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第178話 日の女神編② 封印されし女神様?

「日の女神、アイア様!?」





謎の吟遊詩人マイケルに導かれ、謎の祭壇へ足を踏み入れる転移勇者一行。

そこで見たものはクリスタルの中に閉じ込められていた、この世のものとは思えない程の美人だったわ。


「め・・・女神様!??」


そう・・・。

日を司る女神、アイア様・・・。


「・・・の、熱狂的な信者の方ですね。」


「「「「「「「「へ?」」」」」」」」


「しかしなんて凄いクオリティかしら?

 一瞬、本物の日の女神様かと思っちゃった。」


私は何故か呆気に取られている勇者達を尻目に、信者の方の日の女神様の再現度に感動すら覚えていたの。


「・・・ねえ、王女。

 この人って、女神様じゃなくてただの信者なの?

 つ~かこの世界って、神様なんていたの??」


「そ~言えば、勇者様にその辺の話をした事はありませんでしたか。

 え~っとですね・・・。」


この世界では『神族』と呼ばれる尊き存在が、世界を守護していると伝えられている。

その中でも特別、強い力を持つ者は『神』として崇められているの。

現在では8つの属性にちなんで、日、月、火、水、木、金、土、無を司る神がいるのだとか。


「更に8大神を含む、全ての神族の・・・。

 いえ、この世界における全ての生物の生みの親と言うべき神が存在するという文献もありますが・・・。

 ま、これは都市伝説みたいなものですかね。」


「なるほどねぇ。

 でもならなんで、王女はあの女性を速攻で信者扱いしたの?

 ホントの女神様かもしれないじゃん。」


「・・・そんなはずありませんよ。

 あのですね、勇者様。

 この世界に神様が存在する可能性は、あなたの世界に神様が存在する可能性と大差ないのですから。」


「えっ、そうなんだ!!

 つまりただのおとぎ話みたいなものって事ね。

 がっかりだよ・・・。」


例の本にも書かれてたけど、異世界人(日本人)は自分達の世界に神なんかいないと思ってる人ばかりよ。

その割に異なる世界へ来た途端、めちゃくちゃあっさり神様なんかを受け入れちゃうんだから、不思議なものね。


「?~。

 じゃ、この世界に神様なんていないの~?」


「絶対にいないとは、い~きれないけどね~。

 でも世界に10人といない存在と、こ~んな簡単に出会えるはずないでしょ。」


「そりゃそ~か。」


実在するかもわからない。

実在しても10人といない、とくればねぇ。


「あ。ヴェリアって日の女神様の信者を見ても、なんとも思わないの?

 魔族の大半は月の女神様を崇めてるんでしょ??」


「へ?

 ど~いう事なの??」


「月の女神様は日の女神様のせいで命を落とした、なんて逸話があるのですよ。

 真実かど~かはわかりませんが。」


「興味ね~よ。

 んな神話なんぞ。」


本気でどうでも良さそうにしてるのが、ヴェリアらしいわね。

もっとも魔族が日の女神様の信者を目の敵にし、危害を加えてる~なんて話は聞かないけれど。

彼らにとって真偽のほどもわからない神々よりも、実際に害を与えてくる人間達の方がよほど憎き存在でしょう。





「いい加減にしろっ。

 我らや日の女神様を疑うとは、この無礼者がっ!!」





そんな感じで神様談義をしていると、マイケルの部下と思われる中年男性が突然、怒鳴り始めたの。


「・・・いや、疑うなって言われてもねぇ。

 あんた、この世界に自称神様や神の使いが何百人・・・いえ。

 何千人いると思ってるのよ?」


エミリーの言う通り、神様が一人いたら、その数十倍は偽者がいるからねぇ。

それでも皆を幸せにするために頑張ってるとかならともかく、大半は搾取や洗脳に一生懸命な輩ばかりで・・・。

ゴキブリよりも酷いわ。


「つ~か、信者共って素行が悪いのばっかだしなぁ。

 同調圧力が酷いわ、見苦しく言い争うばかりだわ、乱暴な輩も多いわ・・・。

 むしろ神様の評判、下げようとしてんじゃね?」


「・・・周りに迷惑を掛ける事なく、神々を信仰してる方々もたくさんいるんですがね。

 ただその一方、他者の人生を破滅に導くような人達が一定数いるのも紛れもない事実です。

 彼らがそうだと決まった訳じゃないですが、安易に信用するのは危険でしょう。」


「その辺は俺達の世界と同じって訳か。

 一番、神々を乏してるのがその信者達だなんて、皮肉すぎるよ。」


信者達も神を否定されたくないなら、せめて一般人レベルに素行を改善したらい~のに・・・。

でもそんな理屈に聞く耳持たない信者も珍しくなく・・・。





「貴様らぁああああああああ!!!!!!!!」


「うわっ!?

 切れた!!??」





私達の反論に怒り狂った中年男性が剣を抜いちゃって・・・。


「トール様!?

 落ち着いて下さい!!

 そう簡単に信じて貰えないのは仕方ありませんよ。」


「彼らの言う事にも一理ありますって。」


「黙れーーーー!!!!

 あんな連中の肩を持つ気かっ!!」


「そうだ、そうだ!!

 日の女神様を疑うなんて、無礼者めがっ。」


全員が中年男性・・・トールのような感じじゃないけど、いくらかは彼に同調し、臨戦態勢に入ってるわ。


「なんだ、なんだ?

 やる気かぁ、てめ~ら。」


「よしなさいよ、ヴェリア。

 ・・・まったく。

 これだから神の信者は。」


まずいわ、まずいわっ!!


「勇者様っ。

 ここは一刻も早く逃げましょう!!」


・・・いくら彼らにとって不快だからって、剣を抜く程に怒らなくても。

そもそも宗教を疑うなんて、当然の話じゃない。


全てが悪人って訳じゃないにせよ、大きな損害を与えてくる輩も間違いなく実在するのだから。

馬鹿正直に信用してたら、こっちが破滅しちゃうわ。


「そ・・・そうだね。

 どうやら彼ら、すっごく危ない人達みたいだし。」


マイケルの部下達も全員が乱暴者じゃないようだけど、少し疑うだけで暴力に走る人がいるあたり、やはり信用すべきじゃないのかしら。





「よさないかっ、お前達!!

 特にトール、剣を抜くなんてやりすぎだっ。

 ・・・日の女神様をお救いする可能性を潰す気かっ!?」


「「「「「「「「もっ、申し訳ございませんっ。」」」」」」」」





だけど私達が逃げ出す前にマイケルがトール達を一喝する。

その結果、あれだけ興奮していたトールも青ざめた表情で謝るばかり。


「まったく。

 自分が逆の立場ならテンイ達と同じ態度を取る癖に、なんて身勝手な・・・。

 相変わらずの老害っぷりですねぇ。」


「ユウ、貴様!!

 父上に向かって、なんて無礼な・・・。」


「本当の事を言ったまでですよ、セイン兄上。

 ただでさえ日の女神様は命を狙われているのです。

 ・・・もしもテンイ達が逃げ出したらどう責任を取るつもりだったのか。」


「なんだと!??

 この落ちこぼれが・・・。

 異世界パワーで力を手にしたからと、図に乗りおって!!」


その様子を息子の一人にコケにされ、その態度にもう一人の息子が苛立ちを見せる。

なんだか家族仲が悪そうね~・・・。


・・・と言うか、例の本に書いてあったシチュエーションの1つによく似ているわねぇ。

虐げられた息子が突如手にした大きな力で立場を一転させる的なの。


「テンイとその仲間達よ。

 彼らの非礼は謝ります。

 だからどうかこの方をお助けするため、力を貸して頂けないでしょうか?」


「・・・い、いや。

 その・・・。」


居心地が悪いのか、勇者はしどろもどろするばかり。


「でも助けろっつったって、ど~すりゃい~のやら・・・。

 経緯はわかんないけどこの人、滅茶苦茶強い力で封印されてるわよ。」


「・・・封印。

 雰囲気的にそんな気はしてたけど、やっぱそ~なんだ。

 ど~しよう、王女・・・。」


ど~しようと言われてもね・・・。





「・・・あれ?

 この封印・・・。

 もしかしてっ。」





母上が持っていた本で見た事ある・・・。

確か・・・。


「神喰い伝説に登場する封印術かしら?」


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