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第168話 全力編③ 迷える勇者パーティ

「スキル『実りの種』!!」





ハーレム要員に焚き付けられた転生者ヒデヨシがいきなり謎のスキルを発動!??


「ヒデヨシ!?

 いくら自分の力を誇示したいからって、いきなり攻撃する気か!!」


「ふんっ。

 俺を暴力で己を誇示するような、野蛮人と一緒するな。」


そう語るヒデヨシの手の平に小さな種がいくつか乗っかってたの。

彼はそれらを地面へ放り投げる。


するとなんと!!


「!!!!!!!!」


「!!??

 木が生えたっ!?

 わぁ~・・・。」


「って、マジかっ!!」


・・・しかも1分と経たず、美味しそうな果物までなったじゃない。


「これはまさか農業チート!??」


「農業チート?

 な~に、それ~?」


「果物や野菜なんかを好き放題作り出せちゃう、とんでもないチート能力の事よっ!!

 『農業』チートなんて、呼ばれてるけどさぁ。

 もう農業とか関係なく、世界の法則を捻じ曲げてるよ~なものね・・・。」


「・・・こればっかりは王女に同意かな。

 いやぁ、ホントに凄い能力だよ。」


農業チートについては、例の本にもその詳細が記されていた。

けれどあんまりにも常識外れすぎて、本当にこんな能力が存在するなんて思いもしなかったわ。


「ど~う?

 これでヒデヨシの凄さを思い知ったかしら?」


「「「うんっ、思い知った。」」」


「・・・・・・・・・・・・。」


ヒデヨシのハーレム要員、オネからそう問われ、私達は間髪入れずに彼は凄いと返す。


「ハハハ!!

 これが俺の『授かった』力さ。」


ま~、若干増長してるよ~な気がしなくもないけれど。

でも実際、彼の能力は増長しても無理もない程度には凄まじいからねぇ。

それだけ食料を自由に生み出せる農業チートはとんでもない能力だと言えるわ。





「そんな能力を持っている癖に使われる側じゃなくて、使う側なんだ。」





って、エミリー?


「これでもランク3の攻撃技くらいは扱えるんだ。

 俺を力で屈服させようだなんて、そんな真似を企もうものなら、叩きのめすだけだ。」


「そっか。

 だから彼らを従えられてるのね。

 力があって羨ましいわ。」


く・・・空気が重い。


「あ、そうだった!!

 ・・・いくら自分達が辛い目に合ったからってなぁ。

 エミリーに八つ当たりするような真似は許さないぞっ。」


「「「「「「「「ひいっ!!??」」」」」」」」


エミリーと村人達の因縁を思い出した勇者が不殺の剣で彼らを威嚇する。



「やれやれ・・・。

 もう忘れたのか?

 俺がこの村の用心棒だと言う事を。」


「アウザー。

 俺だって、仲間のためにも引き下がる訳にはいかないんだ。

 ・・・うんっ。」


「・・・・・・。」



ちょっと!?

勇者ったら、なんだかやけに乗り気に見えるんだけどぉ!!


「お待ちくださいってば、勇者様。

 そんな喧嘩腰になられては・・・。」


「そ~だぞ。

 まずはクソ聖女の望みを聞くとこからだぞ~。」


「そうですよっ。

 まずは・・・・・・。

 ん?」


この声は・・・。


「「魔族!??」」


「ひぎゃあ!!??」


「「「「「「「「あわわわわ・・・。」」」」」」」」


あ~らら。

ヒデヨシ達ったら、やたらと驚いてるわ。

特にオネの驚きようといったらもう、ね。


「あ~・・・。

 そんなに驚かなくてもい~って。

 無闇に暴れたりはしないから。

 ・・・でしょ、ヴェリア。」


ヴェリアは謎多き女の子で人間と魔族のハーフよ。

神出鬼没で急に現れたと思ったら、唐突に去って行く事も多く、相当気まぐれな性格ね。


クロは無反応だけど、彼女が近くにいた事は知ってたのでしょう。

でも危険な時以外は近くにいても黙っておくよう、ヴェリアと約束しちゃったからねぇ。


「ま~な。

 単に女々しく振る舞ってるクソ聖女が珍しくてよ~。

 茶化しに来ただけだかんな。」


「あのねぇ。

 あなた。」


そんな理由でこんなややこしい状況に首を突っ込まずとも・・・。


「んで、ど~なんだ、エミリー。

 てめぇ、テンイの力を借りてよ~。

 この寄生虫共に復讐でもして~のか?」


しかも平気でエグい事、聞いてくるしぃ!?

もしもエミリーが『私に代わって、あの村人達を皆殺しにして!!』。

・・・なんて勇者に言い出したらど~しましょう。


「はぁ。

 い~わよ。

 別に復讐なんて。」


へ?





「だって彼らの事を『恨んでる』訳じゃないもの。

 単に怖いだけ。恐ろしいだけ。

 ・・・嫌な事を思い出しちゃうだけ。

 この先、二度と私と関わらないなら、ど~なろ~がど~でもい~わ。」





エミリー・・・。


「でもどうせあなた達は私の事を恨んでるんでしょ?

 『あの時』から少し人数が減ってるよ~だけどさぁ。

 私に呪詛でも投げながら、飢え死にしていったの・・・?」


「いえ・・・。

 『飢え死には』しませんでしたが・・・。」


ヒデヨシの方を見ながら、困ったように呟く村人達。


もしかして何人かはヒデヨシに反発し、その結果、捨てられたり、処分されたりしたのかしら?

・・・うん。

怖いからその辺の事実は追及しないでおきましょ~か。


それはともかく、村人達の方もど~にも態度が煮え切らない。

しかし意を決したのか、村人の1人がエミリーに向かって己の気持ちを告げる。





「・・・・・・・・・・・・。

 申し訳ございませんでしたーーーーーーーー!!!!!!!!」


「「「「「「「「本当にすみませんでしたーーーーーーーー!!!!!!!!」」」」」」」」


「・・・へ?」





・・・へ?


「ヒデヨシさんから言われたのです。

 聖女に見捨てられたのは、お前らの性根が余りに醜かったからだって。

 搾取するしか能のない輩など見捨てられて当然だって・・・。」


「そしてやっと気付いたのです。

 いくら飢えに苦しんでたとは言え、あなたに負担ばかり押し付けていた事を!!」


「・・・なのにあの時の俺達はっ。

 もう二度とあのような真似は致しません。

 だからどうか我らをお許しください!!」


ひょっとして村人達はエミリーに報復したかったんじゃなくて、謝りたかったの!?





「・・・今更そんな事を言われたって、知るもんですかーーーー!!!!」





だけど気持ちの整理を付けられず、エミリーは走り出してしまう。


「あっ!?

 エミリーお姉ちゃん!??」


そんな彼女に驚き、クロが慌てて後を追う。


「・・・あ~あ、行っちまった。

 残念だなぁ、テンイ。

 クソ聖女をダシにアウザーと戦えなくてよぉ。」


「そ・・・それは。」


「下手に自分に言い訳しね~で、堂々と言やい~んだよ。

 『アウザー。この俺と戦え!!』ってな。」


こらこら、ヴェリア!!

そんな乱暴な・・・。


「その手があったか!!」


その手があったか!??


「やれやれ・・・。

 どうしてこの俺がこんなガキに付き合わねばならんのだ?

 暴れたければ他所でやれ。」


「うっ!?」


「・・・おいおい。

 ケチくせ~事言わずに戦ってやれよ~。

 それともテンイが怖いのか~?」


「いくら異世界人とは言え、身の程知らずのガキが怖い訳あるか。

 単にメリットが無いから相手にしないだけだ。

 その方がテンイにとっても幸せだろう。」


この言い草・・・。

神竜の傭兵とまで言われるだけあって、アウザーったら自分の強さに凄い自信を持ってるのねぇ。





「・・・。

 それともテンイよ。

 お前は争う気のない相手に攻撃を仕掛けるような、痴れ者なのか?」


「!!!!

 ぐっ!?」





勇者!?

いくらアウザーから口撃を受けたからって、エミリーみたいに走り出さなくても。


「お待ち下さいって。

 勇者様ーーーー!!!!」


「あ~らら~・・・。

 ったく。

 面倒臭い連中だぜ。」


私とヴェリアも勇者の後を追う。

こうして転移勇者一行は皆、村から出て行ったの。


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読んで頂き、ありがとうございました。

少しでも「続きが気になる!」「面白い!」と思って頂けたら、評価★★★★★と、ブックマークを頂ければと思います。

どうぞよろしくお願いします。
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