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第153話 第4のハーレム編⑲ 故郷へ

異世界人と魔族による激しい争いは幕を下ろすも、怪我人続出でエミリーは大忙し。

しかも魔族の強制送還用に召喚したアビス様の怪我まで治療する羽目になっちゃうんだから、大変ねぇ。

間違いなくこの戦いの陰の功労者だわ。


でもそんな彼女を更に働かせようと目論むお子様が登場!?





「ねぇ、エミリーお姉ちゃん。

 お願い、お父さんをもっと元気にしてあげて!!」





そう。

魔族の子供シファからもっと父親を元気にして欲しいとせがまれたの。


「はぁ・・・。

 そんなに心配しなくて大丈夫よ。

 安静にしてりゃ~、1~2か月くらいで元気になるでしょ~から。」


「1~2か月も!??

 そんなに長い間、ず~っとお父さんは苦しんじゃうの?

 ヤダよ、そんなの。」


・・・いくら死ななかったとしても、出来る事ならもっと治療して欲しいわよねぇ。

だけどエミリーはどれほどせがまれようと、シファのお父さんを回復しようとしない。


「エミリー!!

 お金ならいくら請求しても構わないからさ・・・。

 だから彼らをもっと治療してあげられない?」


「いえ・・・勇者様。

 今回ばかりはエミリーもお金云々を理由に回復を拒んでいる訳ではありません。」


「へ・・・?」


子供達に同情するあまり、勇者は肝心な所が頭から抜けちゃってるわ。


「ここで魔族を治療してはですね。

 彼らが異世界人やそのハーレム達に害を成す恐れがあります。

 それを警戒し、エミリーは死なない程度の治療に留めたのです。」


「あっ!?」


「そそっ、デルマの言う通りかしら。

 無駄に元気にしすぎて、また暴れ出されてもさぁ。

 こっちとしちゃあ迷惑なのよ。」


勇者は軽く物事を考え過ぎたり、目先の感情に囚われがちなのが短所ね~・・・。

それでも説明なんかで納得すれば受け入れる度量があるだけ、良い方だけど。


「聖女エミリー!!

 そんな魔族よりもマシオ様達を回復しなさいよ!!」


「・・・同じ人間じゃない。」


その話を聞いて、今度はマシオ達のハーレム要員がエミリーに治療を要求する始末。


「あのねぇ。異世界人を回復する方が私達にとって危険じゃない!?

 応急処置は済んだんだから、しばらく安静にすれば命に別状はないわ。

 それで我慢なさい。」


「そんな、酷い・・・。」


「身内の心配が出来るだけ、山賊王のハーレム要員よかマシだけどさぁ。

 あなたの仲間が私達へ何をしたか、少しは考えなさいよ。」


実際、魔族以上に異世界人を回復させる方が危険だからねぇ。

特にランク5のスキルが使えるマサヨシと、NINJAのスキルでどんなバリアもすり抜けるユキはさ。

勇者やエミリーのような強者でさえ、脅威となる程よ。


「「「「「「「「・・・。」」」」」」」」


先ほどまでの振る舞いからこれ以上の回復を拒まれ、人間も魔族も俯くばかり。

それでもシファは父親を想い、諦めなかったの。





「だったら僕が皆に代わって、約束する。

 どんなに元気になっても絶対、ここにいる人達を傷付けないって約束する!!

 だからお願い・・・父さん達を回復して。」





例え、恨み多き人間に手は出さないと誓おうと、ね。

それで父親が元気になるならば・・・と。


「なっ!?」


「いやさぁ・・・。

 あなたが本心からそ~言ってるのはわかるんだけどねぇ。

 でもダメな大人は子供のお願いなんて、簡単に踏みにじっちゃうもんだし。」


「父さんはダメなんかじゃないもんっ!!」


シファの熱意にさすがの闇聖女も押され掛けてるわね。

あれでエミリーも割とお人好しだからねぇ。


「嘘だっ!!

 俺達を傷付けないだなんて、そのガキのでたらめだっ!!」


だけど横から話を聞いてたマサヨシが大声で反論する。


「貴様らは人間が憎いんだろう・・・?

 貴様らを誘拐した奴らも、父親を傷付けた俺達も憎いんだろう!?

 なのに俺達を傷付けないだなんて、そんな約束が出来るものかぁああああ!!!!」


「出来るもんっ!!

 だって父さん達が元気な方が良いから・・・。

 皆が元気になるなら、お前達への仕返しなんかど~でも良いもんっ!!」


「!!??

 ・・・仕返しなんか、どうでも良いだと!?

 悪しき魔族の分際で、どうして・・・。」


しかしマサヨシの言葉なんかで、シファの心が揺らぐ事はなかったわ。

逆にマサヨシがシファの決意を目の当たりにし、動揺を露わにする始末。





「ねえ、エミリー。

 やっぱり魔族を回復してあげて。

 もしもの時の責任は俺が持つから!!」


「テンイお兄ちゃん!!」


「俺も信じるから・・・。

 シファのお父さんは子供の決意を踏みにじったりしないって。

 そんな大人じゃないって、信じるから!!」





・・・う~ん。

やっぱりどう考えてもリスクが大きすぎるわ。


でも何故でしょう?

感情任せに動いてるだけの勇者が、なんで眩しく見えちゃうんでしょう・・・。


「・・・しょ~がないわねぇ。

 そこまで言うなら回復してあげるわよ。

 だけど治療費はしっかり頂くからね。」


「エミリーお姉ちゃん!!」


「けど1人1人を相手にするのも面倒だから『ラージ・ヒール』で全員一気に回復するわ。

 デルマ、クロ。

 傷だらけの魔族を一ヵ所に集めてちょ~だい。」


「わかったわ。」


「は~い。」


こうして傷だらけの魔族は、エミリーの回復魔法の力で全快したの。


・・・。

(¬д¬。) ジーーーッ。


「そう警戒するな、デルマ。

 恩人である貴様らの願いを無視し、奴らに危害を加えたりなどせん。」


「・・・子供の願いを踏みにじるような、そんな大人になりたくないからな。」


けれど私の心配とは裏腹にね。

魔族はシファの決意を踏みにじるような真似をしなかったわ。


「きっと俺達は間違ってたのだろう。

 子供を攫った元凶そのものに報復するのは良いにしても、だ。

 同じ町に住んでるからと、見境なく危害を加えようとするなんて、な。」


「なんでだ・・・。

 何故、憎き俺達へ手を出そうとしない。

 奴らも『あいつら』と同じ魔族じゃないか!?

 ・・・なのにどうして。」


「マサヨシ様・・・。」


とにかく魔族が矛を収めてくれて良かったわ。

・・・じゃあそろそろかしらね。


「では勇者様。

 時間も経ちましたし、アビス様を呼びましょう。」


すっかり『強化』の効果が消えた勇者へ、私はアビス様の再召喚をお願いした。





「わかった。

 エンシェントドラゴン・サモン!!」


「ウォオオオオオオオオンンンンンンンン!!!!!!!!」





うん。

まだ傷が目立つけど、さっき呼んだ時と比べたらだいぶ、元気そうね。


「もう大事な戦いは終わったかい?

 アビス。」


「うむ。おかげで無事、勝利する事が出来た。

 礼を言うぞ。テンイ、エミリー。

 ・・・そしてデルマよ。」


「えっ!?

 私も!!」


特にお礼を言われるような事なんて、してないわよ。


「あ~、まだ治療が途中だったわねぇ。

 これからアビス様にはもう一仕事してもらう訳だし、治療の続きとしましょ~か。

 仕事を依頼する側も、依頼される側のフォローはしなきゃね。」


「ぬ・・・。

 そう言えば、今回は何用で我を呼んだのだ?

 随分と力の強い者が集まってるようだが。」


「実はね、アビス・・・。」


アビス様に質問され、勇者は事情を説明した後、魔族を故郷へ帰して欲しいと依頼する。


「・・・ふむ。

 そんな些事だったか。

 あいわかった、引き受けよう。」


「ありがとう。

 アビス!!

 じゃあ魔族の皆、アビス様の背中へ乗って乗って。」


本当に些事を引き受けるかのようなノリでアビス様は勇者の頼みを聞き入れたわ。

一方、魔族はアビス様の存在に戸惑いつつも、特に反対する事無くかの方の背へ乗って行く。

・・・子供達だけは無邪気にはしゃぐばかりで、大物だなぁと思わずにはいられなかったけれど。


「あの・・・。

 アビス様は、その・・・。

 魔族を敵視しないのですか?」


アビス様の存在感に気圧されつつも、ユキが質問を投げかける。


「別に我からすれば、人間も魔族も似たようなものだからな。」


「似たようなもの。

 ・・・。」


初めてアビス様を召喚した時も近くに魔族がいたけど、あの方は特に気に留めてなかったわ。

だからアビス様が魔族を特別敵視していないのは確かね。





「・・・だが我とて、注目せずにはいられない魔族も存在する。」


「!!!!」





でもそんなアビス様ですらヴェリアを見、そのような事を言い出したの。

敵視こそしてなさそうだけど、警戒せずにはいられない・・・。

そんな感じね。


「しかしかのような者こそ、あらゆる可能性を秘めているやもしれん。

 それが世界の破滅をより早めるか、あるいは救世主へとなりうるのか。

 そこまでは分からぬがな。」


「ってか、ヴェリアは・・・。

 ヴェリアも故郷へ帰った方が良いんじゃない?

 良いでしょ、アビス!!」


「我は送ってやっても構わぬぞ?

 だが肝心の娘が拒むようでは・・・な。」


口に出さないだけで、実は帰りたがってた魔族とは違う。

ヴェリアは決してアビス様へ近寄ろうとはしない。

別にあの方を警戒してるんじゃなくて、きっと・・・。


「俺は帰らない・・・。

 こんな生まれだ。

 だから故郷に居場所なんか、ね~んだよ。

 ま、それは人間の世界でも同じだがな。」


「・・・でも。」


「俺はいいから、せめてあいつらだけでも故郷へ帰してやってくれ。

 あとお前ら、俺の事は黙ってろよ。

 じゃあな。」


そう言いながら、ヴェリアは空中を舞い、飛び去って行ったの。

彼女はどこへ行くのかしら。


「ヴェリア!!

 ヴェリア・・・。」


「・・・さてと。

 エミリーの回復魔法のおかげで、我もすっかり元気となった。

 では魔族を故郷へ送るとしよう。

 全員、我の背に乗ったか?」


「大丈夫だ。

 ・・・。

 テンイ。」


「えっ?」


そしていざ、アビス様が出発しようとした所で魔族の一人・・・。

シファのお父さんが勇者へ声を掛ける。


「迷惑を掛けて済まなかった。

 ・・・そしてありがとう。

 人間の地で孤独に過ごしていた我らを故郷へ帰してくれて。」


「・・・。

 故郷へ帰れそうで良かったね。

 出来ればもう人間を敵視しないでくれると、嬉しいかな。」


「これ以上、手を出されなければ、な。

 ではさらばだ。」


「「「「「「ありがと~~~~!!!!」」」」」」


こうして子供達から手を振られながら、魔族は故郷へ帰って行ったわ。

アビス様の背に乗って。


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読んで頂き、ありがとうございました。

少しでも「続きが気になる!」「面白い!」と思って頂けたら、評価★★★★★と、ブックマークを頂ければと思います。

どうぞよろしくお願いします。
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