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第148話 第4のハーレム編⑭ 正義の果てに

「俺の正義が歪んでいる、だと?

 だからどうした・・・そんな下らない事なんか知るか。

 誰が語ろうが正義なんてものは、最初から歪み切ってるんだよ!!」





えっ!?





「それはどんな奴の正義だろうが同じだ。

 現実で偉ぶってる奴が語る正義も、携帯小説の主人公が語る正義も本質は一緒さ。

 自分のエゴを気持ち良く押し通すための下らない方便に過ぎない。

 ・・・所詮、正義なんてものはその程度の薄っぺらいものなんだよ!!」


己の正義に溺れ、魔族を滅ぼそうとする異世界人マサヨシ。

そんな彼から放たれたのは『正義』そのものを罵倒する言葉だった。


おかしいわね・・・。

とても歪んだ正義に溺れた人の言葉とは思えないわ。


「・・・いや。

 それは言い過ぎじゃないかな?」


「言い過ぎなものか。

 だがそれでも俺は己の正義を貫くんだ・・・。

 悪しき魔族へ正義の鉄槌を下すためにな!!」


「なんで、そこまで・・・。」


「・・・・・・・・・・・・。

 俺も最初は『魔族は滅ぼすべき悪』だなんて、思ってなかった。

 ・・・所詮『勇者召喚』なんぞしでかす輩の戯言だからな。

 赤の他人を戦争の駒にしようと目論む、クズ共の言葉なんか信じられるものか。」


勇者との会話で何かが刺激されたのでしょう。

マサヨシは話を続ける。


「でも姫だけは違った・・・。

 拷問のような修行を課す城の輩から、身を挺して庇ってくれた。

 危険な戦いに巻き込んだ事を申し訳なく思い、寝る間も惜しんで元の世界へ帰す方法を探してくれた。

 ・・・罪悪感もあったにせよ、姫だけは心の底から俺に優しくしてくれたんだ。」


「どっかで聞いたような話ね・・・。」


「うんっ。」


ど~してエミリーやクロは私の方をじ~っと見つめてくるのかしら?

それはさておくとして、話の流れ的になんだか嫌な結末しか想像出来ない。


「だがそんなある日、俺を召喚した国に魔族が攻めて来たんだ!!

 ・・・本物の殺意の前に俺は何も出来ず、姫を・・・姫を死なせてしまったんだっ。」


「なんだってっ!?」


「どうして姫を殺したんだと叫ぶ俺に魔族はこう答えたよ・・・。

 『そいつは身勝手な理由で大勢の同胞を殺した者の娘だから』と。

 姫自身は一切、魔族に危害を加えてないにも関わらず、奴らはそう答えたんだ!!」


・・・魔族は自分達を襲撃した者、襲撃を命じた国を決して許さず、徹底的に滅ぼし尽くすと聞く。

でもそれは直接害を成した者に限らず、害を成した者の血縁者まで対象なの!?


「きっとそれが魔族なりの『正義』だったんだろうな・・・。

 だがその答えを聞いた瞬間、俺は理性を失ったよ。

 そして気付いた時には、国を襲って来た魔族を全員、血祭りにあげていたんだ。

 ・・・だが優しかった姫はもう戻ってこない。」


マサヨシの強すぎる激情に私達は言葉を失う。


「俺を勇者召喚した輩は既に死に絶えた。が、誓ったんだ・・・。

 姫の無念を晴らすため、必ず悪しき魔族を殺し尽くす、と。

 そしてそれこそ俺の成すべき『正義』なんだと!!」


「そ・・・そんなの・・・。」


「こうして正義と正義がぶつかり合う事で、不幸になる奴らはどんどん増えていくだろう。

 だが構わないさ。

 ・・・悪しき魔族を皆殺しに出来るんならなあっ!!」


なんて激しい怒りなのかしら。

これがマサヨシが歪んだ正義を抱いてしまった理由・・・。





「そんなの、間違っている!!」





けれどマサヨシの抱える狂気を勇者が力強く否定する。


「間違ってる・・・だと。」


「君の大切な姫を殺してしまった魔族も・・・。

 罪の無い魔族の子供達を殺めようとする君も・・・。

 どっちも間違ってる、間違ってるんだ!!」


「・・・何が間違ってる、だ。

 ここにいる魔族達はなぁ。

 ガキが誘拐されたからって、関係無い奴にまで危害を加えようとするカスの集まりだぞ?

 皆殺しにでもした方が世のため、人のためだろうが・・・。」


「うっ!?」


確かにここにいる魔族が一から十まで正義だなんて、とても言えないわ。

でもね。


「ま、大人の魔族に対してはあんたの言い分も通るかもね。

 でも子供の魔族には何の罪もないじゃない。

 あの子達まで殺そうだなんて、あなたの大切な姫を殺した魔族と何が違うのよ?」


「!!??

 黙れ・・・。

 黙れ黙れ黙れ黙れ、黙れーーーーーーーー!!!!!!!!」


容赦無さすぎる言い方だけど、エミリーの言う通りよ。


「マシオ、ノリアキ、ハルマ!!

 一斉攻撃だ!!

 テンイも奴のハーレム要員も、魔族もろとも皆殺しだーーーー!!!!」


「「「おうっ!!」」」


激怒したマサヨシはマシオ達と共に一斉攻撃を仕掛ける。


「やめろ・・・。

 やめろ・・・。」


もう彼らにヴェリアの制止なんて、届かない。


「五の奥義・秘剣・タケミカヅチ!!」


「四の奥義・火炎弾幕拳!!」


「フォース・アイス・ブロック!!」


「フォース・ロック・バレット!!」


って、ランク5の攻撃に、ランク4の攻撃3発!??

一国だって、滅んじゃうわよ・・・。


「あ、あ、あ・・・。」


「やったか!?

 ・・・んなっ!!」


「「「!!??」」」


だけどエミリーのバリアは壊せない。

勇者の力で強度が増した事により、異世界人の一斉攻撃すら寄せ付けない程になっている。


「そん・・・な・・・。

 なんなんだよ、お前ら・・・。

 なんなんだよーーーー!!??」


マシオが絶叫し、他の3人もこの結果には呆然としてるわ。

だからと言って、私達の置かれた状況はちっとも良くなっていないけれど。


こんな状況じゃあ、もしマサヨシ達がバリアの外にいる魔族へ矛先を向けたら、まず助けられない。

そして、それ以上に・・・。


「来た!!

 ・・・デルマお姉ちゃん。

 『あの人』がやって来た!!」


「本当に厄介ですね。

 その黒猫族の子供は・・・。

 しかし気付くだけでは、どうにもなりませんよ?」


万一に備え、クロに全力で警戒するよう、頼んでおいたんだけど、本当にこの状況でやってくるなんて。


「ユキ・・・?

 お前、いつの間に。」


「・・・マズい、マズいわっ!!」


「って、何がマズいの、王女。

 いくらユキがNINJAだとしてもさぁ。

 さすがにマサヨシ達の方が強いでしょ?」


勇者の言う通り、純粋な戦闘力ならユキは異世界人に遠く及ばないでしょう。

だけどね。





「すり抜け。」





彼女はNINJAのスキル『すり抜け』を発動し、異世界人ですら壊せなかったエミリー(+勇者)のバリアをすり抜けちゃったの!!


「「「「「「なっ!??」」」」」」


「パラライズ・サンダー!!」


「!??

 変わり身!!」


バリアの中で暴れられる前にユキへ向かって、ランク1の雷魔法を使う。

これは紫色の雷を放ち、相手の体を麻痺させる魔法よ。


けれど彼女は咄嗟にスキル『変わり身』を使い、丸太を囮に私の魔法を回避。

『変わり身』の瞬間移動の効果が発動した事により、一旦は彼女をバリアの外へ追い出せたけど・・・。


「私がバリアをすり抜ける事を読んでいましたか。

 ・・・デルマ。

 あなたも大概、厄介な人ですね。」


「王女!!

 まさか『すり抜け』って・・・。」


「はい、これもNINJAが得意とするスキルでしてね。

 壁やバリアなどの防御魔法をすり抜ける事が出来るのですよ。」


しかもこの通り、エミリーと勇者が協力して貼ったバリアすら、すり抜けちゃうわ。

一応、考慮はしてたけどさぁ。

まさか本当に『すり抜け』を修得済だったなんて。


・・・本当にどうしましょう。

今の状況はあまりにもマズすぎる!!

だって『すり抜け』は・・・。


「この通りです、マサヨシ様。

 ・・・さあ、私と手を繋ぎましょう。」


「えっ!?」


「スキル『すり抜け』は私と手を繋いだ者にも効果が発揮されます。

 如何に強固な聖女のバリアでも、内部に侵入してしまえば意味を成しません。」


「なるほど、なるほど・・・。

 さすがだよ、ユキ!!

 君は本当に頼れるなっ!!」


やっぱり、知っていたのねーーーーーーーー!!!!!!!!


「・・・ねえ、デルマ。

 この状況、本格的にマズくない?」


「本格的にマズいわよ!!

 ど・・・どうしましょう?」


私達4人だけでも、切り抜けられるか怪しい状況なのにさぁ。

傍には魔族の子供達や重傷人が多数・・・。

とても死者を出さずに切り抜けられると思えない。


「・・・最後の警告だ、テンイ。

 魔族を置いて、大人しく立ち去るのであれば、君と君のハーレム要員には害を成さないと誓おう。

 魔族を皆殺しに出来るなら、君達を見逃す羽目になっても別に構わないさ。」


「はい。

 私やマサヨシ様が殺したいのは、愚かな魔族のみですから。

 元来、あなた達の事なんてどうでも良いのです。」


「うっ!?

 うう・・・。」


「忠告しておきますが、『巨大化』などで脅しに掛かったとしても、決して私達は怯みませんよ?

 それに『不殺の剣』なんかで、ランク4~5の攻撃に立ち向かえるなどと思わないで下さい。」


・・・ユキったら、勇者の性質を完全に分析し切ってるじゃない!?

さすがはNINJA。

情報収集もお手の物って事ね。


「何を悩む必要があるのです?

 どうせあなた達にとって、そこの魔族など他人同然じゃないですか。

 命の危機を前に他者を見捨てるなど、どの世界の人間だろうが当然の如くやっている事です。」


「うううっ・・・。」


勇者がユキの言葉に押されそうになっている。

物理的に勇者を追い詰め、もしも反撃されたら、彼女らもタダじゃ済まない。

だからこそ勇者の心を折り、戦わずして追い払おうと目論んでるのね。


何故か勇者が縋るように私の方を見てるけど、残念ながら良い案なんて何も思い付かない。

異世界人4人を相手取るとなると、アビス様でも分が悪いかもしれない。


私が考えてる間にもマサヨシとユキは互いに手を取り合い、バリアの内部に侵入しようと近づいて来る。

マサヨシ相手にランク1の魔法『パラライズ・サンダー』が通じるとは思えないし・・・。


・・・どうしましょう。

何か・・・何か良い手はないの!?





「やめろ・・・・・・。」





へ?

ヴェリア!?





「やめろ、やめろやめろやめろやめろ・・・・・・・・・・・・。」





何か様子が変よ!?


「ハッ!!

 そこでお仲間が惨殺される所を大人しく見てろ、裏切り者が!!

 それが俺を騙した最高の罰になるだろうよ・・・。

 あーはっはっはっ!!!!」


マサヨシのその言葉が切っ掛けになったのか。









「やめろーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!」









ヴェリアの絶叫と共に世界が揺れた。


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読んで頂き、ありがとうございました。

少しでも「続きが気になる!」「面白い!」と思って頂けたら、評価★★★★★と、ブックマークを頂ければと思います。

どうぞよろしくお願いします。
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