表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

126/202

第124話 闇聖女編② 勇者を喰らいし者

闇聖女×ヘタレ勇者のお話。

・・・誰得なのかはさておくとしてw

Side ~聖女~


ここはとある町の宿屋。

既に日は暮れていれど、まだ夢の中へと旅立つ時間じゃない。


「・・・・・・。」


王女とクロは今、仲良くお風呂に入っている最中。

普段なら一緒に入る事も多いけど、今日は一足先に上がらせてもらったの。


私自身の野望のためにも。



「テンイー。

 いるー?

 入っていいー??」



そして意を決し、テンイの部屋の扉をノックする。


「エミリー!?

 うん、いいよー。」


少し上の空な感じだったけど、すんなりと部屋へ入れてくれたわ。

彼は何かを失くしてしまったのか、部屋中をガサゴソとしていた。


「・・・何を探しているの?」


「俺の大切な物が見当たらなくてね。

 どっかに落としちゃったのかなぁ。

 エミリー、知らない?」


「知らないわ。」


「そっかー。」


私の返事に残念そうにしつつも、彼は探し物を続けている。

・・・その姿には私への警戒心なんて、微塵も感じられない。

まるで無垢な子羊のように。


ずっと一緒に旅する内に忘れちゃったのかしら?

なんで私がテンイと共にいるのかを。


「ねえ、テンイ・・・。

 ちょっとバンザイしてくれない?」


「?

 こう?」


彼は私のお願いを少し訝し気にしながらも、すんなりと聞き入れた。





そんな彼が身に付けている服を脱がしていく。

母が幼子の着ている服を脱がすかの如く。





「えっ?」





唐突な行為に理解が追い付かないのか、テンイはされるがままだったわ。

なんて無防備なんでしょう・・・。

狼に変貌するのは、男だけの特権じゃないのよ。


「エ・・・ミリー・・・?」


「あらー・・・。

 やっぱ鍛えてるだけあって、良い体してるわねぇ。

 毎日、剣の素振りを頑張ってる成果かしら。」


無防備となった彼の上半身をなぞるように触る。

・・・男としてまだまだ頼りないって事は、知ってるはずなのになぁ。

その鍛え抜かれた肉体には、つい身を委ねたくなるわ。


「あの、その・・・。」


「けど私だって、スタイルには自信あるもん♪」


なんて言いながら、私は何の躊躇いもなく、服を脱いだ。

衣服が破れて、裸同然の姿になるくらい、戦争に参加中は日常茶飯事だったからねぇ。

そのくらいで羞恥する純情なんて、とっくの昔に無くなっちゃったわ。





「!!!!????

 くぁwせdrftgyふじこlp。」





一方、テンイは上半身が露わになった私を見て、顔を真っ赤にしながら謎の悲鳴を上げたの。

・・・確か彼、親から『一人前の剣士になるまでは女の子と付き合うな』なーんて、言われてたんだっけ。

だからこんなに初心なリアクションなのかしら。


同じ初めてでも、私とは大違い。


「ど、ど、ど・・・。

 どういう、つもり・・・なのぉおおおお!!??」


声をどもらせながらも、彼の目は私の胸に釘付けみたい。

素直な子ね。


「テ・ン・イ。

 どーして私があなたと行動を共にしているか・・・。

 覚えてないの?」


「・・・えとえと。

 それは愚王から、魔王討伐するよう命令されたから・・・。」


「誤魔化そうとしたって、ダーメ♪」


そんな命令を受けた事なんて、今の今まで無視していた癖にさ。


「お、俺の伴侶にな、なりたい・・・から・・・って。

 ・・・ででで、でもそんなの冗談としか。」


「本気に決まってるじゃない。」


あの日、ジャクショウ国で彼の力を目の当たりにした時から、ずっと本気だったわ。

そして共に旅を続け、彼の人間性を知り、確信したの。

私が幸せになるためには、テンイの伴侶になるしかないと。


「あなただって、私のような美少女とこんな事がしたかったでしょ?」





私は潤んだ瞳をしながら、彼のたくましい体に自分の胸をくっつける。





「◎△$♪×¥●&%#?!」


「ウフフ。

 体は正直ねぇ。」


「どこ見ながら言ってんのーーーー!!??」


下の方を見ながら話すと、彼はますます動揺したわ。

バレバレな感情を隠したかったのか、彼は私に言及する。


「だ、大体、君が俺の伴侶になりたいのはお金のためでしょ!?

 そんな下らないもののために自分の体を売る気なの!??

 ダメだよ。もっと自分を大切にしなよ!!」


「・・・ま、それも大きいわね。

 けど勘違いしないで。お金は下らないものなんかじゃないわ。

 だってお金がないと、食事だって満足に出来ないもの。

 飢えに苦しみ続けるって、とっても辛い事なのよ。」


「エミリー・・・。

 って、いやいやいやっ!!

 お金ならもう十分持ってるじゃないか、君。」


まあねー♪

テンイがドラゴンやらワイバーンやらの高級素材を狩ってくれるおかげで、懐はかなり温まってるわ。


けれど私がテンイに執着する一番の理由はお金じゃない。





「・・・そうね。

 でも私が一番欲しいのは、王女の言うチート能力。

 あなたが持っている大きな力が欲しいの。」





王女はテンイのチート能力を怖ろしい危険物のように考えている。

だからこそ彼女はチート能力を持つ彼を信じ切れないのでしょう。

あの子だって、彼が人並に善良だって事くらいはとっくに理解してるのにねぇ。



「ち、チート能力が欲しいって・・・。

 こんな危険な力なんか、どうして欲しがるの!?

 ・・・一歩間違えたら、世界だって壊しちゃうかもしれないんだよっ!!」



そして彼が大きな力に溺れないのは、彼女の態度も影響してると思うわ。

でもさ。



「それが何だって言うのよ・・・。

 それでも私は大きな力が欲しい。」


「えっ?」


「人を癒し、守るだけの力なんて、あっても仕方ない。

 そんなものだけあっても、本当に大切なものは守れない。

 ・・・むしろ悪意を呼び寄せ、私も周りも不幸にするだけ。」


「エミリー・・・。」



そうよ。

私が人を救うしか取り柄のない、哀れな聖女だから・・・。


聖女の力を欲した悪党から虐げられた。

家族を死なせてしまった。

愛する人と人生を歩めなかった。


テンイのように全てを破壊する力があれば、あんな連中なんか皆殺しにして、幸せになれたに違いないわ。

でもどれだけ望もうが、私は敵を滅ぼす力を身に付けられなかった。

・・・だからこそ。





「私はあなたの力が欲しい・・・。

 あなたの全てが欲しい。

 例え、この身の全てを捧げたとしても、あなたと共にいたい。」





私はチート能力を持つテンイの女になりたいの。

聖女としての運命から、守ってもらうためにも。


「あ。」


あらあら、テンイったら。

随分、呆然としちゃって。



ま、本音を言えば、初めては大好きな人に捧げたかったって、気持ちもある。

けどテンイでも別に悪くはないかなーっ、とも感じている。


今の所、彼の事を『異性としては』全然愛してないけどさぁ。

『仲間としてなら』まあまあ好感はあるしね。

頼りない性格だけど、結構優しいし、『聖女だから』なーんて言わないから、付き合いやすいし。


何よりあんなに大きな力を持っているのに、人格が破綻してないのが貴重すぎるわ。

暴力でも権力でも大きな力の持ち主なんて、人格破綻者ばっかりだしね。


「じゃ、次は下の方も脱ぎましょっか。」


「ちょっ!?

 待って!!

 待っ・・・。」


「ダーメ♪」


彼は自分から脱ごうとしない。

でも脱がそうとしたら、抵抗出来ずに従いそうな感じね。


今すぐにでも私を食べたい癖に、その気持ちを抑えるのでいっぱいいっぱいってところかしら。

本気に嫌なら、力づくで跳ね除ける事だって出来るもの。

魔法やスキルを含めない、純粋な力でもテンイの方が強いしね。



・・・。



にしても、彼ったら本当に綺麗な顔ね。

性格に反して、体付きは凄く男らしいし。

きちんとお風呂に入って、清潔にしているのもポイントかしら。



あらヤダ。



打算のためだけに彼を襲うつもりだったのにさぁ。


「改めて見ると、あなたって本当に格好良い人ねぇ・・・。

 なんだか私、ドキドキしてきちゃった。

 ・・・もういろんな事情なんか、ぜーんぶ忘れちゃいそう。」


「あ、あ、あ。」


「今日は思う存分、楽しみましょ♪」


私が乗り気になっているのが伝わったのか、テンイの動揺がますます強くなったわ。

彼の理性が消し飛ぶものも時間の問題ね。


じゃ、いよいよお楽しみの始まり・・・。





「勇者様ー。いますかー?」

「ご主人様ー。いるー?」


ドンドン。





・・・・・・。


ん″?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んで頂き、ありがとうございました。

少しでも「続きが気になる!」「面白い!」と思って頂けたら、評価★★★★★と、ブックマークを頂ければと思います。

どうぞよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ