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第158話 外れギフト編③ テレフォン・クリスタル

小国ながらプレン国ではね。

祝福の儀で神様から『ギフト』という特別な力を授けて貰えるの。


・・・貰えるそうなんだけど、疑問だらけだった。


「この儀式で使われている水晶ですがね。

 あれは『テレフォン・クリスタル』と呼ばれる物です。」


だからとりあえず儀式で使われている水晶について、勇者達に説明したわ。


「テレフォン・クリスタル・・・?

 名前でなんとなくは想像付くけどさ。

 一体、どんな道具なんだい?」


「遠くにいる相手と連絡を取るための水晶でしてね。

 テレフォン・クリスタル同士で声や映像のやり取りが出来るのです。

 勇者様の世界で例えるなら、TV電話が近いですかね。」


「大方、俺の予想通りか~。

 この世界には随分、都合の良い道具があるんだなぁ。」


「何を言ってるんですか・・・。

 あなたの世界で使われている『スマホ』の方が、よっぽど秀でてるじゃないですか。

 なんなら『神様からギフトを受け取れる水晶玉』なんかよりも、ず~っと現実味のある道具です。」


「それを言っちゃうのはズルくない?」


ただスマホには劣るながら、この世界じゃ結構実用的で、お値段も張るの。

・・・でもねぇ。


「あら~・・・?

 テレフォン・クリスタルって、あんなにおっきかったかしら?

 私が見たやつはもっと小さかったわ。」


「あれは旧型だからね。

 ほら、これを見てよ。」


私はアイテム・ボックスから魔法具の辞典を出し、旧型のテレフォン・クリスタルが載ってるページを勇者達へ見せる。


「!!??」


「お~、ホントだ~。

 この儀式で使われてる水晶玉と同じじゃん。」


「へぇ~。

 こ~して見ると、技術の進歩を感じるわね~。」


「ぴかぴか~♪」


勇者じゃないけど、改めて比較すると本当に辞書の絵と瓜二つね~。


「じゃあこの国でギフトを授けてる神様ってさぁ。

 テレフォン・クリスタルを使って人間と会話してるの?」


「・・・違うと思いますよ。

 神々が使う道具にしては貧相すぎますもの。

 それにテレフォン・クリスタルには他人に力を授ける機能なんか、ありませんしね。」


「へ?」


旧型のテレフォン・クリスタルはあまり遠くの相手とやり取りを行えない上、混線のリスクも高いからねぇ。

新型が出回った今じゃあ、ほぼ使われてないわ。

そんな人間でも使わない道具に縋る神様のどこに威厳があるのやら。


「それにギフトの授け方も無駄にまどろっこしいですしね。

 わざわざ旧型のテレフォン・クリスタルに頼るくらいならですよ?

 『テレパシー』の魔法を使うか、直に力を授けた方が手っ取り早いじゃないですか。」


「た・・・確かにっ!!」


「こらこら、王女。

 そんな浪漫のない事、言わないでよ。」


浪漫とかそういう問題かしら?


「他にもギフトを授ける際に放たれる光ですがね。

 あれはおそらくランク1の魔法『フラッシュ』によるものでしょう。

 そ~いうところも安い演出に拘ってるようで神様らしくないなぁ、と。」


「王女ってば、相も変わらず毒舌だなぁ。」


なんか勇者の中で私は毒舌家認定されてるよ~ね。

・・・どして?


「あれ・・・?

 じゃ、あの水晶から聞こえる声ってさぁ。

 偽者の神様のもの?

 本当に『ギフト』を授けてる訳じゃないの!?」


「おそらくそうでしょうね。

 ・・・そうだと思うのですが。」


「なんだと!?」


ん″?

ど~もさっきから勇者以外の男の人の声がするよ~な・・・。

って。


「あの~。

 あなた一体、誰なの?」


いつの間にか知らない人が話に混じってるじゃない。


「野次馬が俺達の話に興味でも持ったんでしょ。」


「ただの野次馬にしては謎に気品を感じるのですが。」


ま~クロもスルーしてたし、悪意はないんでしょ~が。

でも勇者も気付いてるんなら、言ってくれればい~のに。


「私が何者でも構わないじゃないか・・・。

 それよりもっと詳しい話を聞かせてくれっ!!」


なんかやたらと必死ねぇ。


「話を戻すけど、王女。

 そもそもの話、偽者が神様ごっこなんかして、何の意味があるんだい?

 詐欺目的にしちゃあ、お金を取ってるよ~にも見えないよ。」


「多分、優遇したい人と冷遇したい人を切り分けてるんじゃないですかね?」


「んなっ!?」


野次馬ったら、すんごい驚きようねぇ。


「どゆこと?」


「よくわかんな~い。」


一方、勇者とクロはあんまりピンときてないみたい。


「あのね。テンイ、クロ。

 きっとあの水晶を使って、神様ごっこしてる人はさ。

 この国でえら~い立場にいるおじさんとかなのよ。」


「そなの?」


「んでもって、そのおじさん達にとってさぁ。

 優遇したい子には当たりギフトを授けて、箔を付ける。

 逆に冷遇したい子には外れギフトを授けて、貶す気なのよ。」


「な、な、な・・・。」


私の言いたい事はほとんどエミリーが説明してくれたわね。

だって外にいた見物人も話してたもの。

『この祝福の儀は国の中心となる人物を決める儀式だ』って。


随分と悪辣なやり方だけど。


「話はわかったけどさぁ。

 子供ならともかく、大人がそんなやり口に乗せられたりなんかするかな?」


あら?


「でも勇者様の世界にも中身のない肩書に騙される方は年齢問わず大勢いる。

 ・・・と、例の本に書いてましたよ?

 ならば偽のギフトに惑わされる方がいても、不思議じゃなくないですか?」


「それを突っ込まれると痛いなぁ。」


「私もデルマの意見が正しいとは思うけどさぁ。

 この国の祝福の儀って、数年も続いてるんでしょ。

 だから誰かはギフトの力を目撃してるんじゃない?」


「そ~なのよね~。

 そこがど~しても引っ掛かっちゃって・・・。」


儀式に関する強烈な違和感と一方、そんな儀式が数年間も存続していた事実。

だから誰かはギフトの力を解放し、それを目撃した人だっているはずよ。


・・・やっぱりどんなにおかしく見えてもさぁ。

神様からギフトを授かってるってのは事実なのかしら?





「・・・・・・・・・・・・。

 !!!!

 ない・・・。」





えっ?

ないって、ひょっとして・・・。


「父上が申されていた。

 剣聖などのギフトは強大すぎる故、真の危機が迫るまで、決して使うべからず、と。

 ・・・だからこれまで誰一人として、ギフトの力を発動させた事がないんだ。」


いやいや。

いくら禁止にしようと、ギフトを発動させちゃうよ~な人は必ず出てくるわ。

興味本位とか、力を見せびらかせたいみたいな理由で、さ。


なのにそんな人すら出なかったって事は・・・。


「・・・わかったぞ。偽神の正体はきっとあいつだ。

 エミリーが話していた通り、肥え太った豚のように醜い姿の中年男性・・・。

 そう、この国の大臣に違いない!!」


「別に私は『肥え太った豚』とか『醜い姿』だなんて、一言も言ってないわよ?」


「そもそもこの国の大臣って、肥え太った豚のように醜い姿なの?」


大体、なんで野次馬がそんな事を知ってるのかしら?





「誰が『肥え太った豚のように醜い姿』じゃあ!!

 旅人相手に謂れのない誹謗中傷を・・・。

 こ~の洗濯王子めーーーー!!!!」





え・・・。

えーーーーーーーー!!!!????


「偽神様の正体、本当に大臣だったの!?」


「・・・そ~でしょ~ね。

 だって本物の神様が、この国の大臣の悪口を聞いたところでさぁ。

 あんなに怒鳴り散らす訳ないもの。」


「大臣様っ!?

 いけませんて。

 いくら事実を突かれたからと、ムキになられては・・・。」


「!!??

 あ、いやいや・・・。

 違う違う。」


・・・あれ?

なんかめちゃくちゃ周りがざわついてるんだけどぉ・・・。


「ってか、いつの間にかやたらと注目されてない!?」


「ん~っと、洗濯王子さん?

 ・・・の声がおっきかったからかなぁ。

 た~っくさんの人があたし達の話に興味深々だったよ~♪」


「洗濯王子いうなあっ!!」


・・・気付いてたんなら、言ってちょ~だいよぉ。


「・・・ごほんっ。

 愚かなる洗濯王子よ。

 其方は神を疑うのですか?」


「疑うに決まってるだろ~が!!

 この豚神がっ。」


「誰が豚神じゃあ!?」


「大じ・・・おお、神よ。

 お気を確かに。」


な・・・なんでこ~なっちゃたのかしら・・・?

なんて戸惑ってると、私達の周りに兵士達が!?


「無知な旅人に洗濯王子よ。

 神聖なる儀式を邪魔するなら、出て行くがよい!!」


「その通りよ。

 賢明なる其方らなら、わかるであろう?

 あ奴らの言葉など所詮、戯言・・・。

 当たりギフトを授けられぬ者の僻みに過ぎぬと。

 決して惑わされるでないぞ。」



********



こ~して私達と洗濯王子は教会からつまみ出されたの・・・。

あんな騒ぎを起こして、捕まらなかっただけマシだけどさぁ。


「あ~らま。

 今回はテンイじゃなくて、デルマのせいで騒動が起きちゃったわねぇ。」


「私のせいなの!?」


「俺のせいで騒動が起きた事なんてあんましないからっ。」


・・・どうしてこうなっちゃったのぉ。


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読んで頂き、ありがとうございました。

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