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第13話 能力紹介編④ 修行と実戦

「でも、テンイ。

 これほどの剣技を扱えるのなら、スキル無しでも冒険者として十分やっていけるわよ!!

 せっかくだからゴブリン討伐くらい、チャレンジしてみない!?」


「ええっ!?」





勇者の剣の腕前を見て、スキル無しでもやっていけるんじゃない?

と、語る聖女。


「で、でもスキル無しって、ほとんど俺だけの力だけで戦うって事でしょ?

 ・・・無理だよ。そんなの。」


一応、魔法もスキルもチート能力も勇者本人の力ではあるんだけど。

後から勝手に付け足されたものだから、自分自身の力だって実感が無いのかもしれない。


「大丈夫だって。

 いざとなったら、この私が守ってあげるから!!」


「その通りです。

 聖女さえいれば、ゴブリンなんていくら来ようが大丈夫ですわ。」


怖気づく勇者に心配はいらないと語る聖女と私。

でもどうしてか、勇者はますます顔を暗くしてしまった。


?・・・。





「・・・ねえ。王女、聖女。

 俺ってチート能力が無かったら、ゴブリンと戦わせるのだって不安?

 そんなに弱い男に見えるかな・・・?」





・・・う、う~ん。


こういう場合、例の本には『あなたなら全然余裕』って態度を示せ、と伝えられている。

が、彼の安全を考えるなら、少々プライドを傷つけたとしても、話さなければいけない事がある。



「・・・能力だけなら勇者様、あなたはゴブリンよりもはるかに格上です。

 しかし実戦は単純な能力だけで勝敗が決まるわけではありません。

 思わぬやり方で不意を突かれ、足元をすくわれる事も多々あるのです。」



実戦は言ってしまえば、何でもありなのがルールだもの。

武器は何を使っても自由だし、数の暴力・寝込みを襲う・罠を仕掛ける等々全てOK。

性根の腐った連中であれば、人質を取るなんて手段に出る事もあるわ。


つまり例え、勇者が剣士として超一流だったとしても、相手が剣のルールで挑んでくれる保証はどこにも無い。

だからいつでもどんな時でも楽勝・・・ってわけにはいかないと思う。


「そりゃ相手がゴブリンだろうと、集団でタコ殴りにでもされたら・・・ね。

 普通の人間なら死んじゃうもの。」


ゴブリンの実力は人間で言えば、棒を振り回すお子様と同じくらいよ。

けれど相手が子供の集団だろうが、殺意剥き出しで襲われたら、大人でも殺される事はある。


「一応、多くの転移勇者は並の人間よりもはるかに頑丈だと伝えられています。

 中にはオーガやサイクロプスに殴られても、平然としておられる方もいるとか・・・。


 しかし全員が全員、そうとは限らないようですから。

 だからと言って、わざと殴られて試すわけにもいかないでしょう?」


自分が打たれ強いかどうか試すために、わざと魔物に殴られる・・・。

なんてのはいくらなんでもリスクが大きすぎて危険だわ。


「ちょっ、当たり前でしょ!!

 そんな恐ろしい事、言わないでよ。

 ・・・でもじゃあ、いくら剣を鍛えても実戦では何の役に立たないの?」


確かに修行と実戦はまるで違う。

とは言え『修行なんて意味あるのか?』と問われると・・・。



「そんな事はありませんわ。

 そもそも普通なら、剣でも何でも良いから十分に修行してから実戦に臨むものです。

 むしろ、修行すらせずいきなり実戦に入る方が無謀ですから。」



武術のお稽古なんかいくら頑張っても、実戦では何の価値も無いしw

・・・って言う人もいるけど、どうしてそう思えるかが全然わからないわ。


同じ実戦経験が無いなら、鍛えていない人間よりも鍛えている人間の方がはるかに強いのにね。

仮にロクな修行もせずに実戦に挑んだりしたら、その死亡率は修行を積んだ人間のはるか上をいくはず。



「まっ、どんなに剣が強くても当面は痛い目を見まくるでしょうね。

 けど慣れよ、慣れ。

 何度も実戦を積んでけば、そのうち剣で鍛えた成果も活かせるようになるから!!」


「聖女の言う通りです。

 要は戦いのルールが違うから、しばらくは苦戦の連続だろう・・・ってだけです。

 そんなに自分を卑下する必要はありませんわ。」


「・・・つまり空手の黒帯がいきなりボクシングを始めても、無双できるとは限らない。

 けれど空手で修行した成果はいつか必ずボクシングで活きてくる・・・。

 って事かな?」



どうやら勇者は私達の話した事を日本の武術に置き換えて、理解しようとしているようね。

でもまあ、彼の言ってる事は大体当たってると思うわ。





「そういう事か・・・うん、わかった。

 俺、ゴブリン討伐にチャレンジしてみるよ。

 そしてこの世界でも、強く生きていけるようになるんだ!!」





ふぅ・・・。

どうにか勇者に納得してもらえたみたいね。

良かった、良かった。


「けど、意外ね。

 相手がゴブリンとは言え、王女がテンイを戦わせようとするなんて。

 むしろ、戦いを辞めさせようとするかと思った。」


「・・・いえ。勇者がこの先ずっと豆腐メンタルのままだと、凄く危険よ!!

 もっと心を鍛えないと、この前のチンピラに絡まれた時みたいな事件に発展しかねないわ。」


「あなたらしい考え方ねぇ・・・。」


あの時はまだ結果オーライだったから、マシだったけど。

早くメンタルを鍛えてもらわないと、少し悪人に追い詰められただけで、国ごと滅ぼしかねない。


・・・しかしまあ。



「でもね。きっと勇者の心はもっと強くなれるはずなの。

 だって、あれだけの剣術を修得する根性があるんですもの。

 ただの臆病者じゃないと思うわ。」


「あー、なるほど。」



心を鍛えると言っても、戦う相手はしっかり選ばないといけないけど。

勇者が重傷負ったり、死んじゃったりしたら、何の意味もないからね。





これで彼の実力はある程度わかったから、あとは・・・。

あっ!!

勇者に教えておきたい魔法が2つあったわ。


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