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第166話 全力編① 望まぬ再会

私は元ジャクショウ国の第四王女、デルマ。

今日も勇者のハーレム要員として、旅を続けてるわ。


でもね。



「・・・あ~あ。

 どっかに野良ドラゴンでもいたらなぁ。

 クロ、近くに凶暴な魔物とかいない?」


「いないよ~。」


「そっかぁ・・・。」



かなり勇者のストレスが溜まってるよ~で、困ってるの。


「やっぱりこの間のサイクロプス事件のせいかしら?」


「でしょ~ね。

 ま、ギト王子のよ~なバカに振り回されたんじゃね~。

 誰だってストレスが溜まるわよ。」


あの事件は『祝福の儀』(ヤラセ)のせいで、酷い惨事を招いたからねぇ。

当たりギフトの持ち主以外に死傷者が出なかった点はまだ救いだけど。



「・・・。」



大丈夫かしら?

勇者・・・。


「あんまり心配してもしょ~がないわよ。

 テンイだって人間なんだから、そんな日もあるわ。」


「でもぉ。」


「ホントに野良ドラゴンなんかが見つかればい~んだけどねぇ。

 ストレス発散にちょ~ど良さそうだし。」


野良ドラゴンをストレス発散の対象として見ている闇聖女、ヤバいわね。

けどそれは勇者も・・・。

以前と比べたら随分度胸が付いたのは喜ばしんだけどさぁ。



「あっ!!

 あんな所に村があるよ~。」



・・・あら?

地図には載ってなかったけど、最近出来た村かしら。



********



と言う訳でなんとなしに地図には無い村へと入った転移勇者一行。


「わぁ~・・・。

 おいしそ~な果物や野菜がい~っぱい♪」


「きっとここは農村なんだろうね。

 にしても凄い種類だなぁ。」


「これが噂の『多品目少量栽培』というものでしょうか?

 実際に見るのは初めてです。」


パッと見るだけでもね。

芋、イチゴ、トウモロコシ、トマト、人参、バナナ、ぶどう、みかん、リンゴetc...。

実に多種多様な果物や野菜が栽培されていて、それらを村人達がせっせと採集してるわ。


そんな光景をのんびりとした気分で眺めていたらさ。





「あれは旅人か・・・?

 って、聖女様!??」


「「「「「「「「なんだってーーーー!!??」」」」」」」」





なぜか突然、村人達がエミリーの方を見て騒ぎ始めたの。


「知り合いかい?

 エミリー。」


「ん~・・・?

 始めて見るよ~な、どこかで会ったよ~な。

 ・・・あれっ?」


何かに気付いたようだけど、ど~したのかしら?

エミリーにしては珍しく、動揺を露わにしてるわ。


「あの時と違って、随分と健康そうだけど・・・。

 もしかして、あなた達っ!?」


「ようやく思い出していただけましたか。

 ・・・我々はあなたへ。」





「キャーーーーーーーー!!!!????」





「エミリー!?」


けれど彼らが何者なのか思い出した途端、エミリーは悲鳴を上げながら、勇者の後ろへ隠れてしまったの。


へ・・・?





「こ、来ないで・・・。

 助けてっ。

 テンイ!!」





・・・どういう事なの?

国だって平気で滅ぼしちゃうよ~な相手にすら、一切怯む事の無かったあのエミリーが。

あんな私でも勝てそうな村人相手に震えてる・・・?


「お前達!!

 エミリーに一体、何をしたんだ!?」


「「「「「「「「ひっ!??」」」」」」」」


その様子を見て、彼女の敵だと判断した勇者が不殺の剣を構える。


「お待ちください、勇者様!!

 まずは事情を聞きましょう。

 エミリー。彼らと昔、何があったの?」


でも問答無用で傷付け合うのも良くないので、一旦エミリーに事情を問い掛ける。





「・・・。

 昔、彼らと関わったせいでね。

 私は飢え死にしそうになったの。」





う・・・飢え死にって。


「「「「「「「「・・・。」」」」」」」」


エミリーのとんでも発言にしかし村人達は反論しようとしない。

ぽつりぽつりと話す彼女によるとね。


ロクにお金も食料も持ってないにも関わらず、強盗目的で彼らに襲われた事。

それをお得意の防御魔法で跳ね除けたものの、そのせいで聖女だとばれ、自分達を助けるよう迫られた事。

もしも彼らを見捨て、悪い噂が立って、それを理由に家族が迫害されては堪らないと、嫌々ながらも施しを与え続けた事。

だけどそんな生活にも限界がきて、飢えに耐えられなくなった彼女は彼らを見捨て、逃げ出した事。


・・・そんな事情があったらしいの。


「だからね。

 きっと彼らは恨んでるの。

 飢えに苦しむ自分達を見殺しにした、薄情な聖女である私をね。」


悲しそうな表情で自嘲気味に呟くエミリー。


「村人さん達、可哀想・・・。

 でもね、エミリーお姉ちゃんは何も悪くない。

 だからお願い、虐めないでっ!!」


「・・・そうね。

 きっとあなた達も凄く辛かったんだと思うわ。

 けれどエミリーを責めるのは筋違いよ!!」


大体、害を成そうとした相手に集団でたかり続けるなんて、愚かしいにも程があるわ。

って、言いたいところだけど、飢えに苦しんでたんじゃねぇ。

飢えに飢えてたら、私だって彼らのような愚行に走っちゃうかもしれない。


とは言え、エミリーだって飢えに苦しんでたのよ。

なのにギリギリまで彼らを助けてたのよ・・・。

そんな彼女を責める権利なんて誰にもないわ!!


「俺は飢えに苦しんだ事がない。

 だからあんた達を罵るような真似はしたくない。

 ・・・だとしても、だ。」


そして勇者も私やクロと似たような気持ちだったのでしょう。


「これ以上、エミリーを苦しめる訳にはいかない!!

 彼女に近づくなっ。」


不殺の剣を構えながら、改めて村人達を威嚇したの。

二度とエミリーが彼らに苦しめられないようにね。


「テンイ・・・。」


かつてエミリーは話していた。


--------


「それに私、金や地位以上に勇者の強大な力が欲しいの。

 あの力があれば、ロクでもない連中が寄ってきても返り討ちに出来るでしょ。

 その気になれば始末する事だって容易いはず・・・。」


--------


って。


もしかしてエミリーは勇者に村人達を始末して欲しいのかしら?

にしては彼女、怯えてこそいるものの、あまり村人達を・・・。





「やれやれ・・・。

 一体、何の騒ぎだ?」


村人達は第118話で既に登場しています。

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