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第175話 全力編⑩ 破壊神か否か

投稿済みのお話にいくつか修正を行いましたので、ご報告します。

・登場人物紹介に「ヴェリア」「アビス」を追加しました。

・第51話より「リザレクション」の修得難易度を変更しました。

・第79~92話に登場するキャラクター「レツ」の名前を「ヒーツ」へ変更しました。

 ※ストーリーは特に変わってません。

転移勇者と狂戦士タケルが上空で激しい戦いを繰り広げている。

戦いの刺激から勇者の抑えられていた闘争心や凶暴性が剥き出しとなり、そして・・・。





「このまま勇者は破壊神へと変わり果ててしまうの・・・?

 タケルのような破壊と殺戮だけを好む化物に変わり果ててしまうの!?」





勇者が変貌していく。

闘争の果てに。

全てを滅ぼす破壊神へと。





「何が破壊神よ?

 バッカじゃないの!!」


へ・・・?


「セツナ?」


なんだか随分、不機嫌そ~ね。


「それに人の男を侮辱しないでくれるかしら~?

 タケルは破壊や殺戮に溺れるよ~な小者じゃないわ。

 全く、見る目のない女ね・・・。」


「いやいや・・・。

 タケルもあなたもこの村を楽しそうに攻撃してたでしょ!?

 滅ぼす気、満々だったでしょ!!」


「滅んでないでしょ~が。

 タケルがその気になれば、こんな村なんか簡単に滅ぼせるわよ。

 いくらテンイでも足手纏いを守りながら、彼を制すなんて不可能だもの~。」


それでもこの村が壊れよ~が、住人が死んでしまお~が、構わないくらいに思ってたのは事実でしょ~が。

・・・でも確かにタケルはこの村の破壊よりも、勇者との真っ向勝負に執着している節はある。


「タケルはただ、本気で戦える相手を求めてただけなの。

 自分の全力を試したいだけなの。

 それの何が悪いの~?」


「だからって争う意志のない人間を襲うのは悪い事でしょうが!!

 ・・・勇者に限っては戦う気満々だったけど。

 ・・・。」


本気で戦える相手を求める気持ち。

自分の力を試したいと願う心。


それが悪い事かと問われたら・・・。





「デルマ。

 あなたは自分の男が信じられないの?

 あなたにとってテンイは破壊と殺戮だけを望む、愚か者なの~?」





あ。


・・・・・・・・・・・・。


勇者は容姿も戦闘センスも凄まじい。

けれどその心は、英雄なんかとはほど遠い。

すぐ泣くし、うっかりミスも多いし、例の本に記されてるような、誰からも賞賛される勇者像とはかけ離れてる。


けれど。



「・・・違う。

 彼はそんな愚か者じゃない。

 勇者は破壊神なんかじゃないわ!!」



例えチート能力を得ても、優しさを忘れず、強くなるための努力を怠らない。

何度、転んでも落ち込んでも、挫ける事なく立ち上がる。

強大すぎる力に反し、その精神はごく普通・・・だけど真っ直ぐな心を持つ男の子よ。


「その通りよ。

 別にテンイは異常者なんかじゃないわ。」


「エミリー・・・。」


「・・・やっぱりと言うべきか。

 テンイってば、戦うのが大好きというか、根はかなり好戦的みたいねぇ。

 でも彼のような思春期の男の子にはよくある話よ。」


「なんか、わかるかも~。」


そう言えば前にもエミリー、似たような事を言ってた気がする。


「デルマ。

 あんた、チート能力を持ってるからって、テンイの事を色眼鏡で見すぎなのよ。」


「そ・・・そうかしら?」


「彼らの戦いをよく見なさい。

 ・・・ま、ちょっぴり派手に立ち回りすぎてるけどさぁ。

 テンイが破壊や殺戮を望んでるように見える?」


・・・・・・・・・・・・。


相変わらず勇者もタケルも楽しそうに戦い続けている。

けれど改めて見直すと、破壊や殺戮そのものに喜びを見出してる風には思えない。

そうじゃなくて本気で戦える事、ライバルと全力で競い合える事を楽しんでる感じよ。


「だからって、少し配慮が足りないわよ・・・。

 いくらエミリーの防御魔法で、村への被害が防げるからってさぁ。

 ・・・人前であんな嬉しそうに暴れちゃって、もう。」


ま~、勇者的にはタケルが悪さをしでかすから、止めようとしてるだけなんです~。

だからしょ~がないんです~。

ってつもりなんだろうけどさぁ。


タケルと出会った瞬間から本気で戦えそうな相手にうきうきしてたのは見え見えだもの。

でもね。





「本気で戦える相手を求める気持ち。

 自分の力を試したいと願う心。

 それ自体は醜い感情でもなんでもないのよね。」





これも勇者の・・・。

いえ。

人の感情の1つなのでしょう。


「あたしも今のテンイお兄ちゃんから悪い感じはしないかなぁ?

 怪我しないかは心配だけどさ。

 とっても楽しそ~なんだも~ん♪」


・・・ま~だとしても、周りに迷惑を掛けちゃダメだけどさ。

けれど今回の一件で勇者に対して抱えていた漠然とした恐怖が幾ばくか消え去った。

そんな気がしたの。





「2人とも、なんてパワーなんだ!?」





胸のつかえが取れたのも束の間、ヒデヨシの呟きが耳に届く。

彼の言う通り、勇者は雷、タケルは炎のパワーを集め、これまでとは桁違いの規模で放とうとしている。


純粋なパワーは勇者の方が上。

だけど魔法・スキルを絡めた戦闘技術は経験の勝るタケルの方が遥かに上。

勝利の女神がどちらに微笑むかはわからない。


私達や村の人々が固唾を飲んで見守る中、互いの渾身の一撃がぶつかり合う。

結果は相打ちだったようで、2人共『フライング』の効果も維持出来ず、地面へ落下していったわ。


って!!


「エミリーっ。

 早くバリアを解いてっ。

 お願いっ!!」


「わ、わかったわっ。」


「勇者っ!!

 フライング!!」


エミリーがバリアを解くと同時に私は空を舞い、落下する勇者に向かって全速力で飛んだの。

その甲斐あってぎりぎりながらも、彼が地面へ激突する前に受け止められたわ。


「・・・。」


「勇者・・・。

 酷い傷。

 でも・・・。」


先ほどの激突で勇者も大きなダメージを負い、今は気を失っている。

そんな彼を見つめていると、少し遅れてエミリーとクロも勇者の元までやって来たわ。


「エミリーお姉ちゃん。

 治せそう?」


「・・・かな~りボロボロだけど、命に別状はなさそ~ね。

 うん。

 これなら回復魔法と多少の睡眠で、すぐにでも元気になるわ。」


エミリーの分析通り、幸いにも命に別状はなかったの。

エミリーの『ヒール』により傷はすっかり癒えるも、未だ意識の戻らない勇者を私は背に乗せる。


「良かった・・・。

 タケルもこれ以上は暴れられないでしょ~し、これで一件落着・・・。

 ・・・あ、セツナ。」


「「あ。」」


しまった。

セツナがまだ残ってたわ。

でもエミリーの防御魔法があれば、彼女の攻撃なら防げるはず・・・。





「や、やめてくれっ。

 オネを離してくれーーーー!!!!」





今のはヒデヨシの悲鳴!?

嫌な予感がした私達は顔を見合わせた後、急いで地図には無い村まで戻ったの。


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読んで頂き、ありがとうございました。

少しでも「続きが気になる!」「面白い!」と思って頂けたら、評価★★★★★と、ブックマークを頂ければと思います。

どうぞよろしくお願いします。
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