第183話 日の女神編⑦ 女神様の介護
強力な封印術によりクリスタルに閉じ込められていた日の女神アイア様。
だけど勇者とアビス様の活躍により、封印を解く事に成功したの。
「・・・・・・。」
でも長きに渡る封印により、未だ目を覚まされていない。
・・・と言うより、本当に生きてるのかしら?
「かわいそ~だから、回復魔法でも掛けてあげましょ~か。」
さすがに心配だったのか、エミリーがお礼を要求する事も忘れ、日の女神様の元へ向かう。
「聖女エミリー。
頼む・・・。」
「はい、は~い。
・・・ヒール!!」
マイケルから日の女神様(仮)を託されたエミリーが回復魔法を使用。
「っ!?」
「「「「「「「「「日の女神様!!!!」」」」」」」」」
その結果、無反応だった日の女神様がわずかながら意識を取り戻したの。
けれど。
「ん・・・?
・・・・・・・・・・・・・・。」
相当弱ってるのもあってか、いつもよりも遥かに長い時間、回復魔法を掛け続けるエミリー。
そして・・・。
「・・・う、・・・う。
あなた・・・達・・・。」
「「「「「「「「日の女神様がお気づきになられたぞーーーーーーーー!!!!!!!!」」」」」」」」
どうにか意識を取り戻す程度にまでは回復したわ。
しかしエミリーはあれほど回復に手間取った事に驚愕していたの。
「・・・アビス様の時と同じ・・・。
いえ、生物としての格はそれ以上だった・・・。
・・・・・・まさか彼女、本物の・・・日の女神アイア様?」
回復魔法はアビス様のよ~な、人間とは桁違いの生命力を誇る相手には全快までに時間が掛かるの。
・・・でもだからって、あの人が本物の日の女神様だなんてありえないわよ。
例え、勇者がトラブルからヤンデレの如く、愛されてたとしても、ありえない存在を生み出す力がある訳じゃないからねぇ。
「あっ・・・?」
「日の女神様!??
・・・まだかなり弱っているようですね。
聖女エミリー、もっと回復させてあげられませんか?」
「無理よ~。
よっぽど封印された期間が長かったのか、だいぶお疲れって感じだもの~。
とりあえず命に別状はないから、あとは十分な食事や休養を取るしかないわ。」
「そう・・・です、か。」
何時ぞやの魔族の子供の時もそ~だけど、『ヒール』は決して完全無欠の魔法じゃない。
まともな食事や睡眠を取ってなければ、どんなに頑張ってもその効果は弱まってしまうの。
「だが聖女エミリー。
『リザレクション』なら、あるいは・・・。」
一応、最強の回復魔法『リザレクション』であれば、『死』以外からはどんな状況でも完全に回復するわ。
でもね。
「・・・無茶言わないでよ、アーク様ったら。
使える訳、ないじゃない。
そんな究極魔法・・・。」
「・・・むうっ。
エミリーよ、どうやらまだまだ修行が足りぬようだな。
如何に才を秘めれど、それに足る研鑽を積まぬ者が多いのは嘆かわしい事よ。」
「人を努力不足みたいに言わないでちょ~だい!!
無茶ぶりされたって、出来ないものは出来ないのっ。」
『リザレクション』の修得難易度は異次元なレベルで高く、本当に使い手が実在したかすら、怪しいくらいだものね。
「自らの可能性を信じようとしないのも、人間の愚かしきところよ。
そなたなら・・・。」
「・・・父上。
どの道、かの魔法は一朝一夕で修得出来るようなものではない。
無いものねだりなどしても、仕方なかろう。」
「・・・・・・。」
ま~確かにエミリーの才能は歴代聖女の中でも1、2を争うかもしれない。
でも使い手すら見当たらない魔法を即座に修得するなんて、勇者にすら出来ない芸当だものねぇ。
「ヒール!!
・・・発動しない。
やっぱ俺じゃ使えないかぁ。」
日の女神様の回復を望んでか、いきなり勇者が回復魔法を試みるも、全然何も起こらない。
「そりゃ使えないですよ、勇者様。
回復魔法は特殊な才能を必要とする魔法です。
いくらあなたでも修得する事は出来ないでしょう。」
例の本に書かれている『スキルコピー』なんかを持ってれば、覚えられるかもしれないけどね。
だけど勇者は見様見真似・・・彼自身の才覚で魔法やスキルを即時修得しているだけだもの。
感覚的には武術なんかで相手の技を見て覚えるのと、ほとんど同じ行為だと思うわ。
「じゃ日の女神様にご飯、あげればい~のかな~?
そしたら元気になる~?」
「そうね。
どちらにせよ、すぐにでも食事を与えた方が良いわ。」
「じゃ、この前ヒデヨシから貰った果物をあげようか。」
少し前、農業チートの使い手であるヒデヨシを助けた時に貰ったものね。
「そ~ですね。
なんかあれ、食べると元気が湧いてきますし、良いチョイスだと思います。」
「よ~し。
じゃ、さっそく・・・。」
勇者がアイテム・ボックスの中から件の果物を出し、日の女神様の元へ向かう。
「・・・・・・・・・・・・。
あなた・・・は・・・。」
「これをどうぞ。
ア・・・じゃなくて、日の女神様。
食べると元気が出ますよ。」
どこか戸惑いながらも勇者から果物を受け取り、口にする日の女神様。
「!!!!
・・・美味しい。力が湧いてくる。
それにどこか懐かしい感じがします・・・。」
「気に入って貰えて良かったです。
これはヒデヨシと言う農業チートの使い手から頂いたものなんですよ。」
「そう・・・でした、か。」
笑顔の勇者を眩しそうな表情で見つめながらも、果物を食べ続ける。
「・・・長きに渡る封印で意識が消えつつある中、感じました。
類稀なる美貌を持つ少女に導かれ、成長したアビスと共に希望の光を放つテンイ、あなたの姿を・・・。
この度は封印から解いて頂き、本当にありがとうございました。」
「!!
い、いや・・・い~んですよっ。
困っている方に手を差し伸べるなんて、当たり前の事ですから。
・・・デヘヘ。」
「顔がだらしないわよ、テンイ。」
呆れながら突っ込むエミリーだけど、仮だとしても日の女神様程の方からお礼を言われたらさぁ。
男性なら顔がだらしなくなるくらい、しょ~がないわよね。
「聖女エミリー、アビス、アークもテンイと共に私を助けてくれて、ありがとうございます。
それにマイケル達、あなたにも随分長き間、苦労を掛けましたね。
改めて感謝致します。」
「めっ、滅相もございません・・・。
あなた方がいたからこそ、私達は!!」
しかしマイケル達ったら、その美貌に見惚れすらせず、心の底から崇拝しちゃっているところが筋金入りねぇ。
ま~でも、神様よりもお金に心奪われる神々の信者も目立つ中、その一途さは尊敬すべきかも。
「で、結局ど~すんだ?
この日の女神様。」
あ。