第106話 ハーレム失格編⑦ ハーレム要員になれない女
男性向けのなろう小説ではこの作品に限らず、ハーレムものが多数派を占めており、ハーレム文化に否定的な女性キャラクターもほとんど見かけません。
その一方、女性向けのなろう小説の大半は悪役王子ですら一夫一妻を貫く始末w
・・・なろう小説におけるハーレムって、なんなんでしょうね?w
「・・・何が『皆、仲良しだから良い事♪』よ?
ハーレムなんて、最低よ。
最低のクズと、そんな男に群がる薄汚い女共の成れの果てよ!!」
ハーレムの意味を知ったクロは、ハーレムは『皆、仲良しだから良い事♪』と解釈する。
が、それを聞いたユウナがハーレムを激しく批難し始めたの。
「ま。
こればっかりはユウナに賛成ね。
ハーレム野郎も、そんなのに群がる女も人としてのプライドがないのかしら?」
そしてあれほどユウナを敵視していたリーラですら『ハーレムは最低』と言う意見に賛同を示す。
「ど、どうして・・・?
皆、仲良しの何がいけないの!?」
「・・・所詮はお子様ね。
何も理解していない。
けど、そんなあなたも大人になったら分かるわ。
『ハーレムは皆、仲良しだから良い事♪』なんて考えが、如何に愚かかを、ね。」
「なんで、なんで!?
あたし、わかんない!!」
ハーレムは愚か・・・なの?
でも以前に出会った貴族の女の子もこんな事を話してたわ。
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「ハーレムなんて所詮、浮気男に打算まみれの女が群がっているだけじゃない。
ハーレムに真実の愛なんて一切無いのよ!!」
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・・・確かに多かれ少なかれ、ハーレムには打算的なものがあるのかもしれない。
でもよくよく考えたら、さ。
人間関係に打算なんて、あって当然でしょう?
件の山賊王のハーレムのように、欲に目が眩む余り、人としての理性を失わなければ、問題無いんじゃない??
「落ち着きなさい、クロ。
ハーレム野郎が嫌いな女の子なんて、別に珍しくもないわ。」
「ど~してなの!?」
そうよ。
・・・どうして。
「理由は色々あると思うけど・・・。
一番大きな理由は、大好きな男は全て自分一人のものにしたいからじゃない?
美味しいおやつを独り占めしたがる子供と似たようなものよ。」
「おやつで例えないで!!」
大好きな男は全て自分一人のものにしたい?
・・・・・・。
何、それ。
「ど~して、男の人を独り占めしたいの?」
「そうね・・・。
男の人が持ってるお金をぜ~んぶ独り占めしたい、とか。
偉い立場の男性の一番になって、自分も偉くなった気でいたい、とか。
綺麗な見た目の男の子を、ずっと自分の側に置いておきたい、とか。
理由はどうあれ、大好きな男の子が大好きなのは自分一人じゃないと嫌だ、とか。
そんな感じかしら。
ま、女だけじゃなくて、男の方も似たようなもんだけど~。」
「言い方が嫌らしすぎるわ!!
いくら見た目が綺麗だからって、内面があれすぎるでしょ。
あの自称聖女は。」
「いやいや!!
エミリーは良い子だから。
ちょっと・・・いや、かなりやさぐれてるけど良い子だから!!」
勇者のそのフォローはフォローになってるのかしら?
「そもそも私がカズキを好きなのは、そんな浅ましい理由じゃないわ。
彼の心を愛してるからよ!!」
「あー、性格に惹かれてって奴?
そういう理由で男を好きになる娘もいなくはないわねー。」
「聖女(?)の癖に、どれだけ擦れてるのよ・・・あんたは。
ま、カズキの地位は高いし、容姿も実力も優れているからねぇ。
浅ましい理由で近寄る女も多いけど~♪」
「あ~ら。
誰の事を言ってるのかしら?
嫉妬に狂った醜い女の分際で。」
そうなの?
いや、まあカズキの『容姿』が優れているのは、見れば分かるわ。
けど地位や実力って高いの?
「あ、思い出した!!
カズキって言えば、有名なAランク冒険者じゃない。
ランク3の魔法やスキルが扱えるって、聞いた事があるわ。」
「なんだって!?
・・・って、それって凄いの?
エミリー。」
「あなたにはピンとこないかもだけど、相当凄いわよ。
達人並の実力者でもなければ、ランク3の魔法やスキルなんて、使えないもの。」
聖女の言う通り、ランク3の魔法やスキルを使える人間は、この世界だと相当な強者よ。
・・・転移勇者やエンシェントドラゴンのような規格外の存在とばかり関わってたら、霞んじゃうけどね。
「それに実力の高さの割に人格者らしくってね。
多くの冒険者から尊敬の的になってたのよ。
けど女癖が悪いって噂もよく耳にしたわ。」
「女癖が悪い~?」
「あっと言う間に女の子を好きになっちゃうって事よ。
でもって、トラブルになる事も少なくなかったみたい。
さすがに今回みたいなケースは初めてでしょうが・・・。」
確かにランク3の魔法・スキルの使い手ならば、普通の女の子に力負けする事なんて、まず無いからね。
それこそ異世界人のようなイレギュラー相手でも無い限り。
「・・・許せなかったわ。
カズキは私への愛を裏切って、リーラのような泥棒猫になびいたのよ。
だから怒りが抑えられなくなって私は、私はぁああああ!!!!」
「ヒィ!!
ど、どうか許してくれ、ユウナ。
俺は・・・俺は・・・。」
「カズキ!!
あんな暴力女に謝る必要なんて無いでしょ?
だってあなたが愛してるのは私だけだもの。」
そしてカズキをめぐり、ユウナとリーラは互いを激しく罵倒し始める。
でも・・・。
「待って。」
「「何よ!!」」
「ユウナもリーラもカズキが好きなんでしょ。
おそらくカズキもユウナとリーラの両方を好いている。
だったらクロが言った通り、二人ともカズキのハーレム要員になれば丸く収まるんじゃない?」
「「バカにしてるの!?」」
即答!?
でも、だって・・・。
「ユウナは知らないかもしれないけど、この世界では別にハーレムは犯罪じゃないのよ。
あなたの国とは違うの。」
「犯罪かどうかなんて、関係ないわよ!!
・・・浮気野郎なんか、絶対に許す訳にはいかないわ。」
以前出会った貴族の女の子のように、1対1の恋愛を好む人もいる事は知っている。
だとしても・・・。
「そんなにハーレム男が嫌なら、見切りをつけて別の男を探すべきよ。
単に違う女性を好いたってだけで、町を破壊してまで報復しようだなんて、絶対におかしいわ!!」
話を聞く限り、ただカズキはリーラの事も好きだったってだけ。
別にユウナは騙されて、お金をむしり取られた訳じゃない。
酷い仕打ちを受けたり、殺されそうになった訳でもない。
何一つとして実害は受けていないのに、どうしてそんなに怒り狂ってるの?
「・・・何が言いたいの?
私にはあんたの言い分がちっとも理解出来ないわ。」
何よ?
その目は。
まるで私が理解不能な生物みたいじゃない・・・。
「そう言えば、王女(?)はテンイの仲間よね?
彼ってば、随分と格好良い男の子じゃない。
しかも私の魔法すら軽々と防ぐなんて、実力もとんでもないわね。」
「まあ、そうかしら。」
「ちょっ!!
・・・止めてよ、恥ずかしいよ。
普段はあんなに褒めるのが下手糞な癖に。」
「あっさり認めるじゃない。
惚気のつもり?」
惚気じゃなくて、単純な事実よ。
勇者の容姿・実力がずば抜けてるのくらい、少し一緒にいればすぐにわかる事だからね。
「でもテンイにはあんたに負けないくらい、素敵な女の子が側にいるわね。
性格から考えてまず確実に自称だけど、容姿だけなら聖女の名に恥じない美しさだわ。」
「性格が悪くて、悪かったわね!!」
図星を指されて、声を荒げる聖女。
「あんた、もしもテンイがよ?
あんたよりもあの自称聖女の方が好きだったら、さ。
本当にそれを許せるの?」