第151話 第4のハーレム編⑰ 勇者VSヴェリア
いつの間にか本作について感想が書かれていたので驚きましたw
時間の都合上、返信を行う事は難しく、その点は申し訳ありませんが、ありがとうございます。
王女を筆頭に一人前のハーレム要員とはほど遠い連中ばかりがメインを張るヘンテコな作品ですが、今後もご愛読いただけると幸いです。
「行くぞ・・・。
強化!!」
異世界人と魔族の争いの最中、その力を暴走させ、全てを破壊しようとするヴェリア。
そんな彼女を止めるため、勇者はランク1のスキル『強化』を使い、突撃したの!!
「うぉおおおおおおおお!!!!!!!!」
「・・・また貴様か。
邪魔をするなっ!!」
さっきと同じように勇者を突き飛ばそうとするも、彼はビクともしなかったわ。
『強化』により、規格外のパワーを得た故に・・・。
「ち・・・。
はあっ!!」
段違いに強化された勇者を警戒し、ヴェリアは彼に向かって拳を叩き付けたの!!
これまでの羽虫を払うかのような対応と違い、一切の容赦もない一撃よ。
「うわっ!?
う・・・腕が痺れちゃった。
凄いパワーだな。」
「!!??」
けれど両腕で攻撃をガードした勇者にこれといったダメージはない。
幾分か後ろに押しのけられるだけで済んだわ。
「ランク1のスキルで、ヴェリアの一撃を耐えた!??
まさか本当にテンイさんはっ・・・。」
勇者の凄まじさに驚いてるユキだけど、私はそれどころじゃなかったの。
「・・・ど~しましょう?
・・・ど~しましょう!!
私のせいで、勇者が、勇者が危険な目にっ!!」
勇者は『強化』により、的確にガードすればあのヴェリアとの渡り合える程に肉体が強化された。
しかし逆に言えば、攻撃をガードし損ねたら、大きなダメージを受けかねない程度の実力差しかなさそうだったの。
だから勇者の立ち回り次第じゃ、彼が大怪我負ったり、死んじゃう可能性も0じゃない訳で・・・。
「う~・・・。
私が軽はずみにあんな事を言わなければ・・・。
それに何であの時、私は勇者の腕を離して・・・。」
勇者を無事、元の世界へ帰す事こそが私の使命・・・。
なのに迂闊な真似ばかりして、逆に彼を危険に晒しちゃうなんて・・・。
「あ~、もうっ!!
いつまでもウダウダしないのっ。
今は後悔なんかしてる場合じゃないでしょ?」
・・・・・・。
確かにエミリーの言う通りね。
ただでさえ、能力の劣る私が取り乱したんじゃあ、単なる足手纏いでしかないわ。
焦らないで深呼吸、深呼吸・・・と。
「そうね、エミリー。
後悔なんか、後回しよ。
後回し!!」
「そ~そ~。
その図太さこそ、あなたの持ち味の一つなんだから♪」
「その言い草はど~なのよ・・・。」
とにかく勇者が頑張ってるんだから、私も出来るだけの事はしなきゃ。
・・・まずは。
「とりあえず、マサヨシの救助からよ!!
コール!!」
可能な限り、ヴェリアによる犠牲者を減らすため、彼を『コール』の魔法で呼び寄せる。
「マサヨシ様!!」
「しっかしマサヨシったら、まだ息があったのね。
と言うか、これは・・・。」
マサヨシの状態を観察しつつ、エミリーが回復魔法を使う。
すると、今にも死にそうだったマサヨシの表情にわずかながら生気が戻ったの。
「お・・・まえ、ら。
なん、でっ。」
マサヨシってば、私やエミリーに助けられた事に動揺してるみたい。
「マサヨシ様!!」
「『今回は』ギリギリ急所から外れてたみたいねぇ。
マサヨシの悪運が強いのか、それとも・・・。」
エミリーがマサヨシの応急処置を行っている間にも勇者とヴェリアの戦いは続いている。
「はあっ!!」
「・・・。」
猛スピードで突撃する勇者と、それを迎え撃つつもりか拳を構えるヴェリア。
けれどヴェリアが拳を突き出した瞬間、勇者はジャンプでヴェリアを飛び越し、彼女の背後を取ったの。
そしてすかさず彼女を後ろから羽交い絞めにする。
「!!??」
「今だっ。
エミリー!!」
「りょ~かいっ。
オール・リフレッシュ!!」
勇者の合図と共に、マサヨシの応急処置を終えたエミリーがすかさず『オール・リフレッシュ』を使う。
あらゆる悪い効果を直すこの魔法なら、ヴェリアだって元の状態に戻るはず!!
・・・と思ったのだけど。
「?・・・。
何のつもりだ?」
「効いてない!?
この魔法はどんな悪い状態だって治せるんだよ!!」
ヴェリアの状態は全く変わらなかったわ。
「・・・何が『悪い状態』だ?
勘違いも甚だしいわっ!!」
動揺し、力を弱めた勇者の顔に向かい、すかさず肘鉄を入れた後、後ろ蹴りで胴体を蹴り飛ばすヴェリア。
「があっ!??
ぐ・・・う・・・。」
「勇者!??」
このコンボはかなり効いたのか、勇者は苦しそうにしている。
でも彼は倒れる事無く、踏ん張っていた。
「へ・・・平気だよ、王女。
こんな痛みくらい、剣道の修行じゃいつもの事だったから、ね。」
って、平和な世界でどれだけ激しい修行を積んでたのよ!?
勇者ったら。
「・・・。
そのやせ我慢がいつまで続くかなっ!!」
己に食らいつく勇者にヒートアップしたのか、ヴェリアの動きが一層激しくなったわ。
でも、どうして・・・。
「なんでエミリーの『オール・リフレッシュ』が効かなかったの?
・・・まさかヴェリアには回復魔法の耐性が!?」
回復魔法は元々の使い手が希少な上、耐性を持ったところで何らメリットがない。
だから回復魔法が効かない生物なんてまずいないはずだけど・・・。
「い~え・・・。
あの反応は『オール・リフレッシュ』の効果を弾いたんじゃない。
・・・ヴェリアにとって、あの状態はなんら『悪い状態』じゃなかったのよ。」
「え~っと。
つまりあの怖ろしい姿もヴェリアからしたら、ごくごく自然な状態なの?」
「ま、そ~いう事でしょ~ね。」
嘘ぉ!??
いや・・・。
だとしても・・・。
「それでもヴェリアがあ~なったのには、必ず原因があるはずなのよ!!
その原因さえ分かれば、元にだって戻せるはずなのっ。」
けれど何が原因でヴェリアは暴走してるの!?
「・・・もしかして、虐めたから?
ヴェリアさんがあ~なったのってさ・・・。
マサヨシさん達が魔族を虐めたからなの?」
・・・・・・えっ!?
「そ~だ、クロの言う通りだ!!」
「あなた達がお父さん達を虐めたせいだ・・・。
だからヴェリアさんはあんな風になっちゃったんだ!!」
「何が『虐めたから』ですか!?
元はと言えば、あなた方の親が人間に悪さしたせいで、こんな事になったのですよ!!」
「先に僕達を攫ったのは人間の方じゃないかっ!!」
・・・・・・。
「はいはい。言い争いしないの~。
あのね、クロ・・・。
『魔族を虐めた』から、化物みたいに強くなる事なんてないわ。」
「え~・・・。
でも・・・。」
「ま、あなたの言い分もある意味、正解なんだけどね。
でも世の中、そ~いうもんだからさぁ。」
・・・エミリーは何も間違った事を話していない。
この世界には『魔族を虐めた』から、姿形が変貌し、化物のように強くなる技術なんてない。
そんな魔法もスキルも特性も存在しないわ。
・・・でもクロの言ってる事も間違ってはいない。
マサヨシ達が魔族を虐げたせいで、ヴェリアが変貌したのは紛れもない事実よ。
つまり魔族を虐げた事でヴェリアに『何か』が起こり、その『何か』が彼女をあんな風に変貌させた訳で・・・。
・・・・・・・・・・・・あっ!?
「わかったわ!!
エミリー、あの魔法よ!!
あの魔法を使えば、きっとヴェリアを元に戻せるっ!!」
私は急いでエミリーにヴェリアを元に戻すための魔法を伝える。
「ええっ!??
んな魔法でっ!?
・・・ま~一応、筋は通ってるけどさぁ。」
これでヴェリアを元に戻す算段は付いたわっ。
後は勇者がもう一度、ヴェリアを抑えてくれたら・・・。
「・・・これくらいじゃ、俺は倒れないよ。」
でも勇者ったら、ヴェリアから相当攻撃を受けたみたいで、結構なダメージを受けてるの。
元々彼が得意とするのは剣技で、格闘技は門外漢だからねぇ。
ただその一方、必死で喰らいつく勇者にヴェリアも幾分か動揺している。
「何故・・・だ。
何故、まだ動けるのだ・・・?」
「君に誰も殺させないため、さ。
だからここで倒れる訳にはいかないん・・・だ!!」
歯を食いしばりつつ、勇者はヴェリアの暴走を止めようと前へ進む。
「余計なお世話だ!!」
そんな勇者に向かってヴェリアは手刀を作り、遠慮なく胴体を貫こうとしたの。
あの時、マサヨシを貫いたように・・・。
だけど勇者は腹筋に力を籠め、彼女の手刀で貫かれるのを防ぐ。
「なっ!?」
動揺したヴェリアの手を弾き、勇者は彼女を暴れさせないため、その全身を抱きしめる!!
「!!??」
「今だ!!
エミリー!!」
そして勇者の合図に従い、エミリーがとある魔法を発動させる!!
「・・・こ~なりゃ、ダメで元々。
やってやろうじゃないのっ。
メンタル・リフレーーーーッシュ!!!!」
そう。
対象の精神を落ち着かせる魔法『メンタル・リフレッシュ』を。
「!!!!
・・・ぎっ。
ぎゃああああああああ!!!!????」
「うっわぁ。
この魔法で『ぎゃー』なんて叫ぶ人、初めて見たわ・・・。」
そりゃ~元は心を落ち着かせるための魔法だからね。
「力が・・・抜けていく・・・?
・・・おのれ、聖女エミリー!!
一体、我に何をしたのだ!?」
「デルマ。
説明してあげなさい。」
私が!?
ま・・・い~けど。
「あなたが姿を変え、あれほど強大な力を得たのはね・・・。
マサヨシ達が魔族を虐げたから。
・・・そして残虐な彼らに怒り狂ったからよ。」
「だからなんだと言うのだっ!??」
「怒ったせいで、姿が変わっちゃったんならさ。
その怒りを鎮めたら、元に戻ると思ったの。
だからエミリーの『メンタル・リフレッシュ』で錯乱したあなたを落ち着かせたのよ。」
「!!??
我の怒りが、そんな下らぬ魔法で鎮められたというのか・・・?」
表面上は冷徹ぶっても、変貌したヴェリアが激しい怒りに囚われてたのは紛れもない事実だもの。
精神を落ち着かせる魔法が刺さるのも当然よね。
「・・・テンイとその仲間達よ。
今回は我の負けを認めよう。
だがヴェリアの心の闇が消えぬ限り、我もまた消えぬ。」
「ヴェリア・・・。」
「そのような小細工がいつまでも通用すると思うなよ?
ヴェリアが闇に染まりし時、我は完全に蘇る。
この世界の全てを破壊するために・・・。」
・・・んな物騒な事、企まないでちょ~だいよ。
「その日が来るまで束の間の平和をせいぜい楽しむが・・・良い。」
そう言い残した後、ヴェリアの肌色が人間のものから漆黒の魔族のものへと変わる。
「もう大丈夫です、勇者様・・・。
だからヴェリアを離してください。
このまま抱き着いていては、彼女を握り潰してしまいますよ?」
「うわっと!?」
勇者の『強化』のパワーは凄すぎるからねぇ。
私の忠告に彼は急ぎヴェリアを離す。
でもこれでヴェリアの暴走も収まったようね。
勇者もしんどそうではあるけど、特に大きな怪我もないし、何はともあれ一安心かしら。