第145話 第4のハーレム編⑪ 暴かれた魔族のアジト
「ここがユキの言ってた魔族のアジト、か。
・・・悪しき魔族め。
この俺が皆殺しにしてやる!!」
NINYAユキの暗躍により、魔族のアジトが異世界人にばれちゃった!??
しかも彼らの中には魔族を滅ぼす事こそ正義と疑わないマサヨシがいる。
これってとんでもなくマズい状況じゃないかしら・・・。
「バ・・・バカなっ!?
あの黒猫のガキの戯言が事実だったなんて!!」
「こちらもあんな子供に隠れてるのを暴かれそうになるなんて、想定外でした。
あなた方魔族が暴れる事しか出来ない無能で助かりましたよ。」
「「「貴様っ!!」」」
ユキに煽られ、警戒役の魔族が激高する。
「でもなんでだろ~・・・。
ど~してユキさんの気配、よく分かんなかったのかなぁ。」
「それはね、クロ。
多分、彼女が『隠密』のスキルを使ったからよ。」
「『隠密』ってその、気配を隠す的な効果のスキル?」
「おっしゃる通りです、勇者様。
熟練の使い手の『隠密』は数多の獣人にすら、その存在を悟られなくなると伝えられています。」
これも偵察などを得意とするNINJA固有のスキルで、使い手が秀でているほど、気配を無に近づけられるそうよ。
『索敵』などの特性すらも欺く程に・・・ね。
「先ほど魔族が丸太が云々と話していましたが、恐らくそれは『変わり身』を使った名残でしょう。
『変わり身』は緊急離脱用のスキルで、これを使うとですね・・・。
丸太をオトリに自身の体はいくらか離れた場所に瞬間移動するそうです。」
「おおっ、すっげぇNINJAらしいスキルじゃん!!
使ってるとこ、見てみたいなぁ。」
「いやいや。
そんな事言ってる場合じゃないですって!!」
・・・勇者ってば、呑気な。
「なるほど。
彼ら一行はテンイさんと聖女にばかり、注目が集まるようですが・・・。
彼と彼女にだけ気を取られていては、思わぬ伏兵に足を掬われるかもしれません。
想像以上に手強い方々のようです。」
「あなたにそんな事を言う資格があるのかしら・・・。」
むしろ私の方こそ、マサヨシ達異世界人にばかり気を取られ、ユキに翻弄されちゃったわ。
「ところでヴェリアはどこにいるの~?
な~んか魔族に攫われたらし~じゃ~ん。」
「ホント、ホント。
良い子ちゃんぶってるから、攫われたりするのよ。
かわいそ~に♪」
一方、マサヨシ一行のハーレム要員が攫われた(と思っている)ヴェリアを小馬鹿にしている。
「・・・。」
・・・実は魔族だってばれたら、どうなっちゃうのかしら?
「ヴェリア様・・・。
あなたはどちらの味方なのです?」
「あっ?
おいっ!!
何、喋ってんだ、てめえっ!?」
なんて考える間もなく、魔族の1人がヴェリアへ話し掛ける。
その結果、ハーレム要員に彼女の正体がばれてしまったの。
「へ・・・?
ヴェリア、あんた実は魔族だったのっ!?」
「ひいっ!??」
そしてヴェリアが魔族だと判明した途端、マサヨシ達のハーレム要員は嫌悪感を露わにし始めたわ。
それも気に食わない相手への反発心なんて、軽いものじゃない。
異質な存在に対する強烈な忌避感・・・。
「まさかヴェリアの正体が魔族だったなんて!?
・・・でもこれはこれで色っぽいなっ。」
「ああ。
人間だった頃の清楚っぷりもい~んだがよ~。
それがあんな猛々しい美女に豹変するってのもなんかこう、良い!!」
「そ~だな~。
胸もデケ~しな~♪」
一方、マサヨシ以外の異世界人はヴェリアの真の姿を見、盛り上がっていたの。
・・・まあ確かに彼女が女性として独特な魅力を兼ね備えてるのは事実だけれど。
「なんとも呑気な反応ねぇ。」
「一応、例の本にも異世界へやって来た転移勇者は意外と人種差別する事が少ない。
・・・と、ありますが。」
「ま~た、例の本の受け売りかい?
でも彼らの気持ちも分かる気がする。」
「?~。」
勇者のいた国は肌の色だけで差別するよ~な人間が悪目立ちしてるの。
けれど異世界へやって来た日本人が人種による差別を行うケースは存外少ないとあるわ。
なんとも不思議な話ね。
だけど存外少ないだけで、決して皆無じゃない。
「何を浮かれてるんだ、お前ら!!
・・・相手は魔族だぞ?
焼却すべき、世界の汚物なんだぞっ!!」
「「「ひっ、ス・・・スマンっ!!」」」
マサヨシに激怒され、3人の異世界人が縮こまる。
「ヴェリア、君さぁ・・・。
生まれのせいで故郷を離れる羽目になった、なんて言ってたけどさぁ。
・・・あれは嘘だったのか?
俺達を騙して、嘲笑ってたのか!?」
「ハッ。言い訳が面倒だから、適当喋っただけだっつ~の。
なのに勝手に勘違いしてよ~。
強引に俺を誘ったのはお前らじゃね~か?」
「貴様ぁああああああああ!!!!!!!!」
それにしても、マサヨシの魔族に対する嫌悪っぷりはなんなのかしら?
いくら魔族が悪だと植え付けられたとしても、よくあそこまで嫌えるわねぇ。
「もう良い。」
えっ!?
「貴様らのような薄汚い悪党とは、口を聞くのも億劫だ。
だから俺がこの手であの世へ送ってやる!!」
ちょっ!?
こ・・・怖すぎるわよ。
あなた。
「ちっ。これだから正義のヒーロー気取りは・・・。
おい、ガキ共!!
死にたくないなら、テンイ達のとこまで走れっ!!」
へ?
「ひ、ひぃいいいいいいいい!!??」
「助けて~、助けて~!!」
「テンイお兄ちゃ~~~~ん!!!!」
錯乱した魔族の子供達が、ヴェリアの言葉を鵜呑みにし、私達の元へ寄って来る。
「ヴェリア様!?
いきなり何を・・・。」
「・・・ここでテンイ達まで敵に回られちゃあ、俺ら全員あの世行きだぜ?
だったらガキ共をテンイ達の足枷にすりゃあ良い。
あいつらの安全確保にもなるし、一石二鳥さ。」
「ヴェリアったら、なんてずる賢いのかしら・・・。」
そうボヤきつつもエミリーも、そして私達も子供達を追っ払うような真似は出来ずにいる。
「・・・テンイ。はっきり言って、君達に用は無い。
死にたくなければそいつらを置いて、とっとと立ち去るんだな!!」
「そんな事なんか出来るものか!!
大体、君はこんな小さな子供達まで皆殺しにする気か!?
ただの被害者でしかないこの子達まで・・・。」
「当たり前だろうが!!
大人だろうが子供だろうが魔族は悪だ。
悪しき魔族は全て、滅ぼすべきなんだぁああああああああ!!!!!!!!」
「そ・・・そんな。
どうして君はそこまで・・・。」
正義を貫こうとする人間はこうまで悍ましいものなの?
罪の無い子供すら、皆殺しにしたがる程に。
「そしてそんな悪をひたすらかばおうとするテンイ!!
お前達も悪だ・・・。
いつまで経っても考えを改めないならなぁ。
魔族ごとお前達も皆殺しにしてやるっ!!」
「何が悪だ!??
そちらから我らの子を攫っておきながら、身勝手なクズ共め!!
俺達こそ貴様らを皆殺しにし、更にはあの町すらも廃墟にしてくれる!!」
こうして異世界人と魔族の想像を絶する戦いが始まったの。