って、実際はどんな目に合わされる事が多いの?」


はっきり言って、本当に『ゴブリン一体倒せば、金貨30枚もらえる』とは思えないわ。

だとするなら、騙してまで駆け出し冒険者にさせたかった事って、何なのかしら?


「う~ん、そうねえ。

 よくあるパターンとしては・・・。」



聖女の話によると、この手の嘘吐きクエストにはいくつかのパターンがあるようなの。

今回のケースの場合だと、以下のパターンの可能性が高いらしい。


①討伐数を誤魔化される。


②上位種と戦わせられる。


③単純に討伐するだけでなく、面倒極まりない制約が付いている。


④依頼そのものが完全な嘘で、何やら良からぬ事を企んでいる。



①は非常によくあるケースなんだって。

数体退治するだけだと思ったら、実は数十体の討伐依頼だった・・・とか。

一応、退治する数は一体だってあの受付、言ってたけど。


②に関しても何気に多いみたい。

今回の場合だと、実は上位種であるホブゴブリンやゴブリンキングの討伐依頼だった、とか。

限りなく詐欺に近いけど、拡大解釈をすれば嘘とも言い切れないため、かなり厄介だわ。


ただしゴブリン討伐と言いつつ、別の魔物・・・例えばオーガやサイクロプスの討伐依頼だった、みたいなケースはほとんど無いみたい。

あからさまな嘘依頼は冒険者ギルドの責任問題になるからね。


③もそれなりに多いそうよ。

例えば、わがままな貴族が引っ付いてくるとか、素材として必要だから目を傷つけずに倒せ!! とか。

これも予め説明すべき事柄なんだけど、拒否されるのを嫌がって、クエスト受注後に後出しで言われる事も少なくないようね。



①~③に関しては、クエスト受注でありがちらしいの。

性質の悪い依頼者・ギルド関係者は都合の悪い事を誤魔化しつつ、けどギリギリ嘘や詐欺とは言えないラインを狙いたがる。

そうして自分達には都合が良い、けど冒険者には不利益な仕事を押し付けようとする。


正直、悪しき風潮でしかないわ。

でもね。これくらいなら騙される奴が悪い、冒険者は自己責任だから・・・で片付けられてしまうそうなの。

残念な事に。


私だって嘘偽りない依頼で失敗するなら、自己責任だと思うけどね。



ちなみに④はまずありえないって。

いくら何でも依頼内容が完全な嘘だった場合、その冒険者ギルドの信用はガタ落ち。

あまりに悪質な場合は依頼人共々、犯罪者としてお役人に裁かれるケースだってありうるとか。


・・・だけど④も絶対無いとは言い切れない上、上記の中では一番危険なケースよ。

犯罪の片棒を担がされたり、命に関わる場合だってあるのだから。

さすがに④だけは無い、と信じたい所だけど。



と、なると・・・。


「あの依頼人は討伐に特別な条件を付けなかったわ。

 ・・・じゃあやっぱり、単純に数が多いとか、相手が上位種ってパターンなのかしら?

 例えば何十体ものゴブリンキングと戦わされる、とか。」


一応、それも『ゴブリンの討伐依頼』には違いない。

だったら受付のあの怯えようも納得できる。

何十体ものゴブリンキングの討伐なんて、中級冒険者でも失敗しかねないもの。


ただ駆け出し冒険者を騙し、そんな事をさせた所で失敗するのはわかりきっているはず。

そこがちょっと引っ掛かるんだけど・・・。


「ゴブリンキング・・・かぁ。

 まっその程度の相手なら、私の防御魔法で皆を守れるわ。

 ・・・倒すのは無理だけど。」


聖女は防御は得意でも、攻撃は苦手だものねぇ。

とは言え、皆を守れるだけでも頼もしいわ。


「じゃあ、嘘依頼の正体を見破ってから、とっとと退散しましょう。

 文句を付けるようなら、お役人に訴えても良いしね。」


・・・しかし残念ながら、曖昧な表現によるすれ違いを訴えたところで、罰させるのは難しいでしょう。

ただそれでも『違約金を払え!!』なんて要求は突っぱねられるはず。

紛らわしい表現で冒険者を誤解させたのは事実だからね。



「あ、あの先が魔物の住処だ。

 俺はもう、帰るからな!!」



あっ!!

受付が逃げた?


と、思ったのも束の間。

勇者が受付の腕を掴み、逃さまいとする。


「は、離せ。この・・・。

 こいつ、優男の癖に意外と力強ぇ!!」


「いや。だってあんまりにも怪しすぎて、つい。

 ・・・一体、君達は何を企んでいるんだい?」


「何も企んでない・・・。

 何も企んでないから!!」


泣き叫びながらそんな風に言われても、説得力が無いわよ。


「なんなのよ、もう・・・。

 やっぱり相手はただのゴブリンじゃなくて、ゴブリンキング?

 数も一体だけじゃなくて、何十体いるとか??


 それくらいなら、私の防御魔法で守れるわよ。

 ・・・あんたまで守るのは不本意だけど。」


そうね。

聖女ならゴブリンキングの群れの襲撃くらい、軽く防げるはず。


私も正直な話、受付達が嘘を付いていると言っても、せいぜいが上位種の群れと戦わせる程度だと考えていた。

普通の駆け出し冒険者であれば命に関わる嘘だけど、幸いな事に私や勇者には聖女が付いている。

だからなりふり構わず逃げよう、とまでは思わなかった。


・・・だけど、そんな私の甘い考えを嘲笑うかのように、受付が叫ぶ。





「そ、そんなんじゃねぇ。

 ここにいるのは、そんなくだらない雑魚なんかじゃねぇんだ!!

 だから早く・・・早く俺を帰してくれ!!!!」





え。





「あ、あなた。何を言ってるの?

 ゴブリンキングの群れをくだらないって・・・。

 中級者パーティさえ、全滅させるような連中を雑魚って!!」





お、おかしい・・・。

おかしすぎる!!


これはどう考えても、騙して詐欺ろう・・・程度の依頼だとは思えない。

この依頼にはもっと、もっと得体の知れない何かがある!!



「勇者、聖女!!

 今回の依頼、私達が考えているような、甘い依頼じゃなかった。


 ・・・もうなりふり構ってなんかいられない。

 早く逃げましょう!!」


「ど、どうしたんだい。王女?

 そんなに焦って・・・。」



シュッ!!



えっ?

細長くて黒い、影・・・??



「サード・シールド!!」



バキャ!!



咄嗟に聖女がランク3の盾魔法を使い、謎の襲撃を防ぐ。

けれどただの1回、攻撃を弾いただけで盾はヒビだらけとなり、砕け散ってしまった!!



「噓でしょ!?

 ランク3の防御魔法が・・・って!!

 あ、あれは・・・。」


「そんなっ!?」


「ひゃ、ひゃああ・・・。」





「ぎしゃああああああああああああああああ!!!!」





巨大な胴体に3つの首を持つ大蛇・・・。


まさか、ヒドラ!!

ヒドラなの!?


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