死人からお前へ。これは現実だ。
この手紙を読んでいる人間がいたなら、それは幸運だ。アイツから逃げおおせたってことだからな。それか、また新たに地球に住んだ疑似人類か……どっちでもいい。
先に言っておく。これは日本語だ。日本語が出来ないなら頑張って翻訳してくれ。読んでいる奴に知恵があることを望む。間違ってもケツを拭く紙にするなよ。
さて、本題だが、このジーゲル駅、昔は使われてた廃駅みたいだ。日本からはるばる大陸まで潜水艦で潜って、それからここまで歩いてきた。車は使っちゃいけなかった。アイツは音に敏感だからな。それで捕まった奴をごまんと見てきた。
で、そうだな。まずはその”アイツ”について記しておくか。
ラヴクラフトのクトゥルフ神話があるだろ。まるであれだ。あの創作物が現実になるとは、熱心な信者も思わなかったろうよ。
見た目を言うなら頭の異常にでかい赤ちゃんだ。皮膚が所々剥げてて見るに堪えなかったよ。アメリカの都市伝説のメロンヘッドを知ってるなら正しくあれだ。
んで、そいつが言ったんだよ。今でも忘れねぇ。
「遊ぼう」
ありゃそこらの1歳児と変わらない。多分、いや絶対ただの好奇心だ。
分かるか? 俺がなんちゃら型潜水艦に乗り込んだのも、歩いて何千キロ、下手したら何万キロと歩いたのも、ただの”お遊び”に付き合わされた結果なんだ。
きっとこれを読んでる奴もそうだろう。逃げて逃げて逃げまくった結果こんな捨てられた空間にまで追い込まれたんだ。
んで、その赤ちゃんは目につく奴を片っ端からよくわからん力で捻じ曲げたり、圧縮したり引き延ばしたりして遊んでたんだよ。赤ちゃんなのにその時は目がかっぴらいてやがる。昔の地球みたいに澄んでる目だったよ。
これがいつ終わるのかも分からねぇ。とりあえず色んな家から食べれそうなものを片っ端から取ってきたが、それもあと二週間が限界だ。
一年続いたこのかくれんぼがこの二週間でパッタリ終わるとは思えねぇ。だから、少しでも美味いものを残すために最近は虫とかネズミとか、見境なく食ってる。潔癖症だった俺がだ。なんちゃらホープの偽造肉が発覚したあの時から入念に入念を入れて飯を選んできた俺がそこいらに這いつくばってる虫を食ってんだ。当時の奴らがもし生きて俺の内臓を見てたら笑うだろうよ。
それ
すまねぇ。歩く音が聞こえたら一週間ばかり隠れてた。アイツは耳はいいが目が死んでるんだ。多分見えてすらいねぇだろうよ。
で、これは言い忘れてたことなんだが、アイツの分身(みてぇなの)は人間っぽい見た目をしてる。ただ一つ、頭が異常にでかい。巨頭オって日本の都市伝説を知ってるか?あれの住民さながらだ。
すまねぇ俺はもう助かりそうにない。ってか、そもそも助かる見込みのない戦だ。今ここで死んでも後々死んでも多分、死に方が違うだけだ。
最後に記しておく。俺の名前は多和田拓郎。年齢は21だ。出身は大阪。夢持って上京してきたしがない学生だった。それから、彼女のりん。りんが生きてたら伝えてくれ。「いつか死ぬ命を大事に使え」って。死んでたら俺が来世でりんに伝えてくる。
ほら、足音がすぐ近くまで来た。頭が大きいから歩くペースもバラバラで、気持ち悪い不協和音になってる。
楽しくやれ、現実には隠れる場所はねぇから。




