第125話 闇聖女編③ 正妻を巡る戦い
Side ~聖女~
私はテンイの1番になるために、彼に全てを捧げる決意をする。
そしてあと一歩の所で、彼の理性が消え去り、お楽しみが始まろうという所で・・・。
「勇者様ー。いますかー?」
「ご主人様ー。いるー?」
ドンドン。
・・・・・・。
ん″?
「王女、クロ?
・・・・・・。
って!!」
我に返ったテンイが返事をする前に、無情にもドアは開かれた。
「ご主人様ー♪」
「「え"!!??」」
「こらあっ!!」
クロと王女が部屋に入って来たの。
慌てた王女が無意識の内に扉を閉める。
「ダメじゃない、クロっ!!
危険がせまってるならともかく、そーじゃないならどんなに仲の良い人の部屋でもね。
入って良いよって言われるまでは、勝手に入っちゃいけませんっ!!
誰かに見られたくない事をしている時だってあるのよ。」
「そーなの?」
「あなたはまだ子供だし、ハーレム要員としては完璧に振る舞えなくても構わないわ。
けどね。人としてのマナーはきちんと守らないとダメよ。
勇者だけじゃなくて、他の人にも迷惑掛けちゃうんだから!!」
「・・・ごめんなさーい。」
「もう・・・。」
だけど王女はクロを叱りつけるのに夢中で、今正に見られたくない事をしているのに気付いていない。
けれどクロが反省しているのを見届けた後、彼女はテンイの方へ振り向いて・・・。
「申し訳ありません、勇者様。
今後はこのような事がないよう、しっかりクロを教育しますから。
今回はどうかお許し・・・を・・・・・・?」
フリーズしたの。
「勇者様、聖女?
あれ・・・なんで聖女が勇者様の部屋に・・・・・・??」
あらまー・・・。
ヒドラを前にしようが冷静な彼女が、珍しく取り乱してるじゃない。
「二人とも、何してるのー?
スッポンポンだと、風邪引くよー?」
一方、今の状況が全く理解出来ていないのか、クロは至って平常運転ねー。
つーか上半身裸の男性を見ても平然としている所に、大物の風格すら感じさせる。
・・・元奴隷なだけあって、上半身裸の男性くらい、飽きるほど見てきたのかしら。
奴隷にされた人々は服すらまともに支給されない事もあるって話だし。
「そ、そうですよ。
勇者様、ちゃんと服を着ないと風邪を引きますよ。
ほら、聖女も・・・。」
そんなクロに触発されてか、王女も私達に服を着るよう、促す。
・・・彼女、普段の様子を見る限り、愛はわからずとも、こーいう事の知識だけは持っていそうなのにねぇ。
理解してないのか、敢えて理解を放棄しているのか。
いきなり彼女達が部屋に入って来た時はビックリしたけど、これは王女にマウントを取るチャンスかも。
「着る訳ないでしょ。
だって私とテンイはこれから、お楽しみタイムだったんだから。
ねー、テ・ン・イ♪」
「え″!?
いや、その・・・。」
あらま。
テンイったらさっきまではお顔が真っ赤だったのに、今は真っ青よ。
まるで浮気がバレちゃった人みたい。
「お楽しみタイムって・・・。
・・・・・・・・・・・・。
!!!!!!!!????????」
やーっと気付いたようね。
この朴念仁ったら。
「お楽しみ~?
これからご主人様と聖女様、楽しい事をするの~?
あたしも混ぜて~♪」
そしてクロは相変わらず、何もわかってないみたい。
無知って、ある意味無敵ねー。
「ク、クロぉ!!??
いやいや。楽しい事なんかやんないから。
エミリー、もう止めようよ・・・。
こんな姿、お子様に見せられないよ!!」
うーん・・・。
いくらなんでも、こんなに小っちゃな女の子に大人の遊びを見せるのは、教育に悪影響かしら。
しょーがないわね。
「そうねー。クロ。
ちょっとそこのソファーにもたれかかってくれる?」
「はーい。」
クロは私の言う事を疑いもせずに受け入れ、ソファーへともたれかかる。
今よっ!!
「ネス・スリープ!!」
「ん・・・。
・・・。
zzz。」
よしよし。
これで邪魔者は眠りについたわ。
「クロッ!?
エミリー!!
一体、何を・・・。」
「安心なさい。
単にクロは夢の世界へ旅立っただけだから。」
別に体に悪影響なんてないわ。
「『ネス・スリープ』・・・。
相手の眠気を増幅させ、自然な眠りに誘う魔法です。
・・・本来は不眠症の方への治療などで使われるものですが。」
「王女の言う通りよ。
私、普通の『スリープ』は使えないけど、『ネス・スリープ』なら使えるのよねー。」
普通の『スリープ』は相手を害するのが目的の魔法で、『ネス・スリープ』はどちらかと言えば、相手を癒す目的の魔法だからかしら。
場合によっちゃあ『スリープ』よりも強力な睡眠魔法なんだけどね。
「その2つって、どう違うの?」
「そうですね・・・。
例えるなら、普通の『スリープ』は睡眠薬を嗅がせて、無理矢理眠らせるようなものです。
一方、『ネス・スリープ』は子守歌を聞かせて眠らせるようなもの、といった感じでしょうか。」
「そうそう。
昼間で元気いっぱいの人にはまず効かないけど、夜間、疲れ切ってる人なんかには効果抜群なのよ。
あくまで自然な眠りに誘うだけだから、基本的には朝まで目を覚まさないしね。」
特に劣悪な環境でこき使われてるような連中に対しては、『スリープ』よりも効き目があるんだから。
「さーてと。
お子様もお寝んねした事だし、早く始めましょ♪」
「まま・・・。
待って、待って!?」
いやよ。
待ーたない♪
「じゃ、じゃあ私はクロを連れて、一足先に出ていきますね。
ではごゆっくり・・・。」
「王女!?」
気まずさいっぱいのまま、王女はこの場から立ち去ろうと目論む。
けどね。
「ダーメ。
王女、あんたはここで見ていなさい。
私とテンイの愛の行為を。」
そうはさせない。
あんたの目の前で目一杯、楽しんでやるんだから。
「えぇΣ(゜д゜lll)。
どーして!?」
「私がテンイの正妻だって、思い知らせるためよ。」
「・・・いやいや。
誰が勇者の正妻だろうが、私は構わないから。」
「少しは構ってくれないかなぁ・・・。」
しかしやっぱりと言うべきか、王女はテンイの正妻が誰であろうと、全く気にしないみたいね。
実際、私や彼に対し、困惑こそしているけれど、怒りや悲しみといった感情は一切見られない。
「・・・今はそうでしょうけどね。
でもいつまでも王女がテンイの事を異性として愛さないとは限らないもの。
そしてテンイも王女を・・・。」
「・・・何が言いたいのか、ちっともわからないんだけど。」
「少しはわかってくれないかなぁ・・・。」
けれど、将来的にどうなるかはわからないしね。
だからこそ王女が『愛』に目覚める前に、手を付けておかないと。
「ってか、王女も止めてよっ!!」
「・・・えーっとですねー。
勇者様が心の底から嫌がってるのであれば、是が非でも止めますよ?
けど本心ではそれを望んでるような気がして、ならば止めるべきではないかもと・・・。」
「どこ見ながら言ってるのっ!?」
テンイの下半身を見ながら、王女は困ったように呟く。
まあ王女って基本、罪の無い人を傷付けたりしない限りは、テンイの望む道を歩ませようってスタンスだからねぇ。
「これで話はまとまったわね。
というわけで、今度こそ・・・。」
「何もまとまってないってば!!」
「・・・・・・。
私は一体、何を見せられてるのかしら?」
テンイにじりじりと迫る私。
理性を飛ばさないだけで、いっぱいいっぱいのテンイ。
そんな私達から目を背ける事も出来ずに、恥ずかしそうにしている王女。
これまで色々あったけど、晴れて私はテンイの正妻へ・・・。
「お願いっ!!
もうやめて、エミリー!!
俺は家族と離れたくないんだっ!!」
えっ?