第197話 故郷編① 二人目の転移者
最序盤に決めた目的地へ辿り着くのに200話近くも掛かってるのはさすがにど~かと思いましたw
なのでここからは一気に伏線を消化し、どんどん話を進めていくよう頑張ります。
よろしくお願いします。
様々な建物に囲まれながら、数多の人々が道を行く。
剣や杖などを持った冒険者パーティが、ギルドの依頼書らしきものを眺めながら、笑顔で話し合っている。
あちらこちらに立っている屋台から香ばしい匂いが放たれ、人間、獣人問わず美味しそうに料理を食べている。
「・・・とうとう来たんだね。」
「・・・ええ。
とうとう辿り着いたのです。
チュウオウ国へ。」
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私は元ジャクショウ国の第四王女、デルマ。
勇者のハーレム要員として、旅を続けているの。
そしてついに目的地であるチュウオウ国へと辿り着いたわ。
「わ~・・・。
おっきな国だね~。」
「うん。
しっかしもう4~5年くらい、旅を続けた気分だよ。」
「・・・そんなに経ってませんから。
せいぜい1~2ヶ月程ですから。」
そんな短期間でどれだけトラブルに巻き込まれたんだと、呆れ果てちゃうけれど。
「ここから私達の新しい生活が始まるのね~。」
「楽しみですわ。
うふふ。」
エミリーと大和撫子風味の美少女もチュウオウ国の雰囲気を楽しんでいる。
・・・・・・。
「「「誰!!??」」」
「わかんねぇの!?
薄情すぎるわっ。」
なんで知らない女性が私達のパーティに紛れ込んでるのかしら?
「皆、何言ってるの~?
ずっと一緒だったじゃ~ん。」
「ずっと一緒だった?
・・・あ、そ~か。
ヴェリアだ、この子。」
「あ。」
「あ~・・・。
そ~いやあなた、人間に化けれるんだったわねぇ。
すっかり忘れてたわ。」
「・・・化けるも何も俺、半分は人間だからな。」
ヴェリアは世にも珍しい人間と魔族のハーフよ。
でも最近、ず~っと魔族の姿だったからねぇ。
人間の姿がこんな感じだった事、すっかり忘れてたわ。
それはともかく、旅の最中はトラブルだらけで肝が冷えるような出来事も1度や2度じゃなかった。
けれどこのチュウオウ国はこの世界有数の大国ながら、治安も比較的良好で平和な国よ。
だから、ね。
「勇者様。
これからは別行動をさせて頂けますでしょうか?
エミリー、クロ、ヴェリア。勇者の事、よろしくね。」
と、伝えたの。
「「「へっ?」」」
「なんでっ!?」
「なんでって・・・。
そろそろ本格的にあなたが元の世界へ戻るための方法、探さないと・・・。
それが私の役目なのですから。」
一応、今までも本屋だの図書館だのに立ち寄って探してたんだけどね。
「あの日『あの悪夢』を見てから、ダラダラしてちゃダメ。
早く勇者を元の世界へ戻す方法を見つけなきゃ!!
・・・って気持ちが強くなっちゃったので。」
「「「「・・・・・・・・・・・・。」」」」
あれ?
ど~して皆、真面目な顔して黙っちゃったのかしら?
夢の中で神喰いとかいう化け物に襲われた時の事を話してるだけなのに。
「それに勇者様は強くなりました。
そしてうっかり屋さんなところはあれど、力に溺れるような方でない事もとっくに分かっています。
油断こそ禁物ですが、それでもチート能力を暴走させる事はまずないでしょう。」
これは掛け値なしの本音。
勇者は様々な経験を得て、強くなった。
それに彼にはエミリー、クロ、ヴェリア、アビス様・・・。
心から信頼出来る仲間が一緒よ。
だからもう私は彼の傍から離れて、元の世界へ帰す事だけに専念しても平気。
・・・何故か少し寂しい気持ちになったけど、そう。
平気なのよ。
「王女・・・。
でも。」
「・・・ま、別行動とは言ってもテンイの元から離れる訳じゃないんでしょ?
ただ昼間は元の世界へ戻す方法を探すってだけでしょ?」
「もちろんよ。エミリー。
だって勇者の元から離れたら、仮に元の世界へ戻す方法を見つけてもそれを伝えに行くの、大変でしょ?」
「そ、そっか・・・。
そうだよね!!」
安心しつつも、少し寂しそうにも見える笑顔で話す勇者。
「けれどまずは住む場所を探さなくちゃですね。
お金もたくさんある事ですし、勇者様が充実した日々を過ごせるようなところを見つけましょう。」
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こうして私達のチュウオウ国での新たな生活が始まった。
勇者はエミリー達と一緒にギルドでクエストを受注したり、有り余る金で購入した豪邸でまったりしたり。
私は彼らと行動を別にし、本屋だの図書館だので勇者を元の世界へ帰す方法を探す日々よ。
そうそう・・・その最中、幻の回復魔法『リザレクション』に関する本を見つけちゃったもんで、つい購入したの。
私も報酬とかを山分けしてもらってる都合、お金いっぱい持ってるからね。
ま、今はエミリーに貸してるんだけどさ。せっかくだから。
どこか物足りない気分を振り払いつつ私は一人、チュウオウ国を歩き続けていたわ。
・・・そんな中。
「デルマ王女!!」
「きゃっ!?」
なんか急に声を掛けられたの。
何、何・・・って!!
「あなた、もしかしてシズカ!?」
「はい。そうです。
・・・やっとお会い出来た。」
シズカはノマール兄上の部下よ。
少し前に出会ったNINYAほどじゃないにせよ、諜報向けの魔法・スキルをいくつも使える優秀な女性なの。
「どうしてチュウオウ国にあなたが?
・・・もしかして勇者やエミリーをどうこうするために!?」
それくらいしか理由は思いつかないけれど、絶対に止めた方が良いでしょう。
今は勇者もエミリーもジャクショウ国へ害を為そうとか考えてないっぽいけどさぁ。
下手にちょっかい掛けたら、敵対心を持たれる可能性も0じゃない。
それでもエミリーは鬱陶しい事された程度の感覚で過剰に恨んでる感じじゃないけど、勇者なんてジャクショウ国のせいでこの世界へ無理矢理連れて来られた訳だし。
いくら彼が温厚でも害を加えようとするのは避けた方が良いわ。
「・・・・・・。
テンイ様達には力を貸して欲しいのです。
ジャクショウ国を救うために。」
「いくらお人よしの勇者でも、ジャクショウ国の頼みなんか引き受けてくれるかしら・・・?
・・・いや、それより『救うため』にってどういう意味なの!?」
なんだか嫌な予感がして、ついシズカへ聞き返す。
「王は・・・殺されました!!
あの方自身が呼んだ、二人目の転移者の手によって。」
「え・・・。
う、そ・・・。」
父上が・・・殺された!?
「そして今、王が召喚した転移者によってジャクショウ国は支配されています!!
デルマ王女・・・。
どうか、どうかジャクショウ国をお救い下さい!!」