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第116話 過去編(聖女)⑦ 魔王襲来!!

魔王の初登場回。

なお、本作のラスボスは魔王ではないです。

Side ~聖女~


ファイツ国の王子との婚姻の儀の真っ只中。


「ふふふ。

 これで私達は正式な夫婦だな。」


「嬉しいです・・・。

 王子様♪」





あー、こーんなくっだらない茶番、早く終わってくんないかなぁ?

あの時の私は頬を染め、潤んだ瞳で王子を見つめながら、そんな事を考えていたわ。


その周りには笑顔で祝福しながらもその実、冷めているであろう王子のハーレム要員もいたの。

これから私、あのハーレム要員からも嫌がらせを受けるのかしら?

・・・って考えて、うんざりしてたっけ。


ま、ハーレム同士の関係なんて、基本的にはギスギスして当然だからね。

今の私のPTの場合は・・・うん。

ギスギスする以前にハーレムと言えるのかすら疑わしい関係だけど。


それはともかく、別に私はこの国の王子なんか、全然愛してなかったわ。

本当に好きだったのはパーシヴァーの方だった。


けれど政治的な問題やら、性欲やらの都合で王子から求婚されちゃってさ。

色々あって、仕方なく王子に惚れた振りをしたわ。

じゃないと、パーシヴァーや彼の家族の命が危なかったからね・・・。


ちなみにパーシヴァーはまだ王子との決闘の傷が癒えておらず、今回の結婚式には参加してないの。

・・・彼からすれば参加したくもなかったでしょうから、その点だけは救いだったのかしら。

多分、私の事なんて嫌いどころか憎んですらいるでしょーし。


何の幸せも得られず、誰かを自由に愛する事さえ許されない。

そんな人生が永遠に続くのだろうか・・・なんて、ぼんやり考えていた矢先に事件が起きたわ!!



********



「あ、ああああああああ・・・・・・。

 うわぁああああああああ!!!!!!!!」


「「「「「「「「!!!!????」」」」」」」」



突然、ファイツ国に仕えている異世界人の一人が大声で叫び出したの。

彼の名はサトル。

『索敵』や、相手の力量を見抜く不思議な特性を持ってたわ。


異世界人にしては単純な戦闘力が高くない上、敵である魔族すらビビって殺せないヘタレよ。

けれど持ってる特性が非常に優秀だから、貶されつつも割と重宝されてたっけ。


「騒々しいぞ、サトル!!

 王子である私の晴れ舞台を邪魔するとは、良い度胸・・・だ、なぁ?」


いつものサトルなら王子に睨まれただけで震え上がり、大人しくなるわ。

でもあの時のサトルは王子の事なんて眼中にないくらい『何か』に怯えていたの。

傍若無人な王子でさえ、彼の様子に戸惑う程に・・・。


「お、おい・・・。

 落ち着けって、サトル。

 急にどうしたんだよ?」


「・・・来るんだ。

 とんでもない『何か』が、悍ましい殺意をまき散らしながら、この国へやって来るんだ。

 俺達を滅ぼしにやって来るんだぁああああああああ!!!!!!!!」


頭を抱えながら叫ぶサトルに周りも驚愕してたわ。

臆病者とは言え、彼の危機察知能力は本物だからね。


「ふんっ。

 ヘタレなサトルが怯えるくらいで何を騒ぐ・・・。

 どうせこれまでよりは強力な魔族がやってくる、その程度の事だろう?」


「そ・・・そうだよなぁ。ゴウ。

 ファイツ国は最強の国家なんだ。

 少しくらい、強力な魔族が攻めて来ようが・・・。」





軽口を叩いていた異世界人の台詞が止まる。

異世界人だけでなく、私も、王子も、他の皆も言葉を失くす。





「あ・・・あああ・・・!!!!」





あれほど喚いていたサトルでさえ、まともに言葉を発する事が出来ない。

圧倒的な存在の前に。





「・・・・・・・・・・・・。」





そう。

ファイツ国を滅ぼすため、魔王が私達の元へやって来たのよ!!



********



「・・・・・・・・・・・・。」


魔王が途轍もないオーラを放ちながら、空を佇んでいる。

無口ながらも、人間に強い憎しみを抱いてるのだけはわかったわ。


「魔王様!!

 あいつがファイツ国の王子です。」


「罪なき同胞を大勢、死に追いやっただけに飽き足らず!!

 捕虜となった女性達の尊厳まで奪っていきました・・・。」


取り巻きの魔族が感情を剥き出しにしながら、魔王に訴える。

そーなの・・・。

この王子ったら、捕虜になった女魔族に対してあれな真似までしてたのよ。


ハーレム野郎なだけなら、勝手にすれば? で済むけどさぁ。

いくら敵だからってそんな真似をしていたなんて、始めて知った時はドン引きしたわ。

異世界の影響を受けてパワーアップすると、異性を玩具にしたがる副作用でも出ちゃうのかしら?


「ハッ。

 汚らわしい魔族に誰が一番偉いのか、わからせてやっただけだ。

 ・・・良い声で鳴いたぜぇ、あいつらはよお!!」


多分、私が魔族=悪だって考えなくなったのも、ファイツ国と関わったせいね。

口には出せなかったけれど、どー考えても人間の方が邪悪だったもの。





「この外道があっ!!」





あまりの鬼畜発言にさしもの魔王も我慢ならず、怒りを露わにする。


「「「「「「「「ひいっ!??」」」」」」」」


たったそれだけで、世界そのものを揺るがされたような錯覚に見舞われたわ。

さすがは魔王と言うべきか。

これまで戦ってきた魔族とは、明らかに格が違ったの。


「ハ・・・ハハハ。

 魔王がなんだと言うのだ?

 貴様など、ファイツの王子であるこの私が滅ぼしてくれるわ!!」


「「「キャ、キャー、王子様ーーーー!!!!」」」


魔王に怯んでいるのを隠すかのように、虚勢を張る王子。

戸惑いながらも、ハーレム要員としての責務を全うする妻ら。



「魔王よ。

 この場で貴様を滅ぼして、魔族の領土を我が国のものにしてやろう!!

 四の奥義・連続斬撃波!!」



『四の奥義・連続斬撃波』はランク4の両手剣スキルで、王子最強の攻撃技よ。

斬撃を連続で飛ばし、野良ドラゴンさえも細切れにしちゃう強力なスキルなの。


「・・・。」


けれど魔王は避ける素振りすら見せず、王子のスキルは直撃する。


「ハハハ。

 もう終わり・・・。

 ・・・なっ!?」


でもランク4のスキルが直撃したにも関わらず、魔王には傷一つすら付いてなかったわ。


「・・・。

 その程度か?」


・・・これにはさすがの私も驚いたわねー。

ランク4のスキルを受けてノーダメージだなんて、規格外にも程があるもの。



「あ、ああ・・・。

 ・・・や、やれ。

 やれーーーー、異世界人どもーーーー!!!!」



自信過剰な王子も規格外すぎる魔王に恐れを成し、異世界人に命令を下す。

ファイツ国には聖女である私の他に、転移や転生でこの世界へやって来た異世界人も数人いたわ。

その実力は王子と同等以上で、魔族との戦いでも主戦力として活躍していたの。


「や、やれっつっても・・・。」

「ランク4のスキルで攻撃しても、一切ダメージが無いんだぞ!?」

「・・・この世界の魔王、ヤバすぎるって。」


けれどそんな彼らも魔王の圧倒的な実力を前に怯えるばかりだった。



「ふんっ、腰抜け共が。

 貴様等は王子のお守りでもしてろ。」


「ゴウ!?

 だ、だがなぉ。

 いくらお前でも・・・。」


「負けるとでも思ってるのか?

 神にも抗える力を持つこの俺が。」



けどその中でもゴウだけは違っていたの。

ゴウは遠距離攻撃こそ不得意だけど、ファイツ国の中では最強の戦士でランク5のスキルをも扱えるわ。

あの傲慢な王子ですら、彼には下手に出ていたくらいよ。


「弱々しい魔族の虐殺ばかりで退屈していた所だ。

 ・・・魔王よ。

 貴様は少しくらい、俺を楽しませてくれるんだろうな?」


「本当に救いようのない生き物だなぁ。

 人間は!!」


「ほうっ!?

 見事な殺気だ・・・それでこそ殺しがいがあるというもの!!

 フライング!!」


魔王の威圧に失禁する連中まで現れる中、ゴウは飛行魔法『フライング』を使い、宙を舞う。

そして。



「死ねぇええええええええ!!!!!!!!

 五の奥義・粉砕拳!!」



『五の奥義・粉砕拳』はランク5の格闘技系スキルで、神をも粉砕する拳で相手を攻撃するの。

私の防御魔法ですら防げない程のパワーを誇り、屈強な魔族をも一撃で絶命させるわ。


しかもゴウが凄いのはパワーだけじゃない。

その頑丈さも相当なもので、ランク4の魔法・スキルを受けても多少のかすり傷で済ませちゃうの。


いくらなんでも、彼の手に掛かれば魔王ですら葬ってしまう。

あの時の私はそう考えてた。





あまりに浅はかな考えだと、気付かずに・・・。





「ガハッ!?

 う、嘘だろ・・・。

 おい。」





なんと魔王は片手でゴウの『五の奥義・粉砕拳』を受け止め、もう片方の手でゴウの腹を貫いたわ。


「所詮はチート能力に胡坐を掻いてるだけの愚物、か。

 何の重みもない拳よ。」


魔王はゴウの体から手を抜き取り、ゴミ同然に放り投げる。


「・・・あ。

 い、嫌だ・・・。

 死にたく、ない。」


『ヒール』では間に合わないと、薄々わかっていながらも、思わずゴウに駆け寄り、回復魔法を使った。


「ヒ、ヒール!!

 ・・・ダメ、死んでいる。

 もう治せない。」


予想通り、回復しようがなかったわ。

最強の戦士であるゴウでさえ、あんなにあっさり殺された事実に絶望しか感じなかったっけ。



「あ、ああああああああ・・・・・・・・・・・・。

 うわぁああああああああ!!!!!!!!」


「「「王子様!? お待ちください!!!!」」」



そして恐怖に耐えられなくなった王子は、正妻だけを手に取り、真っ先に逃げ出したの。

その後を私以外のハーレム要員が錯乱しながらも付いて行く。


この時の私は『あー、正妻じゃなきゃ、いざって時に見捨てられるのかー。』なーんて、冷めた事を考えてたわ。

まー、王子なんか・・・ファイツ国のお偉いさんなんか一切信用してなかったから、見捨てられても構わなかったけれど。


それにそもそも王子と共に逃げる選択そのものが間違いだったからね。





「貴様らだけは絶対に逃がさぬ!!

 フィフス・ニードル・レイン!!」


「「「「「「「「ギャアアアアアアアア!!!!????」」」」」」」」

「「「「「「「「キャアアアアアアアア!!!!????」」」」」」」」





『フィフス・ニードル・レイン』・・・。

空中から針の雨を降らして攻撃するランク5の魔法よ。

この魔法を使えば、国から生物を根絶やしにするくらい、楽勝だわ。


そんな災厄にも等しい魔法の前に王子も、私以外のハーレム要員も、お偉いさんも、異世界人も・・・。

皆、串刺しにされ、苦悶の表情を浮かべながら、息絶えたの。





「死をもって償え。

 愚かな人間共よ。」





魔王が・・・魔族が報復相手を見逃す事など、決してあり得ないわ。

魔王からは逃げられない。


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読んで頂き、ありがとうございました。

少しでも「続きが気になる!」「面白い!」と思って頂けたら、評価★★★★★と、ブックマークを頂ければと思います。

どうぞよろしくお願いします。
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