第146話 第4のハーレム編⑫ 異世界人VS魔族
剣と拳が激しくぶつかり合う。
魔法による炎が、氷が、雷が・・・ありとあらゆるエネルギーが飛び交い続けている。
強大な力を持つ異世界人と魔族の争いによって。
そんな中、私達は・・・。
「フォース・バリア!!
・・・ああ、もうなんなのあいつら。
見境なさすぎ。」
「そうね。
流れ弾がバンバン飛んでくるわ・・・。」
聖女の力を持つエミリーのバリアの中で、戦いを眺める事しか出来なかったの。
震え続ける魔族の子供達と一緒にね。
「どうすれば・・・。
一体、俺はどうすれば・・・。」
「・・・とりあえず『あの魔法』をいつでも使えるようにお願いします。
山賊王が自爆した時、私が使った『あの魔法』を。」
「あ・・・ああっ。」
そして勇者もまた動けずにいる。
強大な力を持つ彼が参戦すれば、この戦いを力尽くで終わらせられるかもしれない。
・・・ただし犠牲を厭わないのであれば。
「どうして・・・?
どうして俺は強大な力を思い通りに操れないんだ!?
携帯小説の主人公のように全て、思い通りになればっ・・・。」
だって彼はそのありあまる力を上手く制御出来ないもの。
それでも止めるべき対象が1~2人程度なら、やり方次第で上手く立ち回れるかもしれないわ。
とは言え、さすがにこの乱戦じゃね・・・。
「・・・こんな時こそアビス様に頼りたい所ですが。
しかし今、あの方を召喚したら集中砲火を受ける恐れもあります。」
「そ~よね~。
興奮している連中の前に突然、竜を出したりしたらさぁ。
衝動的に襲われそ~で怖いわ。」
いくらアビス様でも召喚した直後に数多の異世界人や魔族から一斉攻撃されちゃ危険よ。
迂闊に召喚する訳にはいかないわ。
「パパっ!!
パパっ!!」
ど~したものかと頭を悩ませてると、ミーモが泣き叫びながら、バリアを叩いていた。
・・・まさかっ!?
「デルマお姉ちゃん!!
あそこ・・・。
ミーモのお父さんがっ!!」
クロの指差す方を見ると、1人の魔族がボロボロの状態で横たわっている。
しかもそんな魔族を嘲笑うかのように眺めているマサヨシの姿が!!
まずいわっ。
「まずは貴様からだっ!!」
「パパっ!?
お願い、止めて!!」
・・・どうか間に合って。
「コール!!」
「何っ!?」
私の願いは届き、他者をこちらへ呼び寄せる魔法『コール』が間に合ったの。
危なかったわ。
あと少し遅れてたら、ミーモのお父さんは・・・。
「パパっ!!
酷い怪我・・・。」
でも次も上手くいくかはわからない。
コールは発動までの時間が結構長くて、緊急避難用の魔法としては少し使い辛いし。
「デルマ・・・テンイのハーレム要員の仕業か!?
鬱陶しい連中め。」
そしてミーモのお父さんを助けてしまった事で、後回しにされてたであろう、私達へ矛先が向いてしまう。
「マシオ、ノリアキ、ハルマ!!
お前達はテンイとその連れを魔族のガキごと、ぶっ殺してしまえ!!」
「「「「「「「「なっ!!??」」」」」」」」
「所詮、弱者をいたぶる事しか取り柄のないクズ共なんてなぁ。
俺一人で十分なんだよ!!」
「「「「「「「「舐めるなーーーー!!!!」」」」」」」」
マサヨシは連れの異世界人・・・マシオ達に私達を潰すよう、指示を飛ばしたの。
指示を受け、どこか喜々とした様子で近づくマシオ達。
・・・さすがにミーモのお父さんを助けたのはまずかったかしら。
でも放っておくのも躊躇っちゃって・・・。
勇者のノリが移っちゃったのかもね。
「テンイ。こうしてお前をぶっ飛ばせるなんて、嬉しいぜ。
・・・何が『喜んで誰かを殺せる奴は異常者』だ?
好きでそうなったとでも思ってんのかっ!!」
「!!
そ、それは・・・。」
そしてよほど勇者の言葉に苛立ってたのか、マシオは怒り狂っている。
「・・・なら異常者らしく、綺麗ごとしか言えないてめえをぶっ殺してやらあっ!!
四の奥義・爆炎拳!!」
憤怒の表情で拳に炎を纏わせながら、マシオが突撃する。
が、彼の攻撃ではエミリーのバリアを壊せない。
「何っ!?」
「下がれ、マシオ!!
フォース・アイス・ブロック!!」
「死ねーーーー、テンイ!!!!
フォース・ロック・バレット!!」
続けてノリアキとハルマが氷魔法や岩魔法を放ってきたわ。
だけどやっぱり、エミリーのバリアは壊せない。
「「なあっ!?」」
「・・・これでも私は聖女なのよ?
いくら異世界人でもそう易々と倒せるなんて思わない事ね!!」
事実、彼女の防御魔法はランク4以下の魔法・スキルなんて寄せ付けない程の強固さを誇るの。
ただそれでも楽観視は出来ない。
マサヨシの実力がまだ未知数だし、何より『彼女』の存在が恐ろしい。
もし『彼女』がとある力を隠し持っていたら・・・。
「クソっ・・・。
噂は聞いてたが、聖女エミリーがこれほど強力だったなんて・・・。」
「テンイの野郎・・・!!
そのナンパ師みたいな顔で、聖女すらも誑し込んだってかっ!?
とんだクソ野郎だな、おい。」
「ちょっ!?
言い掛かりだーーーー!!!!」
・・・いくら勇者が嫌いだからって、そこまで貶さなくても。
「・・・選手交代だ。
ガキ共やテンイ達の始末は俺がやる。
お前らは魔族の方をやれ。」
「「「ちっ・・・。」」」
悔しそうにしながらも、大人しく指示に従うマシオ達。
「マシオ達の攻撃さえ防ぐなんて、さすがは聖女エミリー。
その力だけは噂通りのようだ。」
「・・・そりゃど~も。」
「だけどな・・・。
この俺の攻撃を防げるなんて思うなよ?
平気で悪を守ろうとする、邪心まみれの聖女風情がっ!!」
「邪心まみれなのはあんたらの方でしょ・・・。」
凄まじいパワーを巻き散らすマサヨシを見、私は勇者に目で合図した。
彼も意図がわかったようで、目で返事する。
「五の奥義・秘剣・タケミカヅチ!!」
そしてマサヨシはなんとランク5のスキルを発動させたわ!!
『五の奥義・秘剣・タケミカヅチ』は雷属性の両手剣スキルの中でも最強クラスの威力を誇る技でね。
その破壊力は神々ですら、警戒する程よ。
「またランク5の攻撃!??
異世界人ったら、軽々しく危険な技を使い過ぎよ~・・・。
・・・頼んだわよ、テンイ!!」
「ああ、任せてくれっ。
ストロング・バリア!!」
勇者はかつて私が山賊王との最終決戦で使用した魔法『ストロング・バリア』を発動。
この魔法はバリア系の防御魔法を強化するもので、複数人による重ね掛けも可能よ。
「テンイ、お前は俺を舐めてるのか・・・?
ランク1の強化魔法如きで、この秘剣を打ち破れると思ったのかーーーー!!!!」
・・・『普通なら』マサヨシの言う通りね。
ランク4の防御魔法をたった1人のランク1の強化魔法で強くしたところでね。
ランク5の攻撃を防げるはずないの・・・。
そう、普通なら。
私の予想通り、勇者の力で強化されたエミリーのバリアはマサヨシの究極奥義すら防ぎ切ったわ。
「なんだとっ!?」
勇者はチート能力により、魔法・スキルの威力が通常の数十倍、数百倍にパワーアップしている。
例え、ランク1の魔法・スキルであっても、ランク5の魔法・スキルすら打ち破れる程に・・・。
「・・・テンイ。
お前、何者だーーーー!!??」
「何者だなんて、言われても・・・。」
実際、彼は悪人によって攫われた哀れな異世界人の1人でしかないからねぇ。
・・・秘めたる力があまりに危険すぎるだけで。
「「「「「「「「キャーーーー、さすがですわ~~~~!!!!」」」」」」」」
あの歓声はマシオ達のハーレム要員!?
「くっ・・・。」
ど~やら私達があ~だこ~だやってる間に、マシオ達が魔族を蹴散らしちゃったようね。
彼ら、単に強大な力を持ってるだけじゃなく、かなり戦い慣れてる。
・・・このままじゃ魔族が全滅するのも時間の問題かもしれないわ。