第184話 日の女神編⑧ 終わりの始まり
「で、結局ど~すんだ?
この日の女神様。」
あ。
どうにかこうにか日の女神様(仮)の救出に成功した転移勇者一行。
けれどヴェリアに聞かれるまで、助けた後ど~するかなんて全然考えてなかったの。
「・・・日の女神アイア様はわしが責任を持って、連れて帰ろう。」
「え"!??
ちょっとそんな事喋ったら、いろんな意味でダメですよ、アーク様。
いくら日の女神様にそっくりだからと、人攫いのよ~な真似事は・・・。」
「デルマ、貴様!!
まだこの方を本物の日の女神様と信じぬか!?
貴様が封印術を解くのに一役買ってなければ、怒りに任せ、拳を叩き付けてたところよっ。」
ちょっ、セイン!??
怖い、怖い、怖い!!
「お~お~、気に入らない相手には女ですら容赦無いのですか・・・。
相変わらず兄上は弱者への暴力がお好きのようで、その傲慢な心は尊敬に値しますよ♪
・・・暴力の是非はさておき、俺も少しくらい受け入れろよこいつと思わなくもないですが。」
「どうやら彼女は相当思い込みが激しいようですからね。
テンイ達の苦労が伺えます。」
「そ~だねぇ。
苦労とまではいかないけど、たま~に扱いに困るんだよ・・・。
王女のそ~いう性格ってさ・・・。」
ユウもマイケルも勇者も酷い!!
エミリー達もうんうん頷かないでっ。
「『神の信者』だなんて、怪しい人達を疑いたくなる気持ちはよ~く分かるけどさぁ。
王女も少しくらい、日の女神様やマイケル達を信じてあげようよ。
乱暴そ~なのもいるけど、大半は悪い人達じゃないって。
ほら、怪しい石や壺なんかを高額で売ろうとしたりしないじゃん?」
「そ~いやマイケル達って、神の信者の割に金を巻き上げたり、洗脳に励んだりはしないわねぇ。
この手の輩にしては相当、善良な方だわ。」
「う・・・う~ん。
確かにあの中で近づかない方が良さそうな信者は、すぐ暴力を振るおうとするトールやセインくらいだし・・・。
そう考えると、信用に値する方なのかしら・・・。」
そのトールやセインが納得いかなさそ~に睨んでくるのを尻目に私は思い悩む。
「てめ~ら、善良判定のハードルがひっくいなぁ。
・・・でももうめんどくせ~から、日の女神様っつ~事で受け入れろよ~。
只者じゃないのは間違いね~んだしよ~。」
「ま、あんまり疑い続けても話が進まないしね。
搾取される訳じゃなさそ~だし、とりあえずあの方は日の女神様だって思う事にするわ。」
「もう少し重々しい雰囲気を持って信じて頂きたいのですが・・・。」
マイケルったら、そんなめんどくさい事言わないで欲しいんだけどなぁ。
・・・って!!
「私が神様を信じるかど~かなんて、ど~でも良くて!!
そんな堂々と日の女神様を連れ帰る、なんて言っちゃマズいですよ。
だって『彼』が黙って・・・。」
「もう遅いんだよ!!
デルマ。」
ゲゲっ!!
しまった!!
「タケル!?」
「そ~いやタケルってば、日の女神様と戦いたがってたんだっけ?
すっかり忘れてたわ。」
「1~2日くらいなら待ってやっても良かったんだがよぉ。
さすがにそのまま逃がす訳にゃ、いかね~んだよ!!」
タケルが吼えると同時になんと日の女神様を匿っていた結界が消失したの!!
・・・えーーーー!!??
んな常識外れなぁ!?
「一吠えで結界を打ち破った!!
ねぇ、王女!?
結界って叫ぶだけで打ち破れるものなの・・・?」
「んなまさか・・・。
あ。」
つい驚いて『秘匿の魔法陣』を確認して見たところ、衝撃の事実が発覚!!
「どうしたのです!?」
「・・・ど~やら単に魔法陣の魔力切れだったみたい。
タケルは関係ないわ。」
「あ。
この魔法陣、もう太古の遺産と言って差し支えない程度には古い魔法具でしたからね。」
どうやらたまたまタケルが一吠えしたタイミングで、魔法具の魔力が切れちゃったようね。
なんてタイムリーな。
「そもそも魔法具に寿命とかあるの!?」
「そりゃありますよ。
勇者様の世界にだって、永遠に使える道具なんて存在しないでしょう?」
「ま~そ~だけど。」
魔法具に限らず、道具なんていつかは使えなくなるのが常識だもの。
それはさておき、タケルったら相変わらず好戦的で本当に困ったものね。
「それより乱暴は止めるんだ、タケルっ。
どうしても日の女神様を傷付けるつもりなら、この俺が相手だ・・・。
今日こそ、お前に勝つ!!」
「・・・ハッ、かっこつけやがって。
ま、ど~せ今日はあの女神と戦えそうにね~しなっ。」
勇者ったらタケルが関わると、普段以上に好戦的になるわねぇ。
タケルも戦う気満々だし。
「・・・クロ。
念のため、周りに私達以外、誰もいないか探ってくれないかしら?
巻き添えにする訳にもいかないし・・・。」
「わかった~。」
万一、無関係な誰かを巻き添えにしたら、お互い嫌な思いをするだけだもの。
「大丈夫だよ~・・・。
あたし達以外、誰もいないみた~い。
・・・・・・・・・・・・。
魔物や動物さんなんかもいないね・・・。」
「・・・そ~いや、ちっとも見かけなかったわねぇ。」
ここいら一帯は本当に寂れている。
だから人が全くいなかったとしても、不思議じゃない。
けれど魔物や動物すら全くいないだなんて。
なんで・・・?
「・・・・・・・・・・・・。
えっ!??
・・・あ、ああぁ・・・・・・。」
クロ?
「や~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!」
クロ!!??
「「「「「「「「!!!!????」」」」」」」」
急に大声で喚き散らすクロにマイケル達やアーク様のみならず、あのタケルやセツナでさえ、驚いている。
「エミリー!!
お願い!!」
「OK!!
フォース・バリア!!」
だけどクロとの付き合いが長い私、エミリー、勇者には彼女が叫んだ理由がすぐにわかった。
だからエミリーはランク4の防御魔法でバリアを貼り、勇者もタケルを放置し、周りを警戒している。
「「あっ!!」」
そしてそれなりにクロの事をよく知っているヴェリア、アビス様が私達に続いて何かに気付く。
他の人達は何が起こってるかもわからず、呆然とするばかり。
「・・・おいおい、クロ。
お前がそんな大声で悲鳴を上げるくらい、ヤベ~や・・・。」
ヴェリアは最後まで喋る事が出来なかった。
喋り終わる前に大音量と共に『フォース・バリア』が壊れてしまったから。