第154話 第4のハーレム編⑳ マサヨシ達との和解
マサヨシ君のモチーフはなろう系ではお馴染み「歪んだ正義感を持つチート能力者」です。
・・・でもこいつ「歪んだ正義感の持ち主」というより「見境ない復讐鬼」の方が近いかもw
この地で騒ぎを起こしていた魔族がアビス様に乗って、故郷へ帰って行く。
あとは異世界人をどうするかね。
「彼らの事はど~しましょう?
・治療費はきちんと払う。
・元気になった途端、私達を襲ったりしない。
この2点を守れるなら、完全に回復してあげてもい~けど。」
エミリーがマサヨシやユキを見ながら呟く。
一応、このまま放置しようが安静にしてれば、いずれ回復するけどね。
それでもすぐに全快するなら、その方がず~っと良いでしょう。
でも彼らとは敵対関係にあったからね。
だからって意地悪したい訳じゃないけど、元気にしすぎるのも考えものよ。
特に魔族を故郷へ帰した件で、マサヨシが怒って暴れ出すかもだし・・・。
「マサヨシ様、ユキ!!
・・・お願い、マシオ様達を助けたいの。
だからエミリーの言い分を受け入れて!!」
「お願いしますっ。」
彼らのハーレム要員もその2人が一番、私達を敵視してると判断したのでしょう。
涙ながらに言い分を受け入れるよう、懇願したわ。
でもマサヨシに彼女達の言葉は届かない。
だけど私達への敵意も感じられず、呆然とした様子でひたすら何かを呟くばかり。
「姫よ・・・。
俺は間違ってたのか?
全ての魔族が悪い訳じゃなかったのか!?」
酷い仕打ちをした自分達に逆襲する事なく、魔族は去って行った。
それが彼にとって相当、衝撃的だったみたい。
「そうだよ。
人間だって、良い奴もいれば悪い奴もいるじゃないか。
それは魔族も同じだと思うよ。」
「テンイ?」
「それに姫もさ。
君が見境もなく、誰かを傷付けるような奴になって欲しくないって・・・。
そう願ってたと思うよ。」
何故か私の方を見ながら、勇者はマサヨシを説得する。
・・・まあ私は何があっても死にたくないけどね。
でも仮に命を落としたとしても、それで勇者が罪の無い誰かを苦しめるようになったら、悲しいわ。
「!!!!
姫・・・姫っ!!
うっ、うっ・・・。」
「・・・マサヨシ様。」
泣きじゃくるマサヨシと彼へ擦り寄るユキ。
そして彼らを悲しそうな顔で見つめるマシオ達。
なんとなくだけれど、彼らの中の粗暴な部分が霧散した・・・。
そんな気がしたの。
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「あれほど迷惑を掛けたにも関わらず、私達を助けて頂き、本当にありがとうございました。
エミリーさん、皆さん。」
「い~え~、い~のよ。
ユキ様♪」
「・・・お金の力って本当に凄いですね。」
多分、治療しても大丈夫だろうと判断し、エミリーはマサヨシ達にも本格的な回復を施したわ。
その結果、彼らはすっかり元気になったの。
そして予想通り、元気になったからと彼らが暴れ出す事はなかった。
ちなみに治療費については『お金、持ってそうだから1人につき金貨100枚』な~んて話すエミリーにね。
彼らは躊躇する事なく言い値で支払ったわ。
まるで定食屋でご飯代を払うかのようなノリで、ね。
さすがは異世界人ってところかしら。
並外れた力の持ち主だけにとんでもなく稼いでるようねぇ。
「テンイ、これだけは言っておく。
俺はこれからも『悪しき』魔族に手心を加える気は無い。
奴らが人々へ危害を加える限り、容赦なく叩きのめすつもりだ!!」
「・・・。」
「・・・だが罪の無い魔族にまで手を出すのはもう止めだ。
そんな真似はきっと姫も望まないからな。」
「ようやくわかってくれたんだね!!」
まだぶっきらぼうながらも、マサヨシは多少ながら態度を軟化させる。
「俺達はお前とは違う!!
こんな物騒な世界で不殺を貫こうなんて所詮、恵まれた奴らの舐めプだ。
生き抜くためにも人殺しを躊躇う気はない。
・・・だがな。」
「だからと言って、異常者になる気はね~よ。
死刑になっても文句を言えね~よ~な悪党以外、ぶっ殺す気はないんだ。
勘違いすんなよっ!!」
「命を奪う事の重みくらい、ちゃんと理解してるんだ。
あんま俺達の事、軽くみんな・・・。」
「・・・そっか。
この前はあんな言い方して、本当にごめんね。」
マシオ達も今回の一件でだいぶ棘が抜けたみたい。
あ~、良かった~。
「だけど魔族の子供を攫った連中だけは許せないわ・・・。
あいつらのせいで皆、酷い目にあったんだからね!!」
「そ~よ、そ~よ!!
マシオ様。
子供達を攫った奴らを見つけ出して、罰を与えましょう!!」
「その件ですがね・・・。
子供達を攫った小悪党共は全員、素っ裸で縛られた挙句、目立つ場所に放り出されてました。
ご丁寧にも『私達が魔族の子供を攫いました。そのせいで町が魔族に襲われました』。
なんて張り紙までありましたよ。」
「「「「「「「「そうなの!??」」」」」」」」
あら~・・・。
「おそらく『彼女』の仕業でしょうね。」
「そうでしょ~ね。
それなら子供達を攫った連中にも罰が与えられるかしら。」
無闇に暴れた魔族も悪いけれど、一番の悪党は罪のない子供達を攫った誘拐犯だものね。
何事も元凶こそが一番に裁かれるべきよ。
「では皆様。
私達はこの件を報告するため、町へ戻ります。
またご縁がありましたら、お会いしましょう。」
「じゃあ行こうか、ユキ。
皆。」
「はい、マサヨシ様。」
こうしてマサヨシとユキは手を取り合いながら、この場を去って行った。
それにマシオ達や彼らのハーレム要員も続く。
これで今回の一件は全て、解決したよ~ね。
何もかもが紙一重だったけど、誰一人犠牲者が出ずに済んで良かったわ。
「魔族は皆、故郷へ送ったぞ。」
あ。
「アビス!!
いつもありがとう。
・・・でも。」
「そ~ですねぇ。
これからは迂闊にアビス様に頼るのは良くないかもですね。
大事なお役目もある訳ですし。」
世界の危機がど~とかってのは、表現が大袈裟すぎてあまりピンとこないけれど。
ただどちらにせよアビス様なりの事情があるのは事実だし、それを邪魔するのは好ましくないわ。
「やはり違う魔物も召喚出来るようになるべきですかね?
仮に理から外れた魔物が召喚されたとしても・・・。」
「・・・その方が良いかもね。」
アビス様並の力と知恵を持つ存在なんて、中々いないと思うけどさ。
とは言え、召喚魔法による恩恵は大きいからね。
アビス様が無理なら、代わりとなる強者を召喚出来るようにしておかないと。
「そう邪見にせずに、何か良い案は無いのか?
デルマよ。」
「へっ!?
一応はありますが、あまりに失礼な方法ですよ。
さすがに口に出すのは・・・。」
「構わん。
言ってみるが良い。」
・・・なら言うだけ言ってみましょうか。
強制じゃないんだし、嫌なら拒絶するでしょう。
「簡単な話です。
勇者様とアビス様が契約を結ぶ事で、今回のような一件は解決します。」