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第182話 日の女神編⑥ 勇者と伝説竜の絆

「フィフス・クリスタル・リリース!!

 ・・・156!!」





アーク様が封印されし日の女神アイア様(仮)を救うため、魔法を発動させる。

その結果、クリスタルの目の前に複雑怪奇な魔法陣が描かれ、輝き始めたわ。


「わ~・・・、すご~い。

 ね~デルマお姉ちゃん。

 あの魔法で日の女神様の封印、解けるの~?」


「上手くいけば、ね。

 『フィフス・クリスタル・リリース』は封印術を解くための魔法なの。」


それもランク5の非常に高度な魔法よ。


「・・・やっぱりそうか。

 これまで見た魔法の中でも特に難しそうだね。

 で、156ってのはなんだい?」


「勇者様の世界で言う、暗証番号みたいなものですかね。

 この番号が合ってないと、封印を解除出来ないのですよ。」


「異世界の封印術や解除術にそんな仕組みがあるんだ・・・。

 クレジットカードじゃあるまいし、違和感が凄いなぁ。」


そ~いうものかしら。

だけど使用する魔法が合っていたとしても、それだけで封印術は解除出来ない。


「・・・ぐ、う、う。」


強力な封印術を解くためには、それに見合うだけの魔力が必要だから。

先代伝説竜のアーク様の魔法ですら、反応こそあれど、日の女神様の封印を解けずにいる。


いくらなんでもあの封印、あまりに強靭すぎないかしら・・・。

まさか本当に神喰い伝説は・・・。

・・・いやいや、そんなまさか。


「・・・はあっ、はあっ、はあっ。

 わしの力でも、及ばぬとは。

 穢れた化物による封印術とは言え、さすがは先代日の神様のお力よ!!」


「父上!!

 もう年なのだから、無理はしない方が良い。」


「アビス・・・。

 だがっ。」


「代わりに我が日の女神様の封印を解いてみせる。

 だから父上は休んでくれ。」


・・・どうやらアビス様もアーク様と同じ魔法が使えるようね。

でも。


「ん~・・・。

 だけど大丈夫かしら?」


「だなぁ。

 2竜ともそこまで魔力の大きさ、変わんなさそ~だしなぁ。

 ま、どっちもスゲェんだけど、それ以上にあの封印術が強力すぎるっつ~か。」


エミリーとヴェリアの分析通り、お二方の実力にそこまで大きな差があるようには見えないのよ。


「あ~、めんどくせ~な~。

 もう直接、クリスタルをぶっ壊そ~ぜ!!」


「「「「「「「「「止めろっ、このバカ!!!!」」」」」」」」


「冗談だっつ~の。

 マジになんなよ。」


だからといって、強引に封印の破壊を試みるのも悪手なの。

防衛機能が働いて反撃されたり、封印された者に大きな負荷が掛かる事も多いからねぇ。

高度な封印術はそういう仕組みを入れて、強引な封印解除を阻止してるわ。


「・・・よしっ。

 じゃあ俺が!!」


「ダメですって、勇者様。

 先ほどのアーク様の魔法は極めて難易度が高く、いくらあなたでも一目で成功させられるとは限りません。

 そしてあの手の魔法は失敗すると、使用者や封印された方が被害を受ける事も多いのです。」


「マジか!?

 クソっ。」


勇者の世界で例えるなら、暗証番号を間違え続けるとペナルティを受けちゃうようなものね。


「ねえっ、なんとかならないの?

 王女・・・。」


「う~ん・・・。」


素直にアビス様に頼るだけじゃ、アーク様と同じ結果になりかねないしねぇ。

あの封印術を解くにはもっと強い魔力が必要で・・・。


「あ。」


「?・・・。

 なんかいい案でも思い付いたの?

 デルマ。」


「・・・ん~。

 でもアビス様の体に良くなさそうだし・・・。」


「構わぬ。

 思い付いた事があるなら、話してくれ。

 デルマ。」


アビス様はそう言うけど、あんまり話したくないわぁ。

・・・だけど周りの視線が、ねぇ。

しょ~がない。


「アビス様は勇者様と契約しています。

 仮にアビス様の魔力が足らずとも、勇者様が力を分け与える事で解決するかと。」


「あっ!?

 そ~いや前に言ってたっけ・・・。

 そんな事。」


勇者とアビス様は正式な契約により、特別な繋がりで結ばれている。

故に勇者がアビス様に力を分け与える、逆にアビス様から勇者が力を授かる、なんて芸当も可能よ。


「でもそれって、アビスの体に悪いの?」


「通常であれば、さほど負担は強くないと聞きます。

 が、勇者様は力が強すぎますから。

 アビス様のお体に大きな負担が掛かる可能性も低くありません。」


「・・・。」


私の指摘に勇者が黙り込む。

それどころか加減を間違えると、命の危機に見舞われるかもしれないの。

いくらなんでもそんな方法を良しとする訳には・・・。


「心配せずとも良い。

 テンイよ。

 どうか我に力を貸して欲しい。」


「アビス!?

 でも・・・。」


「・・・我が幼き頃、日の女神様にとても可愛がられたものだ。

 その時の温もりは今でも大切な思い出となっている・・・。


 我はあの方を救いたい!!」


「・・・・・・。

 ああ、わかった!!

 俺、アビスに力を貸すよ。」


勇者!?


「ちょっとお待ちを!!

 そう軽々と決められては・・・。」


「案ずるでない、デルマよ。

 我はエンシェントドラゴン、アビス。

 そうあっけなく潰れるような器ではないぞ?」


茶目っ気たっぷりながらも、アビス様から強い意志を感じる。

日の女神様を救わんとする意志を感じる。

その意志を感じ取り、勇者も力を貸したいと願っている。


・・・大切な誰かを救いたい。

・・・大切な誰かの力になりたい。

そんな尊い思いからくる決意は私なんかじゃ止められない、か。


「まったく、仕方の無い方々ですね・・・。

 わかりました。しかし勇者様。

 力を分け与える際、感情を高ぶらせてはいけませんよ。

 極力心を静め、少しずつ力を与えるよう、意識して下さい。」


「任せといて!!

 俺はずっと剣道に打ち込んできたんだ。

 精神統一なんて、お手のものさっ。」


だ・・・大丈夫かしら?

感情ぶれぶれの勇者に精神統一だなんて、ちっとも似合わないんだけど。


まあ以前と比べると彼もかなり心が強くなってるし、ここは信じてみるしかないようね。


「・・・という訳だ。

 父上よ、後は我に任せて欲しい。」


「アビス・・・。

 わかった。

 必ず日の女神様をお救いするのだぞ。」


そしてアーク様に代わり、アビス様が封印を解除すべく、魔力を集中させる。


「良いですか、勇者様。

 力を分け与えるタイミングは大切です。

 合図は私が行いますから、落ち着いて対応して下さいね。」


「了解!!

 深呼吸、深呼吸、と・・・。」


「では行くぞ!!

 フィフス・クリスタル・リリース!!

 ・・・156!!」


アビス様が日の女神様の封印を解くため、アーク様と同じ魔法を発動させる。

先程と同じようにクリスタルの目の前に複雑怪奇な魔法陣が描かれ、輝き始める。


「・・・ぐっ、うっ!?

 なんと強靭な封印なのだ?」


どうやらアビス様よりアーク様の方がやや力が強いようだけど、それでもまだ封印を解くには至らない。

ここが力の分け与え時のようね。


「今です!!

 勇者様。」


「おうっ。」


勇者がアビス様へ向かって手を伸ばす。

私の注意をきちんと守り、少しずつ力を分け与えようと心掛けてるのがわかる。


「ホ、ホントに加減しているのか!?

 あれ・・・。」


なのにど~して勇者の手から、眩いばかりの強烈なエネルギーが放出されているのかしら?

相当注意深く力を放出しているにも関わらず、あ~なんだからやっぱり彼はとんでもない転移勇者ね。


「!!??

 な・・・なんと凄まじい魔力か!?

 しかしこれなら・・・!!」


勇者に力を授けられた事で、魔法陣の輝きが倍以上に膨れ上がる。

アビス様と勇者が力を合わせる事で、クリスタルがひび割れていく!!


「こ・・・これは・・・。

 噂通り、いえ。

 噂以上の力です!!」


「さっすがテンイじゃね~か。

 それでこそぶっ倒しがいがあるぜ!!」


彼の常識外れな力に皆、驚愕してるわね。





そしてついにクリスタルが強烈な破裂音と共に砕け散っていったの。





「日の女神様!!」


クリスタルが壊れ、地面に打ち付けられそうになった日の女神様をマイケルが慌てて受け止める。


「やったね!!

 アビス。」


「はぁ、はぁ・・・。

 これも其方のおかげだ、テンイ。

 礼を言うぞ!!」


さすがのアビス様もそれなりにお疲れのようだけど、過度な負担なんかは掛かってないよ~ね。

一方、勇者はあれほど力を分け与えたにも関わらず、ぴんぴんしているわ。


こうして私達は日の女神アイア様(仮)をお救いする事に成功したの。





「・・・なんと凄まじき力。

 我が子が契約し、転移勇者テンイ。

 奴は本当に世界の救世主・・・なのか!?」


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読んで頂き、ありがとうございました。

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