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第159話 外れギフト編④ 洗濯王子の憂鬱

----注意----

なろう小説において、祝福の儀が実は嘘まみれの茶番・・・っつ~パターンは(多分)相当稀です。

大概は本当に神様的な何かがスキルだのなんだのを授けてるため、誤解しないでくださいねw

「申し訳ありませんでしたーーーー!!!!

 私が迂闊だったばかりに、あなた様にまでご迷惑をーーーー・・・。」


「ま・・・ま~ま~。

 落ち着きなよ、王女。」





私達はプレン国で世にも珍しい『祝福の儀』を見物していたの。

でもおかしい所だらけだったから、それを勇者達と話してたらさぁ。

野次馬・・・もとい、洗濯王子が割り込んできてね・・・。


そうこうしている内に大騒動になった挙句、追い出されてしまって・・・。


別に勇者もエミリーもクロも特に怒ってはないと思う。

呆れてはいそ~だけれど。

だとしても、こんな下らないミスで勇者達に迷惑を掛けちゃうなんて、ハーレム要員失格よ~。


「だけど、話に夢中になると周りが見えなくなる癖は直した方が・・・。

 ・・・うん、やっぱ直さなくてい~や。

 その方が俺にとって都合、良さそうだし。」


「ど~いう意味です!??」


「(・3・)~♪」


勇者ったら、ちょくちょく腹黒い部分を見せるから、なんだか不安になるわ。


それはともかく、今回の一件は勇者もエミリーもクロも悪くない。

『半分は』私の責任よ。

そして残り半分は・・・。





「洗濯王子ぃ!!

 あなたが偽神と派手に口喧嘩なんか、始めるからっ。

 もうっ、もうっ・・・。」


「だから洗濯王子いうなあっ。」





私達と一緒に追い出された洗濯王子のせいよ。

・・・何も盗み聞きするな、話に混ざるなとまでは言わないわ。

でも騒ぎを起こすのだけは止めてよね。


「そんな下らない事でギャーギャー騒いでる場合か!?

 国の一大事なんだぞ!!」


「一大事って!!

 ・・・。

 ・・・ま~そ~かも。」


けれど洗濯王子があんまりにも真剣だったせいで、さすがに頭が冷えちゃったの。


「え~っと、確かこの国の大臣が神様の振りしてさぁ。

 ギフトを与えま~す、な~んて嘘付いてるんだよね。

 つまんない依怙贔屓のためにさ。」


「それってダメな事なの~?」


「もちろんダメな事でしょ。

 だけどそんなの、あなたが気にしても仕方ないんじゃない?

 気に食わないなら、とっとと他所に引っ越せばい~だけだし。」


「そのような事、出来るものか!!」


実にエミリーらしい言い草だけど、何も間違ってないと思うわ。

どんなにダメダメなやり口だったとしても、ただの一市民が国の方針に抗えるはず・・・。


一市民?





「『洗濯』『王子』。

 ・・・もしかしてあなた、この国の第一王子?

 偽神から洗濯のギフトを授かった・・・。」


「・・・さすがに鋭いな。

 デルマよ。

 お前の言う通りだ。」





まぁ~・・・。



********



「そもそも祝福の儀はだな・・・。」


こうして洗濯王子もとい、プレン国の第一王子バルフと、いつの間にか現れた彼の部下からね。

祝福の儀の成り立ちなんかについて聞かされたの。



事の発端は数年前の城の大掃除中、神様からギフトを授けて貰える水晶玉(嘘だけど)が見つかったからである事。

第二王子の『剣聖』等、当たりギフトを授けられた者は国を挙げて優遇措置が取られた事。

当たりギフトを授けられた事で有頂天となり、それ以外の人々に対する迷惑行為が横行している事。

一方、『洗濯』等の外れギフトを授けられた人達は、蔑まれて当然だという空気が日に日に増していった事。

そのせいで立場を悪くした人達の無気力化や家庭内トラブル、国外へ出て行くなどの問題が深刻化している事。

更にギフト持ちがいる事を名目に軍事費が大幅に削られ、魔物を始めとする外敵への対策が疎かになっている事。



・・・などなど。


「・・・。

 割とこの国、マズい状況じゃない?」


「ですね。

 思った以上に深刻な事態のようです。」


「しかも実際にはギフトの力なんて、一切授かってないからねぇ。」


しっかし祝福の儀の真実を知ったバルフ王子の憤りぶりといったら、もう、ね。

部下と一緒に、父親や大臣の悪口を言いまくってたわ。


これは性格の悪い父上の陰謀なんだ~。

父上は諫言ばかりの自分よりも、おべっかの得意な弟を次の王にしたいんだ~。

・・・って、感じでさ。


ちなみにこの国では王や大臣なんかの元凶を除き、ほぼ全員がギフトの存在を信じ込んでいるようよ。

信じ込んじゃうくらい、ギフトの優劣による差別を徹底してたらしくて・・・。

国主導でそんな愚行に走るなんて、怖ろしい話ね。


「おかしいと思ったのだ。

 私も神から授かったギフトを少しでも役立てるよう、洗濯を頑張ったのだぞ。

 なのに『所詮は召使い止まりの洗濯技術』などと、バカにされ・・・。」


「頑張ったんだ。

 健気ね。」


さすがに気の毒に感じたのか、茶々を入れずに相槌を打つエミリー。

・・・そ~いうのが仕事であろう召使いと同格の洗濯技術って、むしろ褒められるべきじゃ。


「ならばと、努力して『クリーニング』の魔法を会得したらだ・・・。

 今度は『外れギフトすら使いこなせず、魔法へ逃げる愚か者』とこき下ろされる始末!!

 一体、ど~しろと言うのだ!?」


「「「おいたわしや、殿下。」」」


・・・むしろ外れだろ~が、神様から与えられたギフトがさぁ。

ランク1相応の魔法と同格な時点で、ギフトの持ち主を責めるより、神の存在そのものを疑うべきな気が。


「ねえ、王女。

 その『クリーニング』ってのは、洗濯のための魔法なの?」


「『クリーニング』は汚れなどを払う、ランク1相当の初級魔法です。

 しかし洗濯に限らず、掃除や体を清潔にする目的でも役に立ちます。

 かなり幅広い用途で使える、非常に便利な魔法ですよ。」


「そ~そ~。

 私達もこの魔法を使って、手持ちの服を綺麗にしてるからね。」


「うんっ。

 とっても便利なの~♪」


実は私もエミリーも『クリーニング』を修得済よ。

色々な場面で楽が出来るから、本当に助かるのよね~。


「マジでっ!?

 俺、洗濯機もないこの世界でさぁ。

 一生懸命、自分の服を洗ってたのに~。」


「あ。」


そ~いや、たま~に勇者が外で服なんかをせっせと洗ってるとこ、見掛けたわねぇ。

これが勇者の国のスタイルなのかしら?

と思って、流してたけど。


「お願い、王女っ!!

 後で『クリーニング』の魔法を教えて。

 手で服洗うの、面倒で面倒で・・・。」


「いやいや、ダメですってば。

 大騒ぎになっちゃいますから!!」


勇者はチート能力のせいで、小型の魔物を退治する時に使うよ~な攻撃技でもね。

一国すら破壊しかねない程の威力に変えちゃうの。

そんな人にほいほい魔法やスキルを教える訳にはいかないわ。


「どうして!?

 人を傷付けたり、物を壊したりする類の魔法じゃないんでしょ?」


「・・・確かにそ~いう類の魔法じゃありませんが。

 そんなに洗濯が面倒だったら、綺麗にして欲しい衣服を渡して下さいよ。

 私が『クリーニング』の魔法で綺麗にしますから、ね?」


ど~せ大した手間じゃないので、そう提案したのだけれど。

どういう訳か勇者ったら、顔を真っ赤にしながら首をブンブン横に振るばかり。


「ヤダヤダっ!!

 服やズボンはまだしも、肌着や下着なんかは絶対、嫌だーーーー!!!!

 ・・・だって、恥ずかしいし。」


「訳分かりませんよ!??」


私が勇者の肌着や下着を綺麗にする・・・。

それのどこに恥ずかしがるよ~な要素があるのかしら?


・・・う~ん。

チート能力を抜きにしても、勇者は異なる世界からやって来た異世界人。

所々で価値観にずれがあるのはしょ~がないのかなぁ。





「国の一大事にそのような事で揉めている場合か!??」





あちゃ~。

バルフ王子に怒られちゃった。


「そうは言うけど、他人事だし?」


でもエミリーの言う通り、所詮は他人事なのよねぇ。

・・・真実を暴いてしまった事に引け目を感じなくもないけど。


「そんな風に突き放さないで欲しいのだが。

 デルマよ。

 何か解決策があれば、言ってくれないか?」


「そうですね~。

 手っ取り早いのは現場を押さえて、神もギフトも嘘であると、証明するやり方でしょう。

 被害を広げないためにも、早めに実行する事をオススメします。」


私は言葉遣いを改めながら、解決策を提案する。

いくら外れギフト云々で周りからバカにされようと、彼は王族だからね。

言葉遣いくらい、改めないと。


「なるほど。

 悪くない。」


教会でのやり取りから察するに、茶番の実行犯は神父と大臣だから彼らを抑えると良いでしょう。





「・・・・・・・・・・・・。

 バルフ王子。

 授かったのが外れギフトで良かったですね。」


「は・・・?

 私をバカにしてるのか!?」





しみじみと言う私に憤るバルフ王子だけど、もちろんバカにしてる訳じゃない。


「違いますよ。

 だって、当たりギフトを授かった人達はですね。

 いつ命を落とすかわからない、危険な状態にありますから。」


「「「「なっ!??」」」」


外れギフトを授けられる方が最終的に幸せとなれる・・・。

ある意味、例の本に記されている通りね。


「・・・何を言ってるんだよ、王女。

 あの儀式はただの茶番でしょ?

 当たりギフトだろ~が、外れギフトだろ~が、何にも違わないって。」


肉体的にはそ~ね。

当然ながら、あの儀式そのものに命を危機に晒すような要素は無いわ。

だけどね。


「それはそうなんですがね。

 しかし・・・。」





「皆~~~~!!!!

 向こうから、とっても怖いモンスターの気配がするの!!

 ・・・ど~しよう。」





えっ!?


「ペーパー・サモン!!」


クロの忠告を聞き、私は即座に紙の式神を召喚。

彼女が指差す方に大急ぎで飛ばす。


・・・。


「あっ!??」


「どうしたんだい?

 王女・・・。」


「・・・サイクロプスです。

 巨大なサイクロプスがこの国へ接近しています!!」


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読んで頂き、ありがとうございました。

少しでも「続きが気になる!」「面白い!」と思って頂けたら、評価★★★★★と、ブックマークを頂ければと思います。

どうぞよろしくお願いします。
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