第134話 過去編(王女)③ ヘンテコ王女の習慣
今話にて、王女の過去話は終了。
聖女の過去話の1/4以下のボリュームですねw
・・・まあ、聖女以外の過去話はストーリーの本筋にはほとんど絡みませんが。
あくまでキャラクターの設定を整理するために書いてみたって感じですw
雑談中、なんで私は男性から触られても恥ずかしがらないのか、聞かれたわ。
だからこう答えたの。
「私、12歳になってからね。
母上の命令で男の人達と同じ場所で入浴していたの。」
「なんだとーーーーーーーー!!!!????」
「えー・・・。」
「?~。」
・・・どーして、勇者は絶叫してるのかしら?
勇者の世界で例えるなら、広い銭湯で多くの男性と混浴してるだけに過ぎないのに。
「いやいやいやいや・・・・・・。
んな事したら、襲われるでしょっ!?」
襲われるって・・・。
「身分が低いとは言え、私は王女でしかも醜女です。
襲われた事なんて、一度もありませんよ。」
「それはそれで絶対におかしいっ!!
ジャクショウ国の野郎共は修行僧の集まりかあっ!?」
んなまさか。
「それに母上も言ってましたら。
万一、襲われたら容赦なく処刑して良いと。
・・・さすがに酷すぎる言い分だと感じましたが。」
母上はこうも話されていたの。
王女たるもの、男に触られる程度で取り乱してはいけない。
しかしだからと言って、自分の体を安売りするような真似も絶対にするな・・・と。
本当に愛した人、あるいは運命を共にする人にのみ、体を許すように、と。
「とは言え、城の男性達も内心、不満だったのでしょう。
命惜しさ故に襲いこそしませんでしたが、軽く体をぶつけてくるくらいは日常茶飯事でした。
母上もその程度なら免疫を付ける良い訓練になるからと、黙認してましたが・・・。」
「ななっ・・・。」
「・・・私も一度、言った事があるのですよ。
いくら王女だからって、入浴という一時の癒しを邪魔するのは好ましくない。
どうしても迷惑であれば、一緒に入浴せずに済むよう、母上を説得するから・・・と。
なのに『それはいけません』とか『母君の命令に逆らうのは好ましくありません』なんて、言うばかりで。
それどころか『入浴を共にする事であなたの成長に繋がるなら、我々も誇らしい』などと、話す人までいる始末。
そこまで覚悟を固められては、止めるのも気が引けてしまい・・・。」
「絶対、そういう理由で混浴を受け入れたんじゃないと思う。」
だけどそのおかげでしょうね。
私は男性に触られるくらいじゃ、取り乱さなくなったわ。
ま、混浴が恥ずかしかったのも最初の数日くらいで、割と簡単に慣れちゃったけど。
そして勇者が召喚されるまでの間、男性との混浴を続けていたの。
「ねえ、王女・・・。
今からジャクショウ国に戻って、君と混浴した連中を不殺の剣でぶっ叩いて良い?」
「えーーーーっ!!??
王を不殺の剣で殴りたいと言うのであれば、納得出来ます。
・・・しかし何故、彼らを?」
「・・・・・・。
今、この瞬間だけは愚王よりも君と混浴した連中の方が憎いっ!!」
なんでっ!?
「・・・別に妬まなくてもさぁ。
そーいう事なら、今日からでも王女と混浴すりゃいーじゃない。
王女だって、構わないでしょ?」
「勇者が構わなければ、いーけど。」
「無理だよぉ・・・。
俺の方が恥ずかしくて、我慢出来ないよぉ(´;ω;`)」
あらら。
「ったく、テンイはヘタレねぇ。」
「ま・・・まあ、勇者の世界は夫婦とか以外、そういう習慣がないもの。
仕方ないんじゃない?」
「こっちの世界にだってそんな習慣はないからね!!」
そーなの?
じゃああれは母上独自の教育方針だったのかしら?
それはともかく。
「・・・と、旅が始まる前の私はこんな感じで過ごしていました。
特に大した事、ないですよね?」
「う・・・う~ん。
なんかこう、王女にしてはやたら個性的な人生、送ってるよーな気がするけど。
エミリー。この世界の王女ってそーいうもんなの?」
「そーいうもんじゃないから。
デルマがおかしいだけだから。
・・・ど~りで王女らしくないと思った。」
「?~。」
そんなリアクションに困るわ~、みたいな反応しなくっても。
「あんたの故郷の話を聞いて、心配になった事があるわ。
ノマール王子は警戒しなくて大丈夫なの?
あの腹黒王子なら、私らが魔王討伐をする気がない事くらい、見抜いてるはずよ。」
腹黒王子って・・・。
「王女の話でも度々出てきたけどさぁ。
ノマール王子って誰だっけ?
そんな人、いたかな。」
「あなたが召喚されたり、魔王討伐を命じられた時にもいたわよ。
ほら。
それなりに整ってるけど、凄い地味な顔立ちの王子が・・・。」
「・・・う~ん。
いたような、いなかったような。」
「・・・エミリー。
ノマール兄上を地味って言うのは勘弁してあげて。
兄上ったら、そう言われるのをすっごく気にしてるよーだから・・・。」
確かにノマール兄上って、見た目は地味だけどね。
それでも中の上程度には整った顔立ちだから、恵まれてる方ではあるけど。
「ノマール兄上については、気にしなくても大丈夫よ。
もちろん、その程度は見抜いているでしょうけどね。
けど勇者やエミリーが自分達に従う訳ないってのも、理解してるはずだから。
ジャクショウ国を攻めようとしない限り、静観するはずよ。」
少なくとも真っ向勝負なら、ジャクショウ国の人間が束になっても、勇者やエミリーには敵わないでしょう。
それ以前に国からここまで離れた私達を追う事すら、難しいわ。
この世界って、旅をするだけでも命懸けだからねぇ。
兄上ならそれくらいは理解してるわ。だって優秀だもの。
・・・たまーに抜けてる部分もあるけどね。
人の事は言えないけど、父上が帰還の手段も準備せず、勇者召喚に臨んでいたのを見抜けなかったし。
いや、あれは父上が想像以上に愚かだっただけかしら・・・。
だって異世界人って、怖ろしい力の持ち主なのよ?
普通に考えたら、万一に備えて元の世界へ帰す手段くらい、準備しておくはずだもの。
あ。
「これからの旅で勇者様にお願いがあります。
余裕があればで構わないので、街中で本屋や図書館があれば、立ち寄る事をお許し頂けないでしょうか?」
「へっ!?
それはいーけど、急にどうしたの?」
「今まではトラブルが多発しすぎて、気が回らなかったですが。
あなたが元の世界へ帰るための手掛かりを見つけられれば、と考えまして。」
もちろんたまたま立ち寄った町や村で、そんなものが見つかる可能性は0に等しいわ。
けれどほんのわずかでも可能性があるのなら、確かめるべきだもの。
「わかった。
いつもありがとう。
王女。」
「お礼など言われる資格はないですよ。
それこそが私の使命、罪滅ぼしですから。
それにあなたの娯楽となるような書物もあるかもしれません。
とある異世界人の出版物ですが『8つの龍の球』や『鬼殺しの秘剣』などの・・・。」
「ちょっと待ったあっ!!
パクリでしょ、それ!?
・・・いや、異世界だから著作権には引っ掛からないのかー?」
???
勇者ったら、一体どうしたのかしら?
急にぶつぶつ言い出して。
そうこう話している内に昼食も終わり、私達は旅を再開したわ。