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第173話 全力編⑧ 勇者VSタケル 後編

Side ~タケル~


俺は強大すぎる力を誇る転移勇者、テンイへ戦いを挑む。

奴は大悪魔ベルゼブブすら、ランク1のスキルであっけなく打ち破る常識外れな男だ。


だがな。


「まだ俺の攻撃は終わっちゃいね~ぞ!!

 五の奥義・朱雀旋風脚!!」


俺はランク5の炎系スキル『五の奥義・朱雀旋風脚』を発動。

蹴りのモーションから灼熱の鳥を放つ。


「ファイア!!」


それをテンイはファイアを使って迎撃。

ランク1の魔法だが、ランク5のスキルさえ、圧倒する程の熱量が灼熱の鳥を襲う。


悔しいがおそらく灼熱の鳥は奴のファイアに競り負けるだろう。

けれど炎の押し合いにばかり気を取られてるとよぉ。

手痛い一撃を食らうぜ!!


「フィフス・ウインド・ブレード!!」


俺は上空からテンイに向かって魔法で風の刃を放つ。


「うわっ!?

 いつの間に俺の上を・・・。」


そりゃあ、灼熱の鳥を放つと同時に攻撃の軌道外からてめぇに接近し、上を取ったからな。

果たして迎撃は間に合うかなぁ?


「バリア!!」


だが奴は咄嗟の防御魔法で風の刃による攻撃を完全に防ぎきる。

ち。


「決まった!!

 って、思ったんだがなぁ。

 なんつ~反射神経してやがる・・・。」


にしてもチート能力を持った連中の中でも、テンイはかなり異端だ。


威力こそデタラメだが、使える魔法・スキルはランク1相応のものが数種類のみで、特に魔法の扱いに関しては素人丸出しだ。

なのに連れの女の魔法を一目見ただけで、今まで使えなかった魔法を修得すんだからなぁ。

訳の分からんセンスだぜ。


そしてその卓越した剣術・運動能力を目の当たりにすれば、奴が元の世界でめちゃくちゃ鍛え込んでたのは丸わかりだ。

日本では修行に明け暮れてたのに、異世界だとロクに魔法やスキルを修得してない奴なんぞ初めてだわ。

逆のパターンか、日本・異世界問わず行動が一貫してる連中なら大勢いるんだが。


・・・こいつ、実は争いが嫌いだとかほざく、平和主義気取りのへたれなのか?


「俺の方こそ焦ったよ。

 あんなやり方で隙を突いてくるなんて。」


・・・いや、違う。


「今度はこっちから行くぞ!!」


そんな奴がこんな楽しそうな顔なんかしねぇ。

むしろ抑えてた本性をさらけ出せて、活き活きしてる感じだ。


「ボム!!」


反撃のつもりか、テンイが爆発魔法『ボム』を放つ。

ど~せアホほど高威力なんだろ~よ。


「おっと。」


だからって、馬鹿正直に放って当たる訳、ね~だろ・・・。





ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンンンンンンンンンンン!!!!!!!!





「!!??」


って、核爆弾かよっ!??

遥か上空からでも鳴り響く強烈な爆発音にさすがの俺も一瞬意識が取られる。


「今だっ!!」


しかもテンイにとってあの『ボム』は俺の気を引くためだけのものだったようだ。

奴はミスリルソードから、何らかのスキルにより強烈な斬撃を放ち、俺に命中させやがった。


「ぐおぉおおおおおおおおお!!!!????」


これは斬撃波か!?

い・・・いや、この痺れは多分、『電撃波』系統のスキルだ。

剣から電撃を放つタイプの攻撃だ。


「し、しまった・・・。

 熱くなりすぎた!!

 俺はなんて事を・・・。」


ところがどういう訳かテンイは青ざめた様子で俺を見つめている。

・・・なんだ、なんだぁ?

まさか本気で傷付ける気なんてありませんでした~ってかぁ!?


「舐めるなよ・・・。

 テンイーーーー!!!!

 五の奥義・白虎爆裂拳!!」


「!!??

 ガハッ!!」


俺は動揺しまくっているテンイの胴体にランク5の氷系スキルで超強化した拳を叩き付ける!!

鈍い痛みに悶えつつも、俺から離れていくテンイ。


「お・・・俺のスキルを受けて、平気なの・・・か?」


「平気じゃね~ぜ。スッゲェ効いたさ。

 だがな、俺は魔王に挑んで生き残った男だ。

 いくらてめぇの攻撃でもたったの一撃でぶっ倒れる訳ね~だろ!!」


「・・・・・・。

 本当に人間かな?

 君は・・・。」


てめぇにだけは言われたくね~わ!!


「そういうてめぇだって、俺の『五の奥義・白虎爆裂拳』を受けて、まだ余裕そうじゃね~か。

 あの一撃が直撃すりゃあ、竜でも神でも一瞬で氷漬けになって砕け散るって~のによ~。」


「殺す気かっ!?

 ・・・ど~りで寒気と吐き気が止まらないと思った。」


寒気はともかく吐き気は単に腹を思いきりぶん殴られた時特有の症状だな。

ま、それはともかく。


「下らん遠慮なんぞすんじゃね~よ、テンイ。

 いくらてめぇが強かろ~が、その気になれば俺なんかいつでも殺せるんです~・・・。

 って思い上がりも甚だしいわ!!」


「・・・タケルは俺が怖くないのか?

 こんなに恐ろしいチート能力を持ってしまった、この俺が・・・。」


「てめぇの力にびびってんじゃね~よ!!

 本気で来い・・・。

 テンイ!!」


じゃね~と、つまんね~んだよ。





「わかった、タケル。

 もう俺は躊躇わない。

 お前の強さを信じ、全力で戦おう!!」





・・・っ。

今までとはオーラが違う。

テンイの奴、とうとう本気になりやがったか。


「望むところだーーーー!!!!」


だが俺だって、負けるつもりで戦う気なんぞねぇ。

魔王の前にまずはてめぇからぶっ殺してやらあっ!!



********



こうして俺はテンイと一心不乱に戦い続けた。

どれくらいの間、戦ってたかもわからね~。

何度も攻撃を食らい、今にもぶっ倒れそうだ。


「「はあっ、はあっ。」」


でもそれはテンイも同じだ。

奴は見た目の割に根性も相当なもんだが、それでもあと1~2回攻撃を直撃させれば倒せるだろう。


だが気になる点もある・・・。


「よ~、テンイ・・・。

 てめぇさぁ、まだランク2以上の魔法・スキルを使う気がね~のかよ?

 舐めプして無様に殺されちゃ~笑えね~ぜ?」


別に出し惜しみをしてたよ~には思えね~んだが、未だ奴はランク1の魔法・スキルしか使ってこない。


「・・・使う気がないんじゃなくて、使えないんだよ。

 高ランクの魔法・スキルなんて、そう簡単に修得出来ないって聞いたぞ。」


「はっ!!

 俺達、日本人はランク3~4の魔法・スキルくらいまでなら、ほとんど誰でも使える。

 試しもしね~で、使えない気になってるだけじゃね~のか?」


戦闘に不向きなタイプなら、使えないケースもたまにあるよ~だがな。

だがテンイはどう考えても戦闘特化なタイプだろうがっ。


「だって王女がランク2の攻撃技なんて使用したら、世界の1%が消滅するかも・・・。

 なんて言うからさっ。」


「あながちあり得なくもなさそ~な話だな。」


なんせランク1の攻撃技であの威力だからな。

だがこれでわかった。





多分、テンイは連れの女に本当の力を封印されてやがる。

意図的なものか、無意識の産物かまではわからね~が。





もちろんデルマとかいうあの女にテンイの能力を力尽くで封印するなんて不可能だ。

見た限り、あの女のパワーは一般人の域を出ないだろ~からなぁ。


だけど人の力を封じる手段は魔法やスキルのよ~な、超能力じみたものだけじゃね~。

そんなもんなんぞよりもむしろ、人間関係や社会なんかから生み出される、つまらない数多の柵の方がよ~。

よっぽど人間本来の力を封じ込めてるんだ。


「・・・・・・・・・・・・ま~良い。

 どちらにせよ、最後に勝つのはこの俺だ!!」


「俺だって負けるもんかっ!!」


この愉快な戦いに決着を付けるべく、俺達は互いに力を高め合う。

剣に雷の力を纏わせながら接近するテンイに対し、拳に炎の力を溜め、俺は迎え撃った。


「「うぉおおおおおおおお!!!!!!!!」」


互いに渾身の一撃がぶつかり合い、そして・・・。





2人して地面へ落下していく光景を最後に俺の意識は途絶えた。


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