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第132話 過去編(王女)① 王女の母上

今度は王女の過去話回。

・・・でも今回に限っては王女の母上のお話って感じですw


「・・・それより王女は?

 王女はどんな人生を歩んできたの?」


「私の人生ですか?」



昼食中、私は勇者からどんな人生を歩んできたのか、聞かれたわ。



「あー・・・。

 それは気になるわねぇ。」


「うんっ。」


「・・・いやいや。

 私はあなた達のような波乱万丈な人生なんて歩んでないわよ?

 それでも構わないなら、話していーけど・・・。」


大した人生じゃないとは言ったんだけど3人共、興味津々のようね。

別に隠すような事でもないけど、どこから話せば良いのかしら。


「そうねー。

 まずはラーシャ母上・・・。

 私の母上なんだけど、今は亡きデトラ国のお姫様だったの。」


「今は亡き?」


「召喚した異世界人が破壊の限りを尽くしたせいで、あっと言う間に滅亡したらしいわ。

 母上はデトラ国唯一の生き残りね。」


「「「えっ!?」」」


母上曰く、デトラ国は大した力もない国家だったの。

だから強大な力を持つ異世界人を召喚し、奴隷のようにこき使おうとしたみたい。

けどあまりに扱いが酷かったせいで、報復を受けちゃったんだって。


母上自身は特に異世界人を虐げなかったそーだけど。

・・・もしも虐げてたら、私は存在しなかったでしょう。


「んなハードな過去をあっさりと・・・。」


「でもこれは私が生まれる前の話ですから。

 正直な所、あまり実感が沸かないです。」


勇者の国でも昔、大きな戦争があって、犠牲者もいっぱい出たそうよ。

でも例の本曰く、勇者くらいの年頃の子はそれほど思う所はないみたい。

それと同じようなものね。


「母上によると、その異世界人は既に処刑されたそうです。

 ヤケになって大きな被害をもたらしたため、大罪人として討伐された、と。

 処刑か自爆かの違いこそあれ、山賊王の時と似たような末路ですね。」


「・・・。

 俺も気を付けないとな。」


「その後、母上は行くあてもないまま、ジャクショウ国へと辿り着きました。

 しばらくはギルドで軽いクエストを受けながら、細々と暮らしていたそうです。

 しかしとある日、先代の王であるお爺様の目に留まりまして・・・。」


そして母上がデトラ王国の姫であると知ると、すぐに父上と婚姻を結ばせたわ。

二人の間に生まれた娘がこの私、デルマだったの。


「母上は父上の妾でありながら、お爺様の下につき、政務のお手伝いを行っていました。

 その働きぶりは凄まじく、周りからは女帝と呼ばれ、畏怖される程でした。

 お爺様やノマール兄上から言わせると『優秀だけど、非情になり切れないのが欠点』との事ですが。」


そう言いながらもノマール兄上は父上からではなく、母上から政務などを学んでいたわ。

甘い部分を差し引いても、他の人達よりもはるかに学べる事が多いからと。


少し前まで政務はお爺様、母上、ノマール兄上の3人が中心になって行っていたの。

・・・父上も母上と結婚する前後くらいまでは、真っ当に政務に励んでたようだけど。

いくら頑張っても自分の国が小国である事を嘆き、やる気が萎んじゃったみたい。


とまあ、問題も少なからずあったけど、なんだかんだでジャクショウ国はそれなりに平和だったわ。


「君の母上って凄いんだね。」


「はい。しかし中には母上を女王の座を狙う女狐と貶す人もいました。

 ・・・濡れ衣も良いとこなんですがね。母上は地位には一切の関心がありませんでしたし。

 政務に励んでいたのもお爺様への恩義と、第二の故郷であるジャクショウ国を守るためです。」


母上は祖国が滅んでしまった事をずーっと悲しんでいたもの。


「母上は転移勇者の召喚に対しては、断固として反対の立場を貫いていました。

 この一件に関しては命を賭しても止める覚悟を持っており、誰も抗う事が出来ませんでした。

 私も決して異世界人を召喚したりなどせぬよう、常日頃から教えられたものです。」


とは言え、ノマール兄上のように納得出来なかった人も少なくなかったわ。

母上の前でこそ口に出さなかったけどね。

異世界人が暴走するのは召喚者達が無能なせいだと思っていたの。


野良ドラゴンの気まぐれで小国程度は簡単に滅んでしまう、このご時世・・・。

国のためにも異世界人は骨の髄まで利用すべきだって、考えてた人も多いのよ。

さすがに勇者の一件でノマール兄上を初め、大半が認識を改めたようだけど。


「んな事情があるなら、勇者召喚を拒絶してとーぜんよねぇ。

 でもじゃなんで、テンイの召喚は止められなかったの?

 ・・・そもそもあの場にあなたの母上なんかいたっけ?」


「・・・・・・。

 母上は勇者が召喚される約半年ほど前に病気で亡くなったわ。」


母上が亡くなった時は人生で一番、悲しかったわねー。

ちなみにお爺様も、勇者が召喚される約二年ほど前に天に召されたの。

だから今、政務の中心となっているのはノマール兄上よ。


「あー・・・。

 悪い事、聞いちゃったわね。」


「気にしないで。

 病気で親を亡くすくらい、よくある事だもの。」


エミリーやクロの両親のように『殺された』のに比べたら、ね。

辛いんですなんて言える立場じゃないわ。


「・・・と、こんな感じで私にとっては自慢の母上でした。

 政務で活躍され、類稀なる美貌を褒め称えられ・・・。

 それに比べたら私なんか、中途半端な能力しかない醜女ですから。」


「「「えー・・・。」」」


あらら?

どーして3人共、納得してないの?


「・・・あんたねぇ。

 その台詞、謙遜の振りした嫌味にしか聞こえないわよ?」


「そーかしら?

 私の力なんて勇者やエミリー、アビス様なんかと比べたらさぁ。

 情けなくなるくらい、ひ弱よ?」


「いやいや。

 大体、転移勇者やエンシェントドラゴンは神にも匹敵するパワーの持ち主なのよ!?

 そんなのと比べて『自分はひ弱です』なんて、どう考えてもおかしすぎるわっ!!」


・・・。

それもそーかも。


「そう言えば、エミリー。

 実際の所、王女ってこの世界じゃどれくらい強いんだい?」


「少なくとも、そこいらの兵士や犯罪者なんかよりはずっと強いわよ。

 もちろん転移勇者には遠く及ばないし、常識の範囲内でも戦闘のプロとかには敵わないでしょう。

 それでも女の子にしちゃ、全然戦える方ね。」


おおよそエミリーの言う通りかしら。

ランク1~2の魔法・スキルしか使えない人間に対する評価としては、妥当よ。


「ってか、デルマの真骨頂は単純な戦闘力じゃないでしょ。」


「確かにね。」


「うんっ。」


???


「でもそんな事より自分を醜女だとか言い張ってる方があれよ。

 本物の醜女にんな事、喋ってみなさい。

 殺されても文句を言えないわ!!」


「「うんうん。」」


・・・そーかなぁ。





「けどさぁ・・・。

 姉上達から約10年ほど『身分の低い醜女』と言われ続けたからねー。」


「「「ええええっ!!??」」」


念のための補足として、王女の母上や祖父はなんらかの陰謀で殺されたとかじゃありません。

本当に単なる病死です。

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読んで頂き、ありがとうございました。

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