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第172話 全力編⑦ 勇者VSタケル 前編

Side ~タケル~


始めはクソ親父の虐待に抗うためだった。

奴をぶっ殺したい一心で喧嘩や武術の修行に明け暮れ、ついに俺自身の力で叩きのめすまでは出来た。


・・・が、奴の許しを請うような惨めな顔を見た瞬間、内に秘めていた強烈な殺意が綺麗さっぱり消えちまった。


結局、あれだけ憎かった奴を殺す気すら失せ、俺は家を飛び出した。

そしてつまんね~町をつまらない気分で歩いていたところ、勇者召喚に巻き込まれ、この世界へやって来たんだ。


その後は俺を召喚した輩の意向なんぞ丸っきり無視し、魔王をぶっ殺しに向かったっけなぁ。

が、あっさり返り討ちに合い、今は修行がてら、魔族共の命令を受け、世界中を回っている。

魔王を殺す力を身に付けるために・・・な。


もちろん使命のためでも、世界平和のためでもない。

魔王に恨みや憎しみを抱いたからでもない。

だが惨めなクソ親父の代わりに強くて偉大な魔王をぶっ殺せれば、俺の心も満たされると感じてな。


そんな生活の最中、偶然ながら出会ってしまったんだ。

あいつと。



********



「さあ・・・。

 思う存分、戦おうじゃね~か!!」


「・・・ああっ。

 行くぞっ!!」





こうして俺は規格外の力を誇る転移勇者、テンイと向き合っている。

チート能力のせいか、奴はランク1の氷魔法でランク5の炎魔法すら打ち破る傑物だ。

潜在能力に関しては俺はおろか、魔王をも上回るかもしれない。


けれどだからって怯むつもりは無いぞ?


「フィフス・ロック・バレット!!」


俺はランク5の魔法で自分の身体の何十倍もの大きさの岩を大量に生成し、テンイに向かって放つ。

この魔法1回で小国程度なら、軽々と押し潰せるだろう。


「ウインド!!」


それを見たテンイがランク1の風魔法を発動。

ランク1の魔法にも関わらず、しかし竜巻の如く激しい風が無数の岩を軽々と弾き飛ばす。


どうやら『アイス』以外の魔法もランク1だろ~が、ランク5の魔法を上回る威力があるようだ。

・・・なんて奴だ。


「なっ!?

 しまった!!」


ん・・・?

ど~してテンイの奴、俺の魔法を見事、弾き飛ばした癖にんな焦って・・・。

って、ヒデヨシの村が弾き飛ばした岩に潰されそ~だからか。


その様子を他人事のよ~に眺めていると、村の周りにバリアが張られ、奴らが岩に潰されるよ~な事態は回避される。

聖女の『フォース・バリア』か。

あいつは俺らに比べるとまだ力不足だが、それでも防御魔法に関してはそれなりの腕前だ。

余波や流れ弾を防ぐ程度は訳ね~か。


「・・・良かった。」


「・・・ちっとも良くね~ぞ!!」


「!??」


いくらお仲間や村が心配だからって、戦いの最中によそ見はよくね~なぁ。

罰としてその綺麗な顔をぐっちゃぐちゃにしてやるぜ!!


「五の奥義・雷神拳!!」


俺は拳に雷を纏い、隙だらけのテンイの顔面を狙う。

巨大な黒竜と化したアウザーすら、この一撃で沈んだんだ。

果たしてテンイに耐えられるかな~?


しかし奴は目前に迫った拳を反射神経だけで回避。


「な・・・・・・・・・・・・。

 うぐっ!?」


しかも直後、胴体に鈍い痛みが走る。

攻撃後の隙を突かれ、斬られた・・・?

そんな錯覚を起こしたが、奴が手に持っていたのは不殺の剣だった。


「はあっ!!」


続けて奴は俺の頭目掛けて剣を振り降ろすも、それを真剣白羽取りで防ぐ。


「マジで!?」


「ざけんなっ!!」


そして足で剣を握った手を蹴り飛ばす。


「痛っ!?

 不殺の剣が!!」


結果、テンイの不殺の剣は地上へ落下。

奴は動揺しつつも一旦、剣を諦め、追撃を避けるためか俺から距離を置く。


「・・・そんな玩具で俺に挑むたぁ、いい度胸じゃね~か。

 舐めプのつもりか?

 あ~っ!!」


「・・・・・・。」


俺の指摘に奴はやや動揺した表情を見せつつも、無言を貫いている。





「てめぇがその気じゃなくても、俺は殺す気で行くぜ?

 フィフス・ベルゼブブズ・サモン!!」


「「「!!!!!!!!」」」





今度はランク5の召喚魔法で暴食を司る最強級の蠅の悪魔、ベルゼブブを3体召喚する。

ベルゼブブは野良ドラゴンすら餌扱いする災厄級の悪魔でな。

たった1体で世界を終末に導くとまで言われる程だ。


「この世界にはこんなモンスターまでいるのか・・・。」


「死ぬのが嫌なら、全力で抗うんだなっ。

 やれ、ベルゼブブ!!」


「「「!!!!!!!!」」」


3体の大悪魔を前にしかし、テンイは一切取り乱す事なく、ミスリルソードを構える。

なんだよ、結構良い剣持ってるじゃね~か。

始めから使いやがれ!!


「巨大化!!」


そしてランク1のスキル『巨大化』でミスリルソードを大きく・・・。

大・・・きく・・・?


「おいおいおいおい・・・。

 どこまで大きくなりやがるんだ?

 こら。」


「「「!!!!????」」」


真下の村なんぞ、まな板の人参を斬るノリで真っ二つに出来そうなくらい、大きくなってやがる。


「はあっ!!」


「「!!!!????」」


テンイはバカみたいに大きくなった剣を見事なまでの剣捌きで操り、2体のベルゼブブを軽々と一刀両断。


「!!!!????」


辛うじて難を逃れた1体も恐怖のあまり、猛スピードで巨剣の範囲外へ逃れるべく、距離を置く。


「・・・。」


その様を見たテンイは『巨大化』を解き、ミスリルソードを元のサイズへ戻す。

それでも恐怖に支配されたベルゼブブが触覚に電気を溜め、テンイに向かってぶっ放した。

天変地異かと見間違えるかのような雷が奴を襲う。


が。


「斬撃波!!」


テンイはランク1の両手剣スキルを使い、ベルゼブブに対し衝撃波を放つ。

衝撃波は雷をも切り裂き、難を逃れるために遥か上空にいたベルゼブブをあっけなく真っ二つにした。


「!!!!????」


・・・信じられね~。

あのベルゼブブの一撃はランク5の雷系スキルに匹敵する威力だ。

それをランク1のスキルで一蹴するとは、な。


しっかし迂闊に相棒の銀竜を出さなくて良かったぜ・・・。

あいつを殺されちゃ~、色々と不便だからよぉ。


けどよ。

ベルゼブブを倒したくらいで、安心するのはまだ早い。

本当の戦いはこれからだ!!


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